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死亡不可避のゲームキャラ

初小説ですー。よろしくお願いします!

「まただめかー」


 携帯用ゲーム機を手にしたまま、自室のベッドに突っ伏す。

 初任給を元手に作り上げた、村娘の衣装にテンションがあがり、今ならば行けるかもしれない! と、謎に自信と共に五十一回目の周回プレイに挑んだが、結果は今までと同じ。

 いつもは着ることのない、足首まであるスカートを蹴り上げながら足をバタつかせる。



 液晶画面には、愛しい愛しい推しのパーティー永久離脱メッセージが表示されている。



 わたしは所謂ゲーム女子で、物心ついたころには外で遊ぶより、室内でゲームというタイプだった。

 エアコンにスナック菓子にゲーム機。これ至高。

 中でもとりわけRPGロールプレイングゲームが好きだ。こつこつとレベルを上げる作業ですら楽しくてたまらない。現実世界と違って、ゲームは頑張れば頑張っただけレベルが上がる。成績もスポーツも見た目も今一つのわたしは、みんなが青春を満喫している中、ひとりゲームの中で達成感や充実感を得ていた。……そこ、寂しいやつって言わないで?


 そんなわたしが五年前に出会った名作RPG、【ワールズエンドファンタジー】通称【WEF】

 ストーリーは王道の、勇者が魔王を倒しに行くって感じのやつ。だが、そこがいい。

 老舗メーカーの安定の操作性、バトルの爽快感、美麗なキャラデザ、壮大な音楽、オマケのやりこみ要素。どれをとっても星五つである。発売したのは結構前だけど、今でもコアなファンを増やし続けている不朽の名作だ。


 ……はまった。見事にはまった。ドはまりした。


 基本コミュ障のわたしが、このゲームに関してなら、SNS上ではあるが喜んで人と話しができる。すらすらと言葉がでてくる。むしろ尽きることがない。なんなら夜通し語り合いたい。

 この春からは念願の一人暮らし。もう家族に隠れてこそこそオタ活をする必要はない。推しキャラの祭壇を作り、初任給手取り十八万の内、五万を使ってせっせとオフ会用の衣装を作り、充実したオタクライフを送っている。ちなみに自分が行き過ぎていてちょっと気持ち悪いという自覚はあるので、周囲にオタバレはしていない。お母さん、二十二歳にもなってこんな一人娘でごめんなさい。……おっと、話しが逸れたね。


【WEF】にはまってからは、今までつまらないと思っていた自分の人生の見方が変わった。なんというか、ポジティブになれた。ブラック寄りの会社に就職しても、推しのグッズの購入資金を稼ぐためだと思えば、入社初日の残業だって苦ではない。不条理な上司のお説教も、「これが現実世界でのレベル上げ」で自分を納得させる事ができる。どうよ、このセルフメンタルケア能力。先週の単独早朝花見場所取り命令も、久々にたっぷり推しキャラとの妄想ができて幸せだった。


 そう、お恥ずかしい話ではあるが、私はゲームのキャラクターに恋をしているのだ。


 主人公のライバルキャラである【カイン】君。見た目、性格、声、強さ、どれも最高。最の高。好きすぎて同棲生活の脳内再生も容易である。



 ──だがしかし、私の推しのカイン君はストーリー進行上死んでしまうのだ。



 初回プレイ時は泣いた。いや三回目~四回目ぐらいまでは号泣してたかな? 今回はさすがに五十一回目だからね、うっすら涙がたまる程度だよ。

 勿論わたしだって、ただ悲しんでた訳じゃない。ありとあらゆる攻略サイトを閲覧し、死亡イベント回避の裏技を探し、復活の可能性があるアイテムはすべて試した。……それでも結果は一緒。二十回目のクリアの後で私は同人誌に逃げた。ハッピーエンド物を買いあさり、自分の心を慰めた。同人誌のなかでカイン君は元気に過ごし、幸せそうに笑っている。……これでいいのだ。公式が「死亡不可避」と明言している以上、わたしにできることは何もない。



 ……って、良いワケないでしょー!? 頭でわかってても心が納得しないんだよー!!

 ああーーーー何とかしたいーーーー!! 神様! お願いします! わたしの願いを叶えてください!!



 ベッドに顔をぐりぐりと押し当て、再び足をバタつかせて、やり場のない感情を少しでも発散する。

 ふと、せっかく作った服がお披露目前に傷むな、と冷静になり、ネットで新たな同人誌をポチって、その日は寝た。

基本ふざけた展開に騒がしい主人公ですが、広いお心でお付き合いください。

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