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アニメオタクとリア充モテ男の出会い。


4月。



桜の舞い散る季節の時期に私は同じクラスの男の子にはじめて恋をした。


きっかけは些細な事だった。

口下手でいつも教室で一人でいる私に彼が声をかけてくれたのがきっかけだった。



彼……『太嶋一陽(おおしまかずはる)』はとても明るく、活気的なクラスの中心的存在の人物だ。

彼のまわりには必ずといって良いほど人が集まっている。


明るく爽やかな彼は男女問わずにクラスの……いや、学年内のクラス者だ。

顔も良ければ、成績も良く、運動神経も良いときた。

それで性格も良いといったオールマイティー人間なのだから、神様は不公平だと思う。



それに比べて、私……『向日葵希(むこうあき)』は本当に平凡な人間だ。

顔も平凡であれば、成績も運動神経もまぁ、普通より下の方だ。

特に自慢出来るような特技も無く、漫画やアニメなどの登場人物で例えるなら『モブキャラ』という感じだ。

そんな目立たない私が2年になった頃、クラス替えで太嶋くんと同じクラスになった。


1年の頃から噂になっていたが、同じクラスになると彼の人気は本当にスゴいと確信する。

休み毎に人が集まり、ひとりでいる所なんてないんじゃないか?って程だ。

それに引き替え私はこれといって仲の良いと言える友達もいないので、常にひとりで本を読んでるくらいだ。

しかもアニメ化された文庫本というオタク丸出しの本を……。


もちろんまわりにはバレないように文庫カバーで表紙は隠してある。




私のようなモブキャラは教室の隅でひとりで大人しく本を読んでるのが一番良い……。




ある日、私がいつも通り自分の席で本を読んでいると思わぬ人から声を掛けられる。



『それって、今アニメ化してるやつだよね?』



後ろから声を掛けられ思わず読んでた本を隠すように閉じて声の主の方へ振り返ると、そこには太嶋くんがいた。


『急に声なんか掛けてごめん。今読んでた本って、夜にやってるアニメのやつだよね?絵が見たことあるなぁと思って思わず声かけちゃったけど、邪魔しちゃったかな??』


とゴメンね、と謝る太嶋くんに『寧ろ私が失礼な態度でごめんなさい』と謝る。



私が今読んでる文庫本は最近アニメ化され、夜にやっているファンタジー系のバトル小説だ。

彼が言っていた『絵』というのは挿し絵の事を指していると思うが、まさかリア充である太嶋くんがまさかこのアニメを知っているとは……。


私は思わず『太嶋くん、このアニメ知ってるの?』と問いかけた。

すると彼は『弟がそのアニメにハマっていて家で観てるから、俺も自然と一緒に観てたんだけど、それ結構面白いよな』と笑顔を向けて答える。


ほんとその笑顔を向けられただけで神々しく感じ、思わず手を合わせて拝みたくなるほどだ。


『うん。この作品先々週からアニメ化されたんだけど、私元々この作品大好きで、アニメ化されてほんとテンションあがっちゃったよ。文庫本今出てる分、全部揃えてるんだけどやっぱり文庫本にはない素晴らしさがアニメにはあって本当に面白……』


とあまりに熱く語ってしまったことにしまった、と話を止める。


隠したかったのに、アニメの……しかも好きな作品の話題を出されて思わずテンションあがってしまいついベラベラとオタク丸出しの会話を……。

しかもそれがリア充の中心だとも言えるような人物、太嶋くんにだ。

話題を振ってくれたのは太嶋くんとはいえ、これはさすがにドン引きされたはずだ。

『穴があったら入りたい』ということわざはまさにこういうときに使うものであろうか。本当に恥ずかしくて消えたくなる。


そんな私の気持ちを知ってか否か、太嶋くんは話を続ける。

『へぇ、向日ってこのシリーズ全部持ってんの??今度良かったら貸してくんない?』

『え?』

突然の申し出に驚いてしまった。

『嫌ならいいんだけどさ、アニメ観てたら結構面白くて。原作読んでみたいし、ダメかな?』

と、可愛らしく小首を傾げて尋ねてくる。

男に対して可愛いという表現はどうかとは思うが、これが漫画のイケメン男子だと絶対女子のきゃー!!とかいう黄色い声が聞こえて来そうなくらいに凄い破壊力がありそうな仕草だ。

というか、実際に私が萌え死にするとこだった。

『ううん!嫌とか全然!全部持っていくのは大変だから1巻ずつで良かったら明日持ってくるね』

という私の返事に『ありがとう』と眩しい笑顔。

その後すぐに太嶋くんは友人に呼ばれてそちらに向かったが、こんな私にも『じゃあ宜しくな』と話しかけてくれた。


その後の事は本当口に出せないほど、私の行動はおかしかった。

授業の先生の話は耳に全く入ってこず、休み時間の度に読む本は全く頭に入ってこなかった。

入ってくるといえば、太嶋くんのあの神々しいくらいの眩しい笑顔と惚れ惚れしそうなくらいの良い声だけ……。


さすが、リア充の中のリア充……否、リア充会の神様と呼ばれる太嶋一陽(私が勝手に付けただけだけど)


その異名を持つだけあって、彼は本当に人の心の奥底に入り込むことがうまい。

実際私も彼の笑顔にやられてしまった。



でもそれは私にとってはリア充神=太嶋一陽であって、恋=太嶋一陽ではなかった。



オタクでアニメや漫画キャラの2次元好きの私が、太嶋くんに恋をした。と気づいたのはそれから何ヵ月も先の話だ。



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