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旅立ち

 カイン君は正式に旅立つことが決まった為、第二部隊に別れの挨拶に行ったし、アメリアは朝から仕事だし、ルークスとエステラは頂いた金貨をアイテムバッグに詰める作業の真っ最中だ。所持品がほぼゼロで旅立ちの準備など秒で終わるわたしは、オルランド中将のお手伝いをする事になった。





「これは土に含まれる毒素を中和するための魔道具ですね。直接地面に刺して使用するようです」

「なるほど……ではこちらはどうでしょう?」


 わたしは地下宝物庫から見つかった魔道具の中で、文献が残っておらず効果が分からない物を次々と鑑定していった。それをオルランド中将が書き留めていく。……せめてご飯分ぐらいは働かないとね。


 オルランド中将は、もともとこういった魔道具の研究の道に進みたかったそうで、増えていく紙の束にご満悦だ。騎士として剣を握るより、ペンを握る方が性に合っているらしい。望まぬ職業でありながら、それでも中将にまで出世しているのだからすごいですね。と、わたしが言うと、勇敢だった同期は死んでいき、自分は弱く臆病なため生き残ってしまっているだけだ。と返された。



 三十分ほどで作業が一段落したので、お茶を頂くことになった。



 ワゴンと共にやってきたメイドさんが、最後の一滴まで丁寧にカップに注いでくれる。口をつける前から部屋に豊かな香りが漂う。こ、これがゴールデンルールで淹れられた紅茶の実力か!


 せっかくなのでミルクは入れず、砂糖をほんの少しだけ入れてもらった。普段ティーバッグの紅茶しか飲んだことのないわたしは、期待に胸を膨らませてカップを手に取る。一口含んだとたん、ほのかな苦みと芳醇な香りが口いっぱいに広がる。


 ……うわぁ、おいしい。少々熱かったので、少し冷ましてから二口目を飲むと、更に香りが強くなったように感じた。……わたし今、とても優雅なティータイムを過ごしている。惜しむらくは、わたしが着ているのが、この場にそぐわぬ村娘の服だということだろう。……アメリアの言う通りTPOって大事だね。



「貴女のおかげで随分と作業が捗りました。感謝いたします」


 オルランド中将がカップを置いて、わたしに謝辞を述べる。いやいや、このくらいのことさせてください! 最強装備をいただいたうえに金貨百枚ももらっちゃって、更にカイン君まで連れて行くんですから! 逆にすみません!


「なにか貴方にもお礼を差し上げたいのですが……私にできることがあるでしょうか?」


 オルランド中将のダークグレーの瞳でまっすぐに見つめられる。この人は、普段は鋭い眼光で厳格な雰囲気なのだが、女性と接するときは途端に相好を崩し、甘い表情になるのだ。……これは勘違いする女性も多いだろう。わたしは少し考えたあと、望みを口にした。


「あの……城でのカイン君のお話をしてもらえますか?」

「カインですか? そうですね……」


 オルランド中将の表情がフッと厳しくなる。どうやらモードが切り替わったらしい。


「……実力はあります。おそらく我が国随一と言っても過言ではないでしょう。……しかしまだ年若いせいか、感情に判断を委ねる事が多いですね。闘技大会でもそうですが……対戦相手に徒に恐怖を与えたり、納得がいかないことは、たとえ上官の命令であっても従わない事もあると報告を受けています。悪い子ではないのですが……もう少し周囲のことにまで気を配れるようになるといいですね」


 おおう……カイン君結構な問題児じゃない? あんなに優しくていい子なのにね。


「今回の旅は、彼にとっては良かったかもしれません。世の中を知ることで精神的にも成長できるでしょうし……今、城の中には彼の事をよく思っていない者もいるようですから……。時間が解決する問題もあるでしょう。貴女方が魔王を倒し、戻ってくる日を楽しみにしています」


 オルランド中将はそう言うと、にっこりと微笑んだ。


 そんなこんなで延び延びになっていた旅立ちですが、ようやくみんなの準備が整いました! 門番のおじさんに挨拶をし、いざ冒険への一歩を踏み出します!

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