ステータス確認
アメリアはかなり前に仕事があると言って出て行ったし、カイン君はまだ戻ってこない。わたしは部屋に一人だ。そういえば自分のステータスをチェックしていなかったので、ステータスウィンドウを思い浮かべながら、心の中で「ステータス」と唱えてみた。
目の前に半透明のウィンドウが表示される。うわっ! ゲームっぽい!
わたしはわくわくしながら、自分のステータスを見る。
名前 :ユーリ
職業 :神の眷属
LV :1
HP :10/10
MP :∞
攻撃力:5
防御力:2
素早さ:3
スキル:【魔素の体】【管理者権限】【鑑定】
加護 :
魔法 :
……弱すぎじゃね? え、待って。これ弱すぎじゃない? その辺の雑魚にも負けるレベルじゃない? 防御力2とか……HPも低いし、攻撃くらったら即死じゃん。チートスキルあって良かった! あと【魔素の体】は分かるけど、【管理者権限】ってなんだ? 触りたいものに触れる能力のことかな? っていうか、【鑑定】持ってる! やった!
鑑定があれば他人のステータスやアイテムの効果を確認できる。この世界において情報は武器だ。ゲームをプレイしていた時は主人公が鑑定持ちだったので、わたしもかなりお世話になった。
試しにカイン君の部屋の椅子を鑑定してみる。心の中で「鑑定」と唱えた。
【木の椅子】
どこにでもある木の椅子。城の備品。投げられると痛い。
おおーーーーー! ちゃんと機能してる! つづけてテーブル、チェスト、ベッドを鑑定してみる。
【テーブル】
どこにでもある木のテーブル。城の備品。表面にナイフを突き立てられた傷がある。
【チェスト】
どこにでもある木のチェスト。城の備品。中に着替えが入っている。開けるべからず。
【ベッド】
どこにでもある木のベッド。城の備品。一人用だが、それなりに広い。
さて他に何かないかな~♪ あ、あれにしよう!
わたしはなんの変哲もない木の扉を鑑定しようと思い、満面の笑みで内開きの扉の前に立った。
ガチャッ
「うわっ!」
突然扉が開き、ぶつかると思って目を閉じたが、扉はわたしをすり抜けた様で痛みはない。目を開けると目の前にカイン君が立っていた。
か、顔が近い! 恥ずかしさから、思わず突き飛ばす様に両手を前に伸ばしたが、わたしが後ろによろめいただけで、カイン君はびくともしなかった。……体幹強いんだね。
「何してるの?」
「え? いや、ちょっと扉を鑑定しようと思って……」
ふーんといいながら、特に気にした様子もなくカイン君が部屋に入ってくる。
うう、今のはやばかった! 頬の熱さで自分の顔が赤いのがわかる。カイン君とわたしの身長が同じくらいなので、目の前に立たれるとほんっっと顔の位置が近いっ! 目が目の前! 口も口の前! イラストならいつまでも眺めていられるけど、生は眩しすぎて直視できない! あぁ勿体ない! わたしのバカっ!
わたしが顔をおさえながら嘆いていると、カイン君が鎧を外しながら話しかけてきた。
「さっきアメリアに会ったんだけど、なんかすごく怒られた。警戒心がたりないとか、どうきん? がどうとか……」
怒られたことは分かるが、なぜ怒られたかはよく分かっていないようだ。……悪い大人に騙されないか心配だ。
「自分の言いたいことだけ言って、さっさと行っちゃったんだよね……。あとでアメリアもここに来ることになってるから、その時に詳しい話聞かせてくれる? それまで僕と話して待ってようか」
カイン君に椅子を勧められ、席につく。アメリアとも話し合ったが、カイン君には自分の命が危ないことは伝えない方向でいこうと思う。そのうえで口裏を合わせ、わたしのことを説明しなければならない。
「えっとまず名前聞いてもいい?」
「あ、はい。優理といいます」
「ユーリね。……うーんやっぱり覚えてないかなぁ」
わたしのことを思い出そうとしているカイン君には悪いが、会ったことはないので思い出せるはずがない。この世界に来た時つい口走ってしまった「五年前」という言葉を、カイン君は気にかけてくれていたらしい。なぜカイン君のことを知っていたかなど、アメリアと一緒に考えた【神の使いの預言者】という設定があるのだが、わたしが一人で説明するより【真実を見抜く目】持ちのアメリアに同席してもらった方が信じてもらえる気がするので、今は曖昧な笑いを浮かべるにとどめておいた。話題を変えようと、わたしから話を振ってみる。
「き、今日はなんの訓練をしてたんですか? ずいぶん長い間頑張ったんですね」
「そうなんだよ、明日が闘技大会だから隊長が張り切っちゃってね。自分の隊から上位入賞者をだすんだって言って、朝からずーーっと模擬戦してたんだ。体力と魔力の回復のために必要な時間は確保してくれたけど、さすがに疲れたよ」
カイン君は椅子の背にもたれかかり、小さくため息を吐いた。……本当にお疲れらしい。無理もない。早朝に出て行ったカイン君が戻ってきたのは夕方だ。はっきりとした時間は分からないが、少なくとも八時間以上は経っている。デスクワーク中心だったわたしでさえ、会社からの帰宅時はふらふらだった。戦闘訓練ともなれば、相当きついんだろうな。……運動経験のあまりないわたしには、どれだけ過酷な訓練なのかを想像するのも難しいけど。
「あっでも、いっぱい訓練したし今年はいいとこまで行くと思うんだよねー。去年は三回戦で負けちゃったけど。今年は優勝できるかなー」
「そ、そうですね!」
にこにこ話すカイン君には悪いが、今年も優勝は無理です。なぜなら勝つのは主人公である勇者だから。ううっ純粋な笑顔を向けられると胸が痛い。というか、明日が闘技大会なんだ。結構序盤のイベントだな。
毎年城で行われる闘技大会には各地から強者が集まってくる。ストーリー上カイン君は決勝で主人公と戦い、負けてしまうのだが、その強さを認められ主人公のパーティーに参加することになる。
わたしはこっそりカイン君を鑑定してみた。
名前 :カイン
職業 :王宮第二部隊兵士
LV :20
HP :567/1020
MP :113/375
攻撃力:156
防御力:130
素早さ:280
スキル:【連続攻撃】【空中姿勢制御】【素早さ成長補正】
加護 :【水の加護】
魔法 :【アイシクルエッジ】【ウォーターヒール】【ブリザード】【水牢】
うんうん、初回戦闘時のカイン君のレベルだ。カイン君は手ごわかった……。まず、魔法の相性が悪い。火属性の魔法しかもっていない主人公はかなり不利だ。次に素早さが高いので、こちらの攻撃がなかなか当たらない。逆に、カイン君は素早いうえに連続攻撃持ちなので確実に二回攻撃を入れてくる。やっと与えたダメージも、ウォーターヒールで回復されるので長期戦は必至だ。この戦闘ははっきり言ってアイテム頼みだ! カイン君はアイテムを使わないが、主人公は使いまくりなので回復薬の量で押し切る形になる。……わたしはそうやってクリアしていた。
心情的にはカイン君を応援したいが、メインストーリーが変わってくるとこの先どんな影響がでるかわからないので、とりあえず主人公に勝ってもらいたい。ごめんねカイン君。
そうこうしているうちにアメリアがやってきた。三人そろったところで話し合いの始まりだ。




