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無敵じゃなかったわたしの体

 緑の悪魔イベントが終了し、わたしとカイン君はルークス達と合流する。村人に感謝され、その日は夕食をご馳走になった。名物のじゃがバターとじゃがいもピザ、マッシュポテト、じゃがいものスープとじゃがいもづくしだ。



「ユーリ、大丈夫? あまり食べていないようだけど……」

「え? あぁ、なんかちょっとだるくて……」


 メニューが嫌なわけではない。わたしはじゃがいも大好きだ。だが、なんとなく体が重いような気がして、せっかくの料理もなかなか箸が進まない。


「ひょっとして僕の魔法の所為で風邪引いちゃったのかも……」

「ステータスチェックしてみたらどうだ?」

「はい……」


 わたしは自分のステータスを確認する。特にバッドステータスマークはついていないようなので、風邪ではないだろう。ついでにパラメーターも確認してみる。


 名前 :ユーリ

 職業 :神の眷属の預言者で爆弾魔

 LV :46

 HP :10/55

 MP :∞

 攻撃力:50

 防御力:47

 素早さ:48

 スキル:【魔素の体】【管理者権限】【鑑定】【創造】

 加護 :

 魔法 :


 えーと…あれ? HPが減ってる? それでなくても少ないのに! なんか攻撃を受けるようなことあったかな? ぽきゅぽきゅからも攻撃は受けていないし、なんで? 精神的ダメージ?


「どうだった?」

「体力が……減ってるみたいです」

「じゃあやっぱり僕の所為だ……ユーリも【アシッドレイン】の範囲に入ってたから……」


 わたし魔法攻撃も物理攻撃も効かない体じゃなかったのかな? と疑問に思いつつ、一言断ってカイン君のアシッドレインを鑑定させてもらう。


【アシッドレイン】

 水と闇の複合範囲魔法。雨に濡れた対象の最大HPの二十分の一を一定時間ごとに削り取っていく。


 うん。わたしの認識と一緒だ。HPの低い雑魚相手にはダメージがあまり期待できず、ボス戦でもほかのガンガンHPを削る魔法を使用していたので、あまり印象には残っていなかったが、どうして? 



 …………あ、分かった。これ、割合ダメージの魔法だ。



「わかりました。わたし、アシッドレインみたいなHPに直接ダメージを与えるタイプの魔法は無効化できないみたいです」


 カイン君が申し訳なさそうな顔になる。あわわわ、逆に申し訳ない!


「……ごめんねユーリ、すぐ回復するから……ウォーターヒール」


 カイン君からウォーターヒールをかけてもらい、わたしの頭上に青い魔法陣が浮かび上がる。そこから光る雫が一滴落ちてきた。が、体力が回復した感じはない。


「どう? もう大丈夫?」


 カイン君が責任を感じて心配してくれているが、ステータスを確認してもわたしのHPは減ったままだった。あぁ、ウォーターヒールじゃあ回復できないのか……


「……ごめんなさい。せっかくかけてもらったんですけど、ウォーターヒールじゃ回復しないみたいで……最大HPの何割かを回復する魔法なら効果があると思うんですが……」


 なんてこった。ダメージを受ける条件が発見された挙句、回復魔法まで効かないとは。こいつは困ったぜ!

 今使用できる回復魔法で割合回復のものは何もない。体力全快アイテムなら効果があるだろうが、持っていない上に、たかだか55の体力を回復するのに使用するのはとてももったいない。


「よしっ! ユーリ! 寝ろっ! 寝たら大体回復してる!」

「そうですね……それが無難ですね」


 WEFの回復方法としては魔法、アイテム、睡眠、それに食事だ。採集した素材を元に料理を作って、体力や魔力を回復させたり特殊な効果を与えてくれたりするWEFのやりこみ要素の一つである。失敗することもあるが、エステラの【料理上手】のスキルがあれば成功率がぐっと上がる。……わたしは試しに目の前のじゃがいもを一つ食べてみた。


 名前 :ユーリ

 職業 :神の眷属の預言者で爆弾魔

 LV :46

 HP :11/55

 MP :∞

 攻撃力:50

 防御力:47

 素早さ:48

 スキル:【魔素の体】【管理者権限】【鑑定】【創造】

 加護 :

 魔法 :


 あれ? 回復してる? おなかが空くからなんとなく食べていた食事だが、一応私の体力の源にはなっていたらしい。回復魔法はだめで食事はいいの? もう! この体わけわかんないよ! 一度朔夜にちゃんとした説明を受けた方がいいかもしれない……。しかもじゃがいも一個につき、回復値が1である。いったい何個のじゃがいもを食べねばならぬのか……。わたしはおとなしく睡眠によって体力を回復することに決めた。


 みんなに断って一人先に休むことにして、案内された宿屋のベッドにバフッと倒れこんだ。あー久しぶりのベッドだー。やっぱり野宿よりベッドの方が気持ち的に安らぐ。これでお風呂があれば文句なしなのだが、贅沢は言うまい。


 わたしがベッドの上でごろごろしているとノックが聞こえた。ドアを開けるとカイン君が立っていた。


「ユーリ、これエステラがつくったんだけど、薬草入りのジュースだからもしかしたら普通の料理より回復するかもって……」


 カイン君の手には青汁を濃縮したような、もの凄い匂いを放つ液体が入ったグラスが握られていた。薬草を乾燥させたものは食べたことがあるが、生のジュースは初めてだ。わたしの為に好意で作ってくださったジュース……飲まないわけにはいかない!


 わたしはお礼を言ってグラスを受け取ると、ぐいっと一気にあおった。ものすごい苦みと青臭さが口いっぱいに広がる。涙目になりながら飲み干すと、カイン君が心配そうにこちらを見つめていた。


「どう? 少しは回復した?」


 わたしはステータスを確認する。たしかにじゃがいもよりは回復していた。効果があったことを伝えると、カイン君はようやく少し笑った。


「ユーリ、ほんとにごめんね……僕の所為で……」


 すぐにまたしょんぼりしてしまったカイン君。わたしは急いでフォローにまわる。


「いやいや、カイン君は家の中に入ってるように勧めてくれたのに無理に残ったのはわたしですから! それにぽきゅぽきゅ退治なんて辛い仕事を引き受けてくれたカイン君に感謝こそすれ、非難する気持ちなんてこれっぽっちもないです! ばちが当たります! だいいち寝れば治るんですから! なんでもないんです! そんな悲しそうな顔しないでください! 逆にわたしの方がすみません! ジュースのおかげで大分回復しましたし! この通り元気ですから!」


 わたしは必死になって元気っぷりをアピールする。カイン君はそんなわたしを見てふふっと笑ってくれた。そんなカイン君を見てわたしもえへへっと笑う。あーカイン君の笑顔なごむわー。今絶対、少女漫画の点描がとんでる。神様、わたしの推しは今日も尊いです。




 一気に幸せな気持ちになったところで、カイン君はみんなの所へ戻っていき、わたしは即座に眠りについた。


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