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別れ話と手切れ金

 太陽の光が眩しい。建物の中も光る壁や床のお陰で充分明るかったが、やはり自然光に比べると暗いのだ。ファルシャードと共に外に出たわたしは、ルークスと軽く視線を合わせ頷く。


 言わねばならぬ……! ……ならぬのだ! 拳を強く握りしめ、覚悟を決めてファルシャードの方を向く。


「あ、あの! ファルシャード……」

「なんだ? ユーリ」


 片手を腰に当て、リラックスした状態のファルシャード。ルークスは、ハラハラした様子で見守ってくれている。カイン君は今から話す内容を伝えてないので、いたって普通。わたしはすうっと息を吸い込み、言葉を発する。


「お、お話があるんです……!」

「ああ、愛の告白ならいつでも受けるよ。ここでいい? 場所変える?」


 ち、違うんだ! そんな嬉しそうな顔をしないでくれ! 全然良い話じゃないんだ……! ポジティブシンキングなファルシャードの勘違いにより、より伝え辛くなってしまったがここでやめるわけにはいかない!


「ち、違うんです。そういう話ではなくて、その──」


 しどろもどろ言いにくそうに話すわたしを見て、ファルシャードは良い話しではないと悟ったみたい。腰に当てていた手を下ろして、笑顔からフッと真面目な表情になった。


「ド、ドラ子がですね……四人乗りなんですよ……」

「あぁ、そうだな」


「で、今わたし達は四人なんですけど、もう一人仲間が風の島にいるんです」

「前に話していたから知ってるよ。それがどうかしたのか?」


「つまりですね、つまり……五人は……の、乗れないじゃないですか? でもこれから先、わたし達にはそのもう一人の仲間の力がどうしても必要で……だから、その、ファ、ファルシャードには……一旦パーティーを外れてもらいたいんです!」

「…………」


 言った! 言えたよ! ミッション遂行にホッとしたのもつかの間、ファルシャードからのリアクションがない。わたしは恐る恐るファルシャードの顔色をうかがう。わたしの言葉を受けて、顎に手を当て何やら考えているが、今の所無言。こ、怖い……! 一体どんな反応が返ってくるのか……!


「なるほど……わかった。受け入れよう」

「「……え!?」」


 ルークスと思わず声がハモった。自分で言っといてなんだけど、良いの? 本当に!?


「い、良いんですか?」

「ああ、俺の実力がみんなより下なのは分かっている。魔王を倒す為により強い者を選ぶのは当然だ。離れている間、俺も自分の力を磨くことにするよ」


 わたしはほっと胸をなで下ろす。よ、良かった……! なんかすんなり解決したみたい。あれほど悩んでいたのが馬鹿みたいだ。ファルシャード、意外と良い奴じゃん。わかってんじゃん。


「……ただし!」


 わたしは突然の大きな声に驚く。ファルシャードはニヤリと笑うと、腕組みをしてわたしに顔を近づけた。


「条件がある」

「じ、条件?」


 な、なんだ!? 手切れ金を要求されるのか!? ある程度のまとまった額なら渡すことが出来るが、わたしにはファルシャードが望むものがさっぱりわからない。かわいい女の子百人とか要求されたら用意のしようがないよ!


「……俺も自分の飛行魔獣がほしい!」

「……え?」


「だってそうだろ? 父さんとも世界を見て回るって約束したし、こんなに早く村には戻れない。俺もみんなのレベルに追い付いたらそれなりに役には立つだろうし、力になりたい。困った時に駆けつける足があってもいいじゃないか。昨日ユーリがルークスにスキルで話しかけてただろう? 俺の力が必要な時はあれで呼んでくれ。飛行魔獣に乗ってすぐに会いに行くよ」


「どう?」と顔を近づけて聞いてくるファルシャード。ちょ、ちょっとタイム! わたしは急いでルークスとカイン君に相談をする。


「ど、どうします!? なんか飛行魔獣ほしいって言ってますけど、ドラ子は渡せないですよね!?」

「当たり前だろう! ドラ子は俺の飛行魔獣だ!」

「でも魔獣の首輪って一個しかないんじゃない? どうしようか?」


 そうなのだ。ゲーム中魔獣の首輪は唯一品で、二個目は手に入らない。とはいってもラダマンさんもグリフォン何頭も使役してたし、グクス村の人達もグリフォン買ってたし、買おうと思えば買えるものなのかな? いくらぐらいなんだろう? お金ならあるよ。


「どこかで購入できる物なんでしょうか……。売ってるところは見たことないですけど」

「うーん、ラダマンさんに訊いてみようか? ユーリのスキルで訊けるんじゃない?」

「それか、ユーリのスキルで複製できないのか? そっちの方が早くないか?」

「えー、複製は出来るかもしれないですけど……わたしが作った首輪だと、もしもの時は消えちゃうかもしれませんよ? そうなった時に空中にいたら、振り落とされて真っ逆さまですよ」

「あーそれは怖いなー」

「ですよね? わたしだったらそんな危険な乗り物には乗りたくないです!」

「じゃあやっぱりラダマンさんに訊いてみる?」


 うん、それが無難だね。えーと、わたしラダマンさんに触ったことあったかな? わたしが遠隔念話のスキルを使って候補者リストを確認すると、確かにラダマンさんの名前があった。よし、問題ないね。


「ファルシャード、もう一つ魔獣の首輪が手に入るならその条件を飲みたいと思います。……無理を言っているのはこちらですし。ちょっと知り合いに入手可能かどうか確認してみますね」

「ああ、頼む! ……実はもう、欲しい魔獣は決まってるんだ!」


 そ、そうなのか。ドラ子のことを相当気に入っていたようだが……まさかドラゴンとか言わないだろうな? わたしはファルシャードの希望の魔獣を想像し、ゴクリとつばを飲み込んだ。

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