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地の加護ゲット

「ルークス! そろそろいいですよ! 次はカイン君お願いします!」


 ルークスがノームの腰に止まらせておいたファイヤボールを操作して被弾させる。カイン君も先ほどと同じように水牢を発動し……プラス、アイシクルエッジで作った氷を加え氷水水牢を作ってくれている。おー、いいですね! 赤くなったノームの腰が氷水に触れ、ジュッと音を立てた。


 水牢に再びとらわれたノームはカイン君を串刺しにしようと、地面から鋭い岩を連続で繰り出してくる。カイン君はそれをひらりひらりとジャンプでかわしていくが、かわし切れたと思った岩が途中でぐんと伸びた。あ、危ないっ! すでに空中に跳び上がってしまっているカイン君に逃げ場はない! かろうじて体を捻った為、直撃は免れたようだが腰の辺りの肉がえぐれている。ぎゃー! よりによって鎧の布張りの部分に! 最強装備仕事しろし!


 わたしはカイン君に駆け寄ると、ありったけの薬草を傷口に押し当てた。


「だ、大丈夫ですか!?」

「……ありがとう、ユーリ。よけきれたと思ったんだけど、あそこから伸びると思わなかったな……」


 脂汗をかきながらも笑って話すカイン君。絶対痛いはずなのに! わたしに心配を掛けまいとして笑って見せるカイン君、なんて健気! 薬草のお陰でとりあえず傷口はふさがったので、カイン君には少し下がっていてもらおう。その代わりに待機していたファルシャードに前に出てもらう。もう準備は整ったしね!


「ファルシャード! 止めをお願いします! ルークスはファルシャードに攻撃が当たらないようにサポートしてください! あ、ついでに攻撃力アップの魔法もお願いします!」


 幸いノームはいまだに水牢にとらわれたままなので動きが鈍い。ルークスがファルシャードにパワーアップの魔法を掛け、ファルシャードがノームの串刺し岩攻撃を避けながら近づいて行く。わたしはカイン君と一緒にその様子を離れて見守ることにした。


「ねえ、ユーリ。ノームを熱したり冷ましたりって何の意味があったの?」

「あーいや、実際効果があったかどうかは分からないんですけど、鋼鉄って熱すると……」

「熱すると?」

「……硬くなります」

「え……それ、だめなんじゃない?」

「いえ、わたしの記憶が確かなら……硬いイコール壊れないってわけじゃなかったと思うんですよね。硬くなればなるほど脆くなっていくというか……」

「そうなの? よくわかんない」

「……実はわたしも詳しくは覚えてないんです。あと熱したり冷ましたりを繰り返すと亀裂が入るって聞いたこともあるし、金属って冷やしすぎると脆くなるって聞いたこともあるので……今回はそれらのうろ覚え知識を全部試してみました!」

「……そうなんだ。じゃあ念の為に、もう少し冷やしておこうかな……」


 そう言うと、カイン君は水牢を解除してノームにブリザードを放った。水牢が消えて自由になったノームが両手を振り上げ地面を打ち叩こうとしている。あー、【地割れ】のモーションだー。やばいなー。あれくらったらファルシャード……生きてるかな? だが、ファルシャードもノームのすぐそばまで来ている。間に合うか!? パワーアップの魔法で攻撃力の底上げはした。助走もつけている。カイン君もダメ押しで更に冷やしてくれた。……どうだ!?


 わたしとカイン君とルークスが見守る中、ファルシャードは掛け声と共にノームの腰めがけて渾身の一撃を放った。瞬間、ノームは上半身と下半身に見事に二分され、地面にズドンと倒れる。


 や、やったーーー! わたし達はファルシャードに駆け寄り喜ぶ。ファルシャードはノームを殴った拳がちょっと痛いみたいだけど、腕とか折れてない! すごい! 流石、大地の民!


『…………………………見事だ、人間』

「ってきゃあああああああっ!」


 わたしは腰の部分で真っ二つになったノームから発せられた念話に驚いて悲鳴を上げてしまった。……まさかこの状態でしゃべれると思わないじゃない? 若干ホラー入ってたよ!


 ファルシャードによって真っ二つにされたノームはしゅるしゅると小さくなり、もとの小さ目サイズに戻った。そして上半身と下半身がそれぞれ器用に起き上がると、上半身が腕を使って下半身の元へと歩いて行き、よいしょと上に乗ったかと思うと……そのままくっついて普通に歩き始めた。歩きながらノームの鋼鉄の体は元の色に変化していっている。ノームは祭壇の上に置いてあった帽子をポンと頭に乗せると、わたし達の方にゆっくりと向かってきた。……遅っ。


 あんまり遅いので、こちらの方から歩み寄ることにした。ノームは近づいてきたわたし達を見上げ、そのまましばらくの沈黙──


 な、なんだ……? 一体この間は何なんだ? だが、誰も口を開かないのでわたしも黙っておく。


『……………………そこの、白くて黒いの』

「……え? 俺?」


 ファルシャードがきょろきょろと辺りを見回した後、自分を指さす。


『……………………そうだ。…………見たところ、お前が一番……我々の加護を受けるに………………相応しい。……受け取れ』


 ノームから光の玉が出てきて、ファルシャードの体にすうっと吸い込まれていった。よっし! 地の加護ゲットだぜ! ノームからの加護を得たファルシャードは感慨深げだ。光が吸い込まれていった腹をさすり、口の端が嬉しそうに上がっている。


 これで加護持ちが三人そろった! あとは風の加護だけだね!

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