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火の精霊祭り、夜

 サラマンダーは祭壇に供えられた果物をぱくぱくと食べている。何人かの子ども達があつまってきて直接果物を渡したいみたいだったけど、火傷しちゃうかもしれないから離れて見てるだけにしてもらった。


「ごめんねー、噛みついたりはしないけど、直接触っちゃうと火傷しちゃうからねー。見るだけにしてねー」

『其方はいちいち無礼だな! 我らを獣と一緒にするな!』


 す、すみません! サラマンダーを怒らせたら大変だ! わたしはへこへこと頭を下げながら果物を渡してサラマンダーのご機嫌をとり、そそくさとその場を後にした。昼食がわりの焼き鳥を食べながら、会場内を見て回る。……良かった、みんな楽しんでくれているようだ。ラダマンさんの屋台に並んだめずらしいおもちゃには子ども達が群がっている。その後ろで保護者が財布の中身と相談していた。


 わたし達が作ったカレーパンも好評だったようで、すでにすべて配り終わった後だった。う……用意した量が少なかったのかもしれない。これは完全にわたしのミスだ。まだ祭りは続いていくのに、早くも屋台がひとつ空いてしまった!


 だが、それにいち早く気が付いたラダマンさんが、従業員に指示をだして、カレーパンの代わりにソーセージを並べ始めた。流石ラダマンさん! 道理でやたら荷物が多いと思ったよ! しかもこれ、トリニアの町で流行ってたやつだ! パリッとした皮からあふれ出す肉汁がたまらないんだよね……! 食べやすいように一本ずつ串にさしてあるし、物珍しさもあって、ソーセージの屋台にはお客さんが殺到した。


 それに焦ったのが、隣の焼き鳥屋とパン屋だ。苦肉の策として、焼き鳥をパンで挟んだ焼き鳥サンドを販売し始めた。……うーん、たれ味の焼き鳥なら合うかもしれないけど、塩味なんだよね……。どっちかっというとソーセージを挟んでホットドッグにした方が……。


 わたしがそんなことを考えていると、焼き鳥サンドを見たラダマンさんがパン屋に話を持ち掛け、即座にホットドッグが販売され始めた。流石食通ラダマンさん! わかってるね! パン屋の裏切りを受け、焼き鳥屋は地団駄を踏んで悔しがっている。いや、焼き鳥もおいしいよ? 充分売れてるから、そんなに悔しがらなくても……。


 激しく売り上げを競いあう三店舗の横で、果物屋は我関せずといった涼しい顔で営業を続けていた。サラマンダーへの供物用とデザート用として、安定した売り上げがあるのだろう。……色々な商売の方法がありますね。


 中央に組んだキャンプファイヤーは、すでに燃え尽きようとしていた。急いで新しい薪を組まないと! 今度は暑くなりすぎないように気を付けなきゃね! グクス村からの第二便も到着したことにより、会場内の人口密度が増して更に暑くなった気がする。これ以上室温を上げないためにも、井桁に組むのはやめて、いつものたき火スタイルで放射状に薪を並べていこう。井桁組もオープニングとしては迫力があって良かったけど、火力がすごいし、燃え尽きるのも早かった。こっちの組み方の方が、炎は小さいけど長持ちするからね。薪を並べ終わったところで、わたしは演奏へと戻った。今回はさっきよりも上手く吹けたように思う。周りを見る余裕もできて、観衆の中にマーダチカおばあちゃんの姿を見つけた。


 その後も何度か演奏と休憩を繰り返し、夜になった。子ども達は村へと帰る時間だ。ララちゃんの歌もここまで。お土産に焼き鳥を買ってもらって母親と一緒に帰って行った。ザザにはもう少しつきあってもらわなきゃね。一緒に朝まで頑張るぞ!


 子ども達が帰ったことにより、会場内の雰囲気は少々変わってきた。まず、酔っ払いが増えた。今までのゆったりした音楽に合わせた踊りではなく、好き勝手に体を動かす人もちらほら見える。


「……どうする? 曲を変えようか?」

「そうね……少し激しい曲にしてみる?」

「そうだな。火炎舞は練習しただろう? あの曲にしよう。激しい曲だから、三回も踊れば連中もすぐにばてるよ。その後で元の曲に戻そう」


 話し合いの結果、演奏する曲が変わってしまった。わたしとチコリは知らない曲だったので、一緒に休憩をとることにした。マーダチカおばあちゃんと合流し、一緒に焼き鳥を食べた。夜になってお酒のつまみとして、焼き鳥屋の売り上げが挽回し始めているようだ。今度はパン屋が頭を抱えていた。


 丁度良い。ララちゃんと一緒に看板娘達が帰ってしまったので、暇そうなパン屋にジュースと酒の屋台をお願いしておいた。バイト代はちゃんと払うことを伝えると、一気にやる気になってくれた。ついでにわたしも達の分のジュースも買って、おばあちゃんとチコリに渡す。踊りの輪からは少し離れた場所に腰を下ろし、みんなでジュースを飲んだ。冷たくはないけれど、酸味があって疲れた体に染み渡る味だった。


「あんたの笛はイマイチだったけど、チコリの太鼓はうまいじゃないか。大したもんだよ」


 おばあちゃんから褒められて、チコリは嬉しそうだ。……わたしのことも、ちょっとは褒めてほしいかな?

あ、でもわたしも香辛料の効能についてはかなり勉強したし、薬の調合知識も付いてきて、それに関してはおばあちゃんからも褒められ──


『なんだ! めずらしいな! お前はレッドゴブリンか! 山から下りてきたのか?』


 突然の念話に、わたしは座ったまま数センチ飛び上がった。足元にはいつの間にかサラマンダーがいる。ちょちょっ! サラマンダー! 今のってわたし達にだけ向けたメッセージだよね!? 他の人には届いてないよね!?


「サラマンダー様しーーーーっ! この子がゴブリンってことは内緒にしといてください! みんなびっくりしちゃうんで!」

『む? そうなのか? ……人間は良く分からぬな』


 チコリとマーダチカおばあちゃんは、近すぎるサラマンダーに驚いて固まっている。……驚いてる顔までそっくりだ。


「それで、なにか御用ですか?」

『うむ! 我らは歌も踊りも好きだが、いささか飽きてきた! そろそろ余興の一つでもしてみろ!』


 ……えーーーー。今、曲変わったばっかりなんですけど! 一晩中踊るんじゃなかったの? 聞いてた話と違うよーー!


「余興って……例えばどんなことがしたいんですか?」

『……そうだな! 供物の酒もあることだし、我らと飲み比べで勝負だ! 其方らが勝てば、良いものをやろう!』

「……良いものですか?」

『うむ! 人間が喜ぶものだ!』


 うーん、なんだろう。詳しく情報を求めたが、それ以上は教えてくれなかった。勝った時のお楽しみらしい。


 はい、というわけでサラマンダーとの飲み比べ対決をすることになりました。……すでにべろんべろんの人が何人かいるよ……。もうちょっと早く言って欲しかったな……。人間サイドからまだ飲めそうな参加者を募って、供えられた酒を飲みまくりたいと思います! 

これを書いてる途中に間違えてエスケープキーを押してしまい、出来上がってたほとんどの文が消えてしまいました……! こまめに保存するってホント大切……! 

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