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杖、アップグレード

 さあ、加護ももらえたことだし、さっさと帰ろうか! 撤収ー!


「じゃあ、ありがとうございました!」


 ノームに別れを告げ、わたし達が次の目的地である中央の魔法陣の場所について話しながら歩いていると、突然待ったがかかった。


『……………………待て』


「……ん? 今呼び止められました?」

「そうだな」

「そうだね」

「ああ、俺も聞こえた」


 ……空耳ではないみたいだね。もう大分歩いてきちゃったんだけど……。地の精霊様を無視するわけにもいかないので、わたし達はノームの元まで歩いて戻る。……呼び止めるんならもう少し早くしてほしかったよ。


「何か御用ですか?」


 わたしはノームの身長に合わせ、しゃがんで話を伺う。ノームはゆっくりと頷き、わたしが手にしている杖を指さした。


『……………………その杖は…………』

「ああ、これですか? 便利なんですよ。ほら、こうやって重たい物でも自由に持ち上げたりできて──」


 わたしは都合よくたまたま側にあった岩を、杖を使って持ち上げて見せる。岩を左右に振って見せると、その動きに合わせてノームも目で動きを追っている。……猫みたいだな。それが面白くてしばらく岩を動かしていたが、ルークスに咳ばらいをされて、元あった場所に岩をそっと下した。


「──とまあ、こんな風に使うことができるんです。いくらノーム様の頼みでも、流石にこれは差し上げられませんよ?」

『…………いや、そうではない。その杖は……………………呪われているぞ』

「あ、知っています」


 呪いって持ち主の魔力を吸い取るってやつでしょう? 大した呪いじゃないし、気にしてないよ。むしろ便利でしかないわ。わたしはノームに杖を手放すつもりはないことを説明する。


『……………………そうか。お前にそこまでの覚悟があるのなら…………止めはしない…………。呪いを打ち消すことはできぬが、我々も地の精霊として…………僅かばかりの祝福を贈ろう』


 ノームからぽうっと緑の光球が生まれ、杖に入っていく。……? ファルシャードがもらった加護とはちょっと違う感じ? 


「あ、ありがとうございます。……えっと、何をしてくれたんですか?」

『………………杖の成長を促した』


 ん? あ、ほんとだ。魔力溜まってる! 今回の進化は時間かかったな。あんまり杖を持ち歩いていなかったていうのもあるけど……。わたしは早速杖を進化させてみる。葉っぱが生えていた部分から、白や紫のトルコキキョウに似た可愛らしいお花がぽぽぽんっと咲いた。


「わー! 可愛い!」


 お花が咲いたことによってフラワーリースのようになった杖。匂いを嗅いでみると、確かに本物のお花の香りがした。うーん、随分乙女チックな進化を遂げたな……!


『…………白い花が多い内は問題ない。………………紫の花が増えぬように気を付けろ…………』


 え? 紫だめなの? どっちも可愛いけど。ていうか、何にどうやって気を付けるのさ。ノームは大地と植物の精霊だから、この花についても詳しいんだろうか。


「この花ってなんなんですか?」

『…………その花は、お前の心の鏡だ。………………杖に掛けられた呪いに…………飲みこまれぬようにしろ…………』


 それだけ言うと、ノームはすうっと消えてしまった。呪いって魔力吸われるだけじゃないのかな? ……まあ、いいか! 白い花が多い内は問題ないって言ってたし! 今の所、花の割合は七対三ぐらいで白が多い。問題ない!


「綺麗な花だねーいい匂い」


 カイン君が杖の花に触れながら匂いを嗅いでいる。おお、花と美少年……! めっちゃ絵になる……! でもなんか、わたしの匂いを嗅がれているみたいで……恥ずかしい!


「ユーリに似合ってるよ。可愛いね」


 にっこり笑いながらそんなことを言われて、わたしは赤面する。その瞬間、杖に咲いた花の割合が九対一ぐらいに変化した。……白めっちゃ増えたじゃん。え、褒められると増える感じかな?


 そのあとすぐ、ファルシャードも進化した杖を褒めてくれたが、わたしの心が動かなかった所為か、花の割合はこれ以上変わらなかった。……褒められればいいってもんでもないみたいだね。そうだ。こんな時こそ鑑定してみよう。何か新しい説明があるかもしれないしね。


 わたしは進化した杖を鑑定してみる。


【選択の杖】

 世界の為に犠牲になりますか? 世界を滅ぼしますか?


「ぶっ……!」


 思わず吹き出してしまったわたしにみんなが注目するが、なんでもないと平静を装った。……いきなり物騒じゃない? どうした!? 今までそんなスケールじゃなかったじゃん! え、ノーム何段階進化させたの!? しかも能力に関する説明一切なしかよ! あ、でも攻撃力は上がってる。


 みんなと一緒に歩きながら地上へ出る階段を上っていく。階段の両端に光源はあるが、不思議と明るかった祭壇のある部屋に比べると、ここは薄暗い。ルークスとカイン君とファルシャードはそれぞれがもっている加護の効果について盛り上がっている。わたしはたまに相槌を打ちながら、ぐるぐると先ほどの説明文を思い出していた。杖はわたしの手の中で鈍く光り続けている。


 つまり、あれだよね? 次が最終進化ってことだよね? それまでに、選べって事だよね? 


 ……現状維持っていう選択肢は、ありなんでしょうか……。 

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