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パーティーメンバーの離脱

あけましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いいたします

「じゃあな、ユーリ。俺、強くなるから……そしたらまた一緒に旅をしよう」

「あ、はい。じゃあまた」


 簡単に別れの挨拶を済ませ、ファルシャードはシームルグに乗ってどこかに飛んで行った。行先は聞いていない。が、ルークスに各地の女性の特徴を聞きだしていたので修行兼、嫁探しでもするのだろう。何気にわたし達との旅立ちの時以上に嬉しそうだったしね。自然と上がる口角を手で押さえてはいたが、高まるワクワク感は抑えきれていなかった。漏れる鼻歌、弾む足取り、やたらと良い機嫌。……まあ別れを渋られるよりはずっと良いけどね!


「さ、わたし達も行きましょうか」

「そうだな。早くエステラを迎えに行かないと」


 呼び出したドラ子に乗りこむわたしとルークス。だが、カイン君が動かない。口に手を当て、何か考え込んでいるようだ。わたしは一旦ドラ子から降りてカイン君に近寄る。


「どうかしましたか?」

「……ねえ、ファルと別れたのってドラ子に乗れないからだよね?」


 うーん、一応メイン理由としてはそれだけど、実際は役に立たな……おっと、そんなこと思っちゃいけないね。


「そうですね。ドラ子は四人乗りですから。残念ですけど」

「でも……ファルは自分の飛行魔獣を手に入れたよね? だったらドラ子の後をついてきてもらえば、別れなくても良かったかなって」

「……………………あ!!」


 も、盲点! そうだよね! 二匹で行けば良かったね! でも、もう別れちゃった後だし! そんな簡単なことに気がつかなかったってカイン君に思われたくない! 馬鹿丸出しだよ! よし! ばれないように自然に言い訳をしよう!


「あ、でもでも! ファルシャードも修行をしたいって言ってましたし、本人のレベルに合ったところで無理なくレベル上げした方が良いかもしれませんよ? わたし達とはレベル差が激しいですから……。レベルが上がれば合流する予定ですし、頃合いをみてわたしがスキルで連絡をとりますし、なによりファルシャード自身も自由に世界を飛び回れることに嬉しそうでしたし、問題ない……です……よね?」


 ど、どうだ!? ファルシャード自身の希望だということを伝えれば、優しいカイン君はそれ以上何も言えないはず! わたしの言い訳を聞いたカイン君は、数秒の沈黙の後、口元に当てていた手を下ろしにっこりと笑った。


「……うん、そうだね。ちょっと気になったから。ごめんね、行こうか」


 ふー、危ない所だった。カイン君はわたしの適当な言い訳にそれ以上突っ込んでくることはなかったので、そのままエステラとの待ち合わせ場所であるルールータークの町に向かった。今回はドラ子にそれなりのスピードで飛んでもらったが、それでも日が沈む前には町に着くことが出来た。三人で宿を探しながら町並みを眺めて歩く。


「レンガ造りで可愛い町だね」

「そうですね、カラフルで可愛いですね。風車もあるし、オランダみたい」

「オランダ?」

「あ、いえ、なんでもないです」


 宿について部屋を取るときにエステラの特徴を宿屋の主人に伝えてみたが、そんな美人は見ていないとのことだった。ちょっと早く着きすぎたかもしれないね。ゆっくりするって言ってたし、しばらく観光でもして待つことにしよう。




 ──そうして一週間が過ぎた。初めの内は町を観光したりして過ごしていたが、いくら大きな町とはいっても一週間も滞在すれば見尽した。名物のはちみつたっぷりドーナツも食べ飽きた。宿の主人ともすっかり顔なじみだ。なのに、エステラはまだ現れない。


「流石に遅くないですか? 久しぶりの実家が居心地良すぎるとしても、もう約束の一週間も過ぎてますし……」

「そうだね、何かあったのかな?」

「よし! 近くまで迎えに行こう! ユーリは村の場所を知ってるか?」

「うーん、なんとなくのルートは覚えてますけど、自信はないです。……決まった順番で回らないと永久に森の中をさまようことになるんですよ……!」

「そ、そんなに危険な森なのか……! ますます心配になってきた……まさか遭難したりしてないよな?」

「迎えに行く前に、まずユーリがスキルで話しかけてみたら? 連絡手段がないだけかもしれないし」

「……! そ、そうですね。そうしてみます」


 も、盲点だった。わたしは早速遠隔念話のスキルを発動し、エステラにコンタクトをとってみる。

 

「もしもーし! エステラ、聞こえますか? ユーリです!」

『……え? ユーリ? どこにいるの?』


 良かった。声の様子からして元気は元気っぽいね。わたしは簡単に新しく覚えたスキルで話しかけていることを説明する。


「エステラ何かあったんですか? 一週間たっても姿が見えないので心配になって」

『ごめんなさいね。……少し事情が変わってしまって、わたし……村を離れることが出来なくなったの。とても心苦しいのだけど……これ以上旅を続けることが出来ないの。約束を破ってしまってごめんなさい』

「……って、えええええええ!?」


 わたしが突然大声を上げたので、ルークスが血相を変えて駆け寄って来た。わたしの肩を掴もうとしてスカッていたが、勢いそのままに顔を近づけてくる。


「ど、どうしたんだユーリ! エステラに何かあったのか!?」

「いや、その、なんか、エステラが……旅を続けることができないって……」

「なんだって!? ど、どこか怪我でもしたのか!?」

『ユーリ? ルークスとカインもそこにいるの? ……二人にも謝らなくちゃ。本当にごめんなさい。……わたし、もう行かなくちゃ──』


 エステラがそう言ったところで、ブツッと念話は途絶えた。


「あ、あれ? エステラ!? おーい! ……電波が悪いのかな」

「ユーリ! 教えてくれ! 何がどうしてこうなったんだ!」

「……わたしが知りたいくらいです」


 どういうこと? エステラがいないと、風の魔法陣が起動できないよ! こんなストーリー知らないよ! ファルシャードと違って、「パーティー離脱します」「はい、そうですか」とは言えないよ! こうなったら直接迎えに行くしかないね! 働け! わたしの脳細胞! 迷いの森のルートを思い出せ!

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