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最強の装備

 口を開けた大きな宝箱の中には金貨があふれ、床にまでこぼれ落ちている。その隣の宝箱には色とりどりの宝石、その隣には金でできた装飾品、その隣にはなんだかよくわからないごちゃごちゃとした道具、その隣には古びた巻物と書物……と、あまり整理されている印象は受けないが、宝物庫にはとにかく沢山のお宝が眠っていた。


「すごいわ……」

「ああ、これだけあったら当分旅の資金には困らないな……」


 金欠二人組が財宝に目を輝かせている。わたしはどうせ自分のものにはならないので、それほどの感動はない。仕事でどれだけの札束を数えようが、心が動かないのと一緒だ。


「王から許可はでている。旅の資金として、ある程度は渡すことができるだろう」


 ってええ⁉︎ もらえるんですか⁉︎ とたんに金の輝きが増して見えるのだから、不思議なものだ。


 なんでも本来は、闘技大会で得た売り上げの一部が賞金として上位入賞者に渡される筈だったのだが、今年はなぜか賭け事の払い戻し金が多く、賞金を捻出する余裕がなかったらしい。……心当たりのあるわたしは、そっと顔を逸らし、黙っていることにした。アメリア一体何口購入したんだ?


「この宝物庫に入ることができたのは、我が国にとっても大変な幸運であった。財宝もさる事ながら……あぁ、これはすごいな……」


 オルランド中将はごちゃごちゃした道具の山からひとつを拾い上げ、あらゆる角度から検分し始めた。


「私も文献でしか読んだことはないが……これは人工降雨装置だ。こっちにあるのは植物の成長を早める灯り……素晴らしい」


 なにかスイッチがはいってしまったようで、オルランド中将はガラクタの山に見えた道具を、ひとつひとつ手にとっては感嘆の声をあげ、丁寧に並べ始めた。時間がかかりそうなので、わたしたちは本来の目的である武器と防具を探し始めた。


 部屋の一角に、ショーウィンドウに飾られたマネキンのようにして武具が並んでいる。それぞれの専用防具と武器だ。


 ルークスには先代の勇者が身につけていた銀色のフルプレートアーマー。縁に金の装飾が施されていて、見た目にも美しいが、特筆すべきはその効果だ。なんと装飾部分が回復魔法の呪文になっていて、装備者のHP自動回復機能がついているのだ。基礎体力の高いルークスが身につければ、わずかな回復比率でもかなりの体力を回復することができ、ぶっちゃけ雑魚相手に回復魔法やアイテムがいらなくなる。主人公用と言うこともあって防御力もかなり高い。兜部分は邪魔になるので、置いていくことにした。身につけた瞬間、ぴたりと体に合わせたサイズになり、思ったよりも動きやすいらしい。


 剣はルークスの身の丈ほどもある聖剣で、対魔王に有効な光の属性効果がある。勇者は重みを感じないらしく、片手で軽々と持ち上げていた。わたしも試しに触らせてもらったが、両手であっても引きずることもできない。長いので背中に背負うようにして持ち運ぶようだ。


 カイン君には羽根のように軽い素材で作られた鎧。軽いながらも衝撃吸収性に優れ、なによりも動き易さを重視した作りになっている。剣は細身の青い刀身で、詠唱補助の魔法陣が刻み込まれているため、初級魔法であれば無詠唱での発動が可能になる優れものだ。


 ちょうど鎧が壊れていたカイン君は早速身につけ始め、軽さを実感するように飛び跳ねていた。かわいい。


 エステラの装備は鎧というより美しい布でできた服で、所々に金属が使われている。この金属部分に刻みこまれた魔法陣がすごい。なんと攻撃魔法無効の効果が付いているのだ。物理攻撃無効のわたしの魔素の体に匹敵する素晴らしさではないだろうか。


 弓は月の女神の名を冠したもので、弦を引くだけで無限に矢が放てる。……ゴーレム戦の前に是非とも欲しかった一品だ。


 エステラの装備は鎧ではなく服だったので、流石にここで着替えるわけにもいかず、攻撃魔法無効話からわたしの体の事に話題が変わった。


「そういえば、ユーリは魔法攻撃を受けるとどうなるの?」

「あ、それアメリアとも実験しようと思ったんですけど、二人とも攻撃魔法を使えなかったんで検証待ちです」

「なら俺が試してやるよ」

「わたしも協力するわ」


 ルークスとエステラの二人が詠唱に入る。え、別に二人でなくても良くない?


「じゃあ僕も」


 と、カイン君までもが参戦してきた。ちょ、ちょっと待って! わたしのHPカスなんですけど! もし効いたら死んじゃうよ!


「アイシクルエッジ」

「ファイヤボール」

「ウィンドカッター」


 三人から同時に攻撃魔法が放たれる。わたしは恐怖に目を瞑っていたが、ものすごい音が聞こえただけで、体に変化はなかった。……なかったから良かったものの! 怖いから! せめて一人ずつお願いします!


「全然効果ないみたいね」

「そうだね」

「ユーリ、お前すごいな」


 突然の音に驚いたオルランド中将が「何事か⁉︎」と走ってきた。事情を説明すると三人……とくにカイン君はものすごく怒られていた。この部屋にはとても貴重な文献や魔道具があるらしく、攻撃魔法使用禁止! と釘を刺されてしまった。


 オルランド中将の方も一段落ついた様で、王様への報告の為、一旦上に上がることになった。いやー、良かった。オルランド中将がいなかったら魔道具の価値とかわからなかったし、宝の持ち腐れでしたよ。わたしたちはルークスのアイテムバッグにいくつかの財宝を詰めると、軽い足取りで階段を上って行った。


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