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カイン君の最期

 久しぶりの戦闘ということもあってか、ルークスはなんだか楽しそうだ。買い物をしている時のエステラと同じような顔で笑っている。生まれ育った環境の違いがあるとは言え、向かってくる魔物を笑顔で屠るその姿に、わたしは若干の恐怖を感じた。


 わたしは時折分かれ道で指示を出すだけで、あとは黙ってルークスの後をついて行く。たまにルークスが討ち漏らした敵は、エステラの弓によって瞬時に仕留められた。……カイン君いなくても楽勝だなこれ。


「いやー、やっぱり体がなまってるな。最近稽古もさぼってたから……。カインが元気になったら付き合ってもらおうかな」


 あ、それでも本調子じゃなかったんですね。素人目には違いが分かりません。


「わたしも久しぶりに狩りがしたいわ……故郷の森が懐かしい。緑が豊かで、空気がおいしいのよ。ここも良い島だけど、やっぱり生まれ育った土地が一番ね」


 エステラはどうやらホームシック気味みたい。次は風の精霊の加護を受けに、エステラの故郷の島へ向かおうかな……。


「あ、そういえば……ルークスはサラマンダーの加護を得てから、何か変化はありましたか?」

「ん? うーん、いやこれと言って……。火炎魔法の威力が上がったような気はするけど、そのくらいかな」


 あれれ? 前にカイン君が精霊とお話ししてたから、加護を受ければ精霊の姿が見れるようになるのかと思ったけど、そうじゃないのかな?


「火の精霊の姿が見えたり、話したりはできないんですか?」

「精霊の祠で見て以来だな。多分この辺りにもいるんだろうけど……うーん、かすかに気配は感じるような気もするけど、声が聞こえたり姿が見えたりはしないな」


 ……むーん。精霊は、精霊の祠のような力が集まりやすいパワースポットでは、わたし達の目にも見えるように具現化してくれるが、普段はまったく見えない。カイン君の話ではそこらをふよふよ飛んでいるらしいが、わたしに至っては気配すらも感じない。


「なあ、精霊の加護ってあった方が良いのか? なんのために集めてるんだ?」


 あれ? 説明してなかったかな? わたしは魔王の居城に向かうための転移陣が、王家が管理する土地にあること。その魔法陣を起動するために火、水、風、土の四大精霊の加護が必要なことを説明した。正確にはその転移陣から光の女神の所に行って、そこから魔王の所に行けるんだけどね。


「へー、ただ集めてただけじゃなかったんだな」

「わたしも、魔法の威力が上がるから集めるのかと思ってたわ」


 す、すみません、説明不足でした。正規ルートだとこの情報は賢者から与えられるものなんだけど、ストーリー大分端折ってるからね。他にも伝えてないことがあるかもしれない……。


「じゃあ後は、風と土の加護を集めるだけね! 水の加護はカインが持ってるし、水の国にはいかなくてもいいのよね?」

「……そうですね」


 嫌な光景が一瞬脳裏をよぎる。カイン君は初期ステータスとして水の加護を持っているので、問題なく転移陣を起動できる。……だが、パーティーを途中離脱してしまうため、その後は代替メンバーである【サシャ】が加入する事となる。彼女は加護持ちではないので、その時水の国へと向かうことになるのだ。わたしは芋づる式にカイン君の死亡シーンまで思い出してしまい、気分が沈んだ。


 加護を集め終わり、いよいよ魔王との対決ということで王様が開いてくれる激励パーティー。そこに人間の姿に化けた魔王が紛れ込んでくる。パーティーの給仕をしていたアメリアが、魔王の正体を【真実を見抜く目】で暴き、カイン君に伝える。カイン君が魔王に声をかける。カイン君、魔王によって心の闇を増幅される。自分より強いルークスに勝ちたいという衝動が抑えられない。カイン君、ルークスに一騎打ちで勝負を挑む。倒さないと話が先に進まないので、仕方なしにカイン君を倒す。その後、他のメンバーで魔王を倒す。魔王撤退する。カイン君に駆け寄る。カイン君一時的に正気に戻る。だが、再び闇に飲まれそうになる。今度はルークスだけでなく、他の招待客にも剣を振るいたくなる。みんなに迷惑をかけるくらいなら……と、カイン君パーティー会場で自刃する。そして表示される、パーティー永久離脱メッセージ。


 あまりの辛さに箇条書きでお伝えしましたが、ここのシーン、ムービーなんだぜ……。本当に全年齢かと疑いたくなるような鬱展開……トラウマレベルの最期です……。せめて、ぼかしてほしかった……! 崖から海に飛び降りるとかさ、生存の可能性があるフェードアウト方法って他にもあるじゃん!? なんで自刃!? 完全にプレイヤーの心を殺しに来てるね。


 とまあ! そんな展開にならないために! あらゆる手段を尽くさなければ。この世界にリセットボタンは見当たらない。チャンスは一度きり。



──わたし、カイン君の為なら、何でもします。



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