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ファルシャードの魔獣

「もしもーし、ラダマンさん聞こえますかー? ユーリです!」

『!? ユーリさん!? 声は聞こえますが……どこにいるんですか!?』

「あ、新しく覚えたスキルを使って話しかけているんですよ。実際は中央にいます。ラダマンさん、今お話ししても大丈夫ですか?」

『新しいスキル……? いえ、もうあなた方に関しては何があっても驚きません。少しの間でしたら大丈夫ですよ』


 ラダマンさんも時間がないようなので、わたしは手短に魔獣の首輪を購入できる店を尋ねてみる。


『魔獣の首輪ですか。基本的に紹介制で、所有者の登録と使用目的を提出すれば購入できますよ。使い方によっては悪用できるので、管理が厳しいのです。皆さんにはお世話になっていますから、私が紹介いたしましょう。ですが、中央に戻れるのは……いつになるかはわかりません。……実は今、水の国の王宮にいるのです』

「え、王宮ですか!?」

『ええ、極大ルビーを購入してくださる相手を探している内に……いつの間にか。今はお妃様に謁見できるよう取り次いでもらっている最中なのですが、時間がかかるようでして……。私の前にも商人が列をなしておりますので、私の番が回って来るのは……数日は後かと』


 いつの間にか王宮……。た、確かにお金持ちの水の国相手なら極大ルビー買ってくれるかもしれないね。商売が順調なようで良かった。しかし困ったな。早くしないとエステラを待たせてしまうことになる。一週間と言った手前、いつになるのか分からないラダマンさんの帰りを待つのはどうなんだろう……。


「うーん、困ったなあ……」

「どうしたんだ?」

「いえ、ラダマンさんまだ水の国にいるそうなんですけど、こっちに戻れるのはいつになるか分からないみたいなんです。ラダマンさんの紹介があれば首輪は購入できそうなんですが……」

「それは困るな……」


 ルークスは早くエステラに会いたいだろうからねえ。ここで数日のロスは痛い。うむむ。


「じゃあ、とりあえずユーリが複製した首輪を使って魔獣を捕まえて、ラダマンさんが帰って来たら本物と交換したら? ユーリがこの世界にいる内は複製した首輪が消えることもないだろうし、そんなに急いで交換しなくてもいいよね?」

「そ、そうですね! カイン君ナイスです!」


 ルークスにドラ子を呼び出してもらい、首に付けている魔獣の首輪を創造してみる。……うん、ちゃんとできた。だが、このままだとドラ子とルークスの主従関係が登録されたままなので、首輪の情報を初期化しておく。よっし! 二個目の魔獣の首輪、手に入った!


「お待たせしましたファルシャード! 首輪はなんとかなりましたので、あとは魔獣ですね! どんな魔獣にするんですか? ここからそう遠くないところに魔獣の泉がありますので、そこならグリフォンやペガサスがいますよ」

「ありがとうユーリ。だけど、俺が欲しい魔獣は土の島にいるんだ」


 土の島? 土の島に魔獣の捕獲ポイントなんてあったかな? まあ良い。本人が言うのだから間違いないのだろう。ドラ子に乗って再び土の島へと戻ってもらう。うーん、早い。やっぱりドラゴンはいいね。戦闘はもうこりごりだけど。そのまましばらく飛び続けてもらい、土の島の上空に入った。


「ファルシャードがほしい魔獣はどこにいるんですか?」

「ああ、あの古代遺跡だ。ほら、高い塔がみえるだろう?」


 古代遺跡の高い塔……。って、あれか。うーん、あそこ面倒くさいんだよね。地下の発電システムを起動して各階のガーディアンを倒して次の階へどんどん上っていくんだけど……クリアするのに三日ぐらいかかった気がする。うーん! さっき時間問題が解決したと思ったのに! しかも敵も機械ばっかりだよ? 魔獣なんていたかな?


「あの古代遺跡に魔獣っていましたか?」

「ああ、塔の上に住む美しい羽根の鳥が──」

「……ってそれボスじゃん!」


 おっと。思わず心の声が口から出てしまった。わたしは「……すみません」と軽く謝っておく。つっこまれたファルシャードは特に気にした様子もなく、ひたすらにわくわくしているようだ。


 神鳥シームルグ。古代遺跡ダンジョンのボスとして、屋上に巣を作っている巨大な鳥だ。ボスだよ。え、ボスを使役しようとしているの? 仮にも神の鳥だよ? ちょっと烏滸がましいんじゃない? 大丈夫? バチ当たらない? それに加えてダンジョン自体の面倒くささのダブルパンチだよ。


「うーん、困ったなあ……」

「どうしたんだ?」

「いえ、あのダンジョンってとっても面倒くさいんですよ……。各階をクリアしながら一回ずつ上に上って行かないといけないし……攻略に三日はかかるかと」

「そんなにか!?」


 うん、睡眠食事時間を考えずにそのくらいはかかるかもね。魔力も温存しないといけないし、地道に物理攻撃で地味に上っていくしかないのか……。


「なあなあ、そんなことしなくても、このままドラ子に乗って塔の上まで行けばいいんじゃないか?」

「いや、それはだめでしょう」

「なぜだ?」

「なぜって、ダンジョンには乗り入れ禁止がお約束──」

「それは誰が決めたんだ?」


 だってゲームでは──と思ったところで、わたしはふと考えた。いや、すでにわたしが知っているWEFとこの世界ではかなり相違点が生まれている。律儀に乗り入れ禁止のルールを守る意味ってあるのだろうか? いや、ない! ファルシャードの言うとおり、ドラ子で近づけばいきなり屋上だ!


「……そうですね。このままドラ子に乗って近づいてみましょうか。なんなら、ボスもドラ子に倒してもらっちゃいます? なんと言っても、世界最強のドラゴンですからね。勢い余って倒してしまわないように気を付けなければなりませんが」

『……我にそのつもりはない。力で相手を従えようとするならば、自身の力を示さねば意味があるまい。近くまでは送り届けてやろう……後は自分たちでなんとかしろ……』


 ちぇ、ドラ子に怒られてしまった。半分本気、半分冗談だったんだけどな。ま、近くまで行ってくれるだけども相当ありがたい。これでシームルグに戦って勝つだけだからね! 願わくば、ボスにも魔獣の首輪の効果がありますように!

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