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土の島へ。の前に、一旦風の島へ

「なあ、次はどこに向かう? 後は風の加護と土の加護だろう?」

「そういえば、僕達の中に土の資質がある人っていないよね? 資質がなくても加護って受けられるの?」


 ……う、痛い所を衝かれてしまいましたね。そうなのだ。本来のパーティーには、土魔法要員のキャラクターが当然用意されているのだが、……わたしが付いて回っているせいでパーティー定員の四名に達してしまっている。……ドラ子は四人乗りなんだよ。わたしがドラ子のしっぽにでもつかまって移動すれば別だけどね。


「いえ、加護を受けるにはその属性の資質が必要です。土の島に仲間になってくれる人物がいます。その人物が、土の加護を得ることができるのですが……ドラ子は四人乗りなので……」


 しかもこの土魔法要員の人物というのが、わたしはどうも苦手なのだ。メインキャラクターとして、二人の兄妹から選べるのだが……どちらも苦手。心が狭いと言われるかもしれないが、出来ることなら関わり合いになりたくない。すでにパーティーメンバーのレベルもかなり上がってしまっているので、今更三十レベル程度の仲間が増えたところで戦力としては期待できないし、ぶっちゃけ魔法陣さえ起動してもらえればそれでいい。うーん、どうしよう。もう一頭、他の飛行魔獣を用意しようか……? 魔獣の首輪って創造で複製できるかな……。


「あ、だったらわたしを風の島で降ろしてもらえないかしら? 久しぶりに故郷に帰りたいの」


 エステラから思っても見ない申し出があった。エステラの故郷の村には事情があってわたし達は入ることができないので、丁度良いって言えば丁度良い。ルークスはドラ子の主人だから外せないし、わたしはなるべくカイン君から目を離したくない。正直、この提案はありがたい。


 少々遠回りになるが、ドラ子のスピードなら問題はない。ルークスは寂しそうにしていたが、ひとまず風の島に向かい、エステラの故郷の村がある森の入口で別れることにした。


「じゃあここでお別れね。二年ぶりの里帰りだから、しばらくはゆっくりすると思うけど……ここから南にあるルールタークの町の宿屋で落ち合いましょう」

「はい、わたし達も土の精霊の加護を受けて魔法陣を起動したらすぐに戻ってきますので、一週間もかからないと思います」


 カイン君は霧がかかった深い森の中に一人で入っていくエステラが心配なようだ。何度も送らなくて大丈夫か確認していたが、最後にもう一度確認している。


「エステラ、本当に村までついて行かなくて大丈夫?」

「ふふ、大丈夫よカイン。わたしはこの森で育ったんだから。強い魔物も出ないし、迷うこともないわ」


 まあ今のエステラのレベルなら大抵の魔物よりは強いし、心配はいらないだろう。むしろ「久々に思う存分狩りが出来る!」と嬉しそうなエステラに狙われる魔物の方がかわいそうな気がする。エステラは弓を弱いものに持ち替え、急所を外してかなーーーーり手加減をすることで、それなりのレベルの魔物なら生け捕りにできる技術を身に着けていた。おかげでグクス村の周りの魔物はかなり減ったように思う。


「エステラ……これ、荷物と、あとグクス村で買った果物だけど……村の人達のお土産に」

「ありがとう、ルークス。……心配しないで、すぐにまた会えるわ」


 ルークスはあからさまに元気がない。……たった一週間だよ? それも長く見積もって一週間だ。それより早く会えるかもしれないし、そんなに落ち込むことないじゃない! わたしはエステラに荷物を入れる為のバッグを作ってあげて、名残惜しそうなルークスを引っ張ってドラ子に乗り込んだ。


 エステラが手を振ってくれていたが、霧が濃いため上空に上がるとすぐに姿は見えなくなってしまった。ルークスもようやく気持ちを切り替えたようで「早く土の島に行こう!」とやる気を見せている。森の上空にも霧がかかっていてかなり視界が悪い。ひんやりと湿った空気は、乾燥して暑かった火の島とは大違いだ。暑いのが苦手なカイン君はどことなく嬉しそう。


「空気が冷たくて気持ちいいね。この霧ってずっとかかってるのかな?」

「そうですね、この森の周りには常に霧が出てますね。……多分魔法的な何かだと思うんですけど……」


 多分侵入者を拒むためのトラップ的な何かなんだろう。エステラの村は閉鎖的で、わたしも……ていうか、わたしが操作していたルークスも、ゲームプレイ中一度も入ることができなかった。この森に住む賢者に会いに行くイベントの途中でエステラがちょっと寄るぐらいの場所だし、あまり印象には残っていない。


「よし、ドラ子! 急いで土の島へ向かってくれ! ユーリ、場所は知ってるんだろう?」

「あ、はい。土の島のほぼ中央にある村に向かってください。そこの長の子ども達が仲間になってくれるはずです」

『……わかった。少し速く飛ぼう。しっかりつかまっていろ……!』

「わかりました!…………って、ひっっ……きゃあああああああああああああああああ!」

「わー速いね!」


 急にグンとスピードが上がり、わたしは完全に体制を崩してしまった。シートベルトがなかったらやばかった! っていうか、ドラ子さん! 今までのはMAXスピードじゃなかったんですね! カイン君は楽しそうだし、ルークスはスピードが上がったことを喜んでいるが、わたしはそれどころじゃない! せっかくドラ子のスピードにも慣れてきたと思ってたのにーーーー! 





『──着いたぞ。久々に本気で飛んだが、たまには良いものだな……』

「ありがとうドラ子! お陰でかなり早く着いたよ! さあ、一刻も早く村に向かおう!」

「ユーリ、大丈夫? 顔色が悪いよ?」

「……はい、なんとか」


 途中何度か意識を失っていた気もするが、何はともあれ、土の島にかなり早目にたどり着くことが出来た。ルークスはもう村へ入ろうとしているので、ドラ子にお礼を言って、わたし達も慌てて後を追った。

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