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旭日の西漸 第3部 異界の十字軍篇  作者: 僕突全卯
第4章 終局への道
35/51

ミケート・ティリス揚陸戦 弐

1月31日深夜 ミケート・ティリス郊外 ホスダン騎士団領軍・レターンクン騎士団領軍・ノースケールト辺境伯領軍キャンプ地


 港湾都市の郊外に「ホスダン騎士団領」「レターンクン騎士団領軍」「ノースケールト辺境伯領軍」の兵士たちが寝泊まりしているキャンプ地がある。彼らの故郷は敬虔な長が統治する“保守派”の地方であり、教皇と対立していた前皇帝の皇子であるジェティスの帰還を阻止すべく、他の多くの地方の軍勢が撤退する中で、ミケート・ティリスに残留し続けていた。

 尚、これら3地方は内陸に位置し、他国と国境を接していない為に常備戦力が少なく、今回の聖戦に派遣出来た兵力は各々1万〜2万程度である。一方で、外海に面しており、更に海上貿易の要衝であるミケート・ティリスを有す為に大きな経済力を誇るミケート騎士団領は1地方だけで14万の常備兵力を誇っている。この様に、各地方同士の戦力・経済力には大きな格差が存在しているのだ。


 キャンプ地の一角で、頭上に瞬く星空を眺めていた2人のホスダン軍兵士が居る。1人の兵士がもう一方の兵士に話しかけていた。


「なあ・・・、ニホン軍はここに攻めて来ると思うか?」


 その兵士は不安げな表情を浮かべて尋ねる。ルシニアに駐留している日本軍の動向については、彼らも警戒を張っていた。


「さあ・・・でも奴らの艦隊がルシニアを出航してもう2週間以上経つ・・・。奴らの足なら、もうこの街の近くへ来ていてもおかしくはない」


 話しかけられた兵士が答える。震える程の寒さの為に生じた白い吐息が、虚空へと消えていった。


 ミケート・ティリス市周辺を含むこの地方一帯に集結している軍勢は、一時期100万を超すほどの規模を見せていたが、ジェティスの存命と現皇帝の狂言が明らかにされた今は35万程まで下がっていた。

 街の周辺や各地では、各勢力から派遣された軍勢が所属勢力ごとにキャンプ地を形成しており、見渡す限りに建設された天幕や、湾港・沿岸部に停泊している軍艦の中では、数多の兵士たちが休眠を取っている。


 間も無く日付が変わる。大規模な上陸戦というものを経験したことが無い彼らにとっては、長い一日が始まろうとしていた。



ミケート騎士団領内総戦力 計35万


・クロスネルヤード帝国軍 19万

  皇帝領軍 3万

  レターンクン騎士団領軍 2万

  ホスダン騎士団領軍 1万

  ノースケールト辺境伯領軍 2万

  ラックナム辺境伯領軍 6万

  カッツェル辺境伯領軍 5万

・クロスネルヤード帝国南部属国連合軍 2万

・クロスネルヤード帝国西部属国連合軍 3万

・クロスネルヤード帝国北部属国連合軍 2万

・ジャヌーヤイ伯国軍 4万5千

・リザーニア王国軍 5千

・リーファント公国軍 3千8百

・タヴァン公国・ヒルセア伯国連合軍 4万

・その他少戦力


備考

・ミケート騎士団領軍(無期限ストライキ中) 14万


〜〜〜〜〜


2月1日午前3時 ミケート・ティリスから東へ70kmの海上


強襲揚陸艦「しまばら」 ウェルドック内部


 陸上自衛隊水陸機動団を主力とする揚陸部隊が、3隻の強襲揚陸艦と2隻の輸送艦の内部で出撃の時を待っている。

 隊員たちは、この世界では本格的な初陣となる20式水陸両用車や、アルティーア戦役でも活躍した水陸両用強襲輸(AAV7)送車7型、更にはエア・クッション(LCAC)型揚陸艇に載せられている人員輸送用モジュールや各種車輌、そして各艦の甲板で離陸準備を進めている輸送ヘリコプターやオスプレイ(V-22)の中で、所狭しと座っていた。 


「こんなに彼我兵力に差が開いている上陸戦となるとなあ・・・」

「数十万の兵力が待ち構える土地に上陸するんだろ?」

「単純に怖いな・・・」


 上陸作戦を前に、各々の隊員が不安を漏らしていた。彼らの殆どはアルティーア戦役にて上陸作戦に参加した経験のある者たちだったが、あの時は敵戦力の殆どを「イロア海戦」にて滅した直後だったので、上陸地点にうごめく敵の兵力はこれほど膨大では無かった。


「その敵を潰す為に空爆を行うんだろ。不安がるな、余計なことを考えると任務に支障を来すぞ」


 不安を口にする隊員たちに部隊長が注意を飛ばす。とは言いつつ、久しぶりの実戦を前にしている彼自身も、心臓の鼓動が高まっているのを感じていた。


・・・


旗艦「あまぎ」 飛行甲板


 甲板直下の格納庫から、デッキサイドエレベーターに載せられた艦上戦闘機が次々とその姿を現している。夜明け前である為に外は暗く、コクピットに座る海自パイロットたちは皆、暗視装置を装着していた。

 整備員の誘導を受けながら、1機目のF−35C戦闘機が滑走路へとその足を進める。各戦闘機には離陸に支障を来さない範囲内で、数多くの無誘導弾が搭載されていた。


準備完了(All ready)!」


 蒸気カタパルトのシャトルに前輪がセットされたことを確認した整備員が、急いで戦闘機の側を離れて発進準備の完了を伝える。その様子を確認したカタパルトの操作員が発射スイッチを押し込んだ。


発艦(Take off)!』


 直後、一般の戦闘機ならば損壊してしまうレベルの初速を与えられたF−35C戦闘機が、2〜3秒で飛行甲板の端まで到達し、飛び立った。その後、もう1つのカタパルトで発艦準備を整えていた2機目のF−35C戦闘機も、1機目を追う様にして飛び立つ。

 その後、2機の離陸を終えたカタパルトに3機目、4機目のF−35C戦闘機が迅速に誘導される。それらも先程の2機と同じようにして「あまぎ」から離陸して行く。程なくして、33機のF−35C戦闘機が離陸を終えた後に、早期警戒機であるホークアイ(E-2D)2機の発艦を行い、今作戦に関わる全ての航空機の発艦は終了した。同様に『あかぎ』からも、未完成の航空群である第42航空群のF−35C、及びアメリカ海兵隊の第12海兵航空群に属するF/A−18D、計33機が飛び上がっている。

 此度の作戦に参加している3隻の強襲揚陸艦では、敵の航空戦力である竜騎に対応する為、各種短距離空対空ミサイルやガンポッドを搭載した海自所属のF−35B戦闘機、計15機が離陸を終えている。

 5隻の艦から飛び立った計83機の航空機からなる戦闘機団は、一路針路を西のミケート騎士団領へ向ける。彼らの標的は同地方の主都であるミケート・ティリスの周辺地域にキャンプ地を形成している敵兵力への空爆だ。


 斯くして、約3ヶ月の準備期間を経た「ミケート騎士団領上陸作戦」、正式名「日ノ出作戦」、その第1段階がついに発動することとなった。


・・・


旗艦「あまぎ」 艦橋


 旗艦の艦橋から、幹部たちが戦闘機団の行進を眺めている。その様子を見ていた誰もが、彼らの成功を祈っていた。


「頼むぞ・・・」


 「あまぎ」の艦長である今川一佐が小さくつぶやいた。航空機の群れは水平線の向こうへと消えていく。


「・・・では、我々も出発だ」


 戦闘機団を見送った鈴木実海将補は、洋上に停止していた全艦に出撃命令を出す。司令の命令を受けた各艦は、彼らの後を追うようにしてゆっくりと動き出した。

 彼らの目標は、ミケート騎士団領の沿岸に停泊中の敵艦隊を撃破し、各揚陸艦から発進する上陸部隊の障害を排除することである。


・・・


<陸海合同上陸艦隊>

総司令 鈴木実 海将補/少将(第1護衛隊群司令)

副司令 名東一華 海将補/少将(第4護衛隊群司令)


海上自衛隊/日本海軍

航空母艦「あかぎ」「あまぎ」

護衛艦「いずも」「まや」「しらぬい」「いかづち」「こんごう」「あけぼの」「ありあけ」「あきづき」「いせ」「ちょうかい」「さみだれ」「さざなみ」「たかお」「いなづま」「きりさめ」「すずつき」

補給艦「ときわ」「はまな」「ましゅう」

輸送艦「おおすみ」「しもきた」

強襲揚陸艦「しまばら」「おが」「こじま」


第7艦隊

ドック型揚陸艦「グリーン・ベイ」(後日合流予定)


〜〜〜〜〜


2月1日早朝 ミケート・ティリス北方の沿岸部 カッツェル辺境伯領軍キャンプ地


 保守派の長が治める地方の1つである「カッツェル辺境伯領」は、ミケート騎士団領より北に存在する地方である。海に面しているこの地方の軍は海軍を有しており、ミケート騎士団領ほどではないが、保有する兵数も多い。

 そんなキャンプ地の一角で、櫓から海上の監視を続けている1人の兵士が居た。


「ハァ〜・・・、寒いな」


 大きな布で身を包み、寒さで震える指先を吐息で温めながら、彼は漆黒の闇に包まれている海と、数多の星が輝く空を眺めていた。


(・・・本当にニホン軍はここへ来るのか? ミケート軍は使い物にならないが、それでも35万の兵力が居るんだぞ)


 見張りの兵士は心の中でつぶやく。

 ルシニアに集結していた日本軍の艦隊が、ついに出航したという報道を受け、ミケート・ティリスを初めとするクロスネルヤード帝国の沿岸部では警戒網が張られている。

 出航した後の日本軍の動向については、各軍の指揮官の間で意見が割れており、帝都リチアンドブルクに1番近いミケート・ティリスに向かっているに違いないという意見と、35万の兵力が集結しているミケート・ティリスを攻める筈がない、日本軍の目標はルシニアから比較的近いドラス・ティリスに違いないという2つの意見が対立していた。

 上層部の意見が纏まらない為に、ミケート・ティリスに集結している兵士たちは身動きが取れないでいる。更に、前皇帝の仇討ちという大義名分が失われた為、将官や佐官などの上級軍人はともかく、末端の兵士たちの士気は下がりつつあった。集結した戦力の目的も、当初の“日本本土への侵攻”から“日本軍の上陸阻止”に縮小されている。それが益々、兵士たちの士気低下に拍車をかけていた。


「ハァ〜・・・」


 見張りの兵士は、再び吐息を両手の指に吹きかける。その時、彼はある異変に気付いた。


「・・・?」


 東の空から謎の音が聞こえてくる。徐々に大きくなっていくその音から、何かが近づいて来ているという事実を悟った彼は、懐に持っていた信念貝を手に取って、すぐさま自軍の司令部へ連絡を入れる。


「こちら海岸見張り所! 東の空より轟音が接近、何らかの飛行物体かと思われる!」


『・・・何!』


 見張りの連絡を受けた司令部の通信兵は、驚きを隠せない。


『状況を詳しく説明しろ!』


(詳しくって言ったって・・・)


 通信兵の指示を受けた見張りの兵士は辺りを見渡す。しかし、たいまつの火と朧気な月明かりしか照らすものが無いこの夜中では、音は聞こえても何がどこから接近しているのか詳しく知ることは出来なかった。

 それでも何か無いものかと、彼は音が聞こえる東の空を注視し続けた。そして・・・


「・・・っ! 東の空から飛行物体の群れが接近! 魔獣の類では無い!」


 見張りの兵士はついに暗闇の中に群れを成す戦闘機団を発見する。それらが近づくに連れて大きくなっていく轟音によって、キャンプ地や軍艦の中で寝泊まりしているカッツェル辺境伯領軍の兵士たちがちらほらと目を覚まし、その顔を寒空の元に出している様子が見られた。


『それは恐らくニホン軍の航空戦力だ! 哨戒中の竜騎士共は一体何をしていたんだ!? ただちに兵士たちを叩き起こせ!』


「り、了解!」


 狼狽する通信兵の指示を受け、見張りの兵士は非常事態を伝える為、櫓に備えつけられている鉄板を打ち鳴らす。


「敵襲! 敵襲!」


 彼の叫び声と甲高い金属音が、辺り一面に響き渡る。敵襲の知らせを受け、兵士たちが一斉に起き始めた。

 しかし時すでに遅し、彼らのキャンプ地はすでに戦闘機団の射程圏内に入ってしまっていたのだ。


〜〜〜〜〜


「敵軍のキャンプ地を視界に捉えました」


 周辺空域の監視を行うホークアイ(E-2D)に、隊長機を操縦する笹沼豪祐二等海尉/中尉が通信を入れる。その後、周囲に作戦の障害になるような竜騎が飛んでいないことを確認したホークアイ(E-2D)から、各機に命令が発せられた。


『先程撃墜した12機の竜騎以外に、周囲に敵航空戦力無し。各機は直ちに任務を遂行せよ』


 命令を受けた各機は、それぞれが振り分けられた担当区域へと針路を取る。


『指定エリアに敵防空施設“竜舎”を発見。最優先爆撃対象です』


 無人偵察機ブラックジャ(RQ-21)ックによって撮影されていた7つの竜舎が、各機のパイロットによって確認された。F−35C戦闘機に搭載されている電子式光学照準(EOTS)システムが、それらの竜舎を目標として捉える。

 その後、竜舎への爆撃を担当する各機から統合直接攻(LJDAM)撃弾を装着した爆弾が投下される。発射母機からのレーザー誘導を受けたそれらは、一直線に未だ多くの竜が眠る竜舎へと向かって行った。


〜〜〜〜〜


カッツェル辺境伯領軍キャンプ地 竜舎前


「竜騎を上げるんだ! 急げ!」


 敵襲の知らせを受けた竜騎士たちは、天幕から跳ね起き、支度を終えて竜舎へと走っていた。 その時・・・


ドカアァ・・・ン!


「うわあぁ!」


 戦闘機団から投下された無誘導爆弾が竜舎を襲った。爆風に吹き飛ばされた彼らは、まるで木の葉の様に宙を舞う。


「り、竜は・・・?」


 地面に強く打ち付けられてひどく痛む身体を起こすと、そこに広がっていたのは、クロスネルヤード帝国が誇る“銀龍”や他の龍たちの惨殺体だった。多くの龍の身体が引き裂かれ、それらの羽根、手足、首が散乱している。爆心地から離れた所に居た個体では息があるものも居るが、とても飛べる様な状態では無かった。


「く、くそ・・・!」


 腰を地面に付けながらその様子を見ていたカッツェル辺境伯領軍の竜騎部隊隊長であるレオルド=アルナーボは、悔しさのあまり、右の拳を地面の上に叩き付けた。その時・・・


ド ド ド ドーン!


 更なる爆撃の雨がカッツェル辺境伯領軍のキャンプ地を襲った。数万人が密集しているキャンプ地に、無誘導爆弾がまんべんなく降り注がれる。

 直後、耳を劈く様な爆発音と共に数多の兵士たちの命が消えた。都市に住む住民たちも、何度も聞こえる巨大な爆発音に驚き、次々と目を覚ました。


・・・


ミケート・ティリス郊外 皇帝領軍キャンプ地 全軍司令部


「竜舎に繋いでいた竜騎は全滅! 生きている個体も飛翔は不可能です!」

「報告によれば、他軍の竜舎にもほぼ同時に爆撃があったとのこと!」


 各キャンプ地から届けられる被害報告が、元来「対日本派遣艦隊」の総司令官になるはずだったエルストン=フォンマルバッハの元に次々と届けられる。


「やはりニホン軍の攻撃目標はここだったな! ヴェルハルトの奴さえ余計な事を言わなければ・・・!」


 エルストンが述べた名は、総勢6万の軍勢を率いるラックナム辺境伯領軍の軍団長であるヴェルハルト=バトキアリーのことである。彼は日本軍の攻撃目標はドラス・ティリスに違いないと主張し続け、エルストンと意見の対立を起こしていた。

 とは言っても、例え日本側の動向を正確に予測した所で、どうにか対抗出来る相手では無いことに変わりは無いのだが。


「・・・確か、各軍艦の艦内竜舎に載せたままになっている竜騎がいくらか居たな。それらを直ちに飛翔させ、敵航空戦力を追撃しろ!」


「は、その様に!」


 総司令官の命令を拝聴した軍幹部たちが敬礼する。そして、彼らが各部隊へ命令を伝達しようと総司令の部屋を退出したその時・・・


「うわああ!」


 幹部たちは叫び声を上げた。突如天井を成していた天幕が抜け、巨大な物体が姿を現したかと思うと、それは閃光と共に爆発を起こし、その刹那、エルストンらの意識は闇へと消える。

 皇帝領軍のキャンプ地に投下された無誘導爆弾の1つは、偶然にも全軍司令部を成していた天幕へ落下し、その爆発と爆風を以て、天幕の中に居た全ての人間ごと司令部を吹き飛ばした。


〜〜〜〜〜


旗艦「あまぎ」 戦闘指揮所(CDC)


 各機から全弾投下完了の報告を受けたホークアイ(E-2D)から、旗艦である「あまぎ」へ通信が入る。


『全機無誘導爆弾投下完了。空爆の範囲は広く、被害状況は不明。たった66機による空爆ではやはり火力不足の感は否めず』


 兵士たちが密集している寝込みを襲ったとは言え、恐らくそれなりの数の生存者が残っているであろうことは、想像に難くない。ホークアイ(E-2D)の報告を受けた総司令の鈴木海将補は、戦闘機団に対して指示を出す。


「了解、上陸部隊の障害になる敵地上部隊の残党については、間も無く発艦させるヘリ部隊によって掃討する。戦闘機団は全機帰還せよ」


了解(Copy)!』


 司令官の指示を受けた83機の航空機は、機首を東に向けて母艦へと帰還していく。


〜〜〜〜〜


ラックナム辺境伯領軍 軍艦停泊地


旗艦「マクシミル」


 港や沿岸部に停泊している各艦では、当直の為に乗船していた兵士たちが、地上のキャンプ地に対する空爆の事実を受けて奔走していた。 ラックナム辺境伯領軍の旗艦である「マクシミル」でも、直ちに竜騎を上げる為に、整備兵たちが準備を急いでいる。


「竜騎を全て出す!」


 地上には降ろさず、艦内に保管されたままになっていた竜騎に、整備兵から手渡された兜とゴーグル、飛行衣装を装着した竜騎士たちが次々と跨がる。

 その後、各艦の右舷もしくは左舷の側面に設置されている格納庫扉が開放され、わずかに残った各軍の竜が寒空の元に顔を出した。


「全騎飛翔! 敵の“空飛ぶ剣”を追い払うぞ!」


 整備長の離陸指示を受けた5騎の竜が夜空へ飛び立つ。各艦からもちらほらと竜騎が飛び上がっていた。

 ラックナム辺境伯領軍の竜騎部隊を率いるサルコー=チェデリクは、星空を轟音を立てて飛んでいる戦闘機に目を向ける。


「仇を取るぞ、奴らを追い落とす!」


 隊長の言葉に呼応する竜騎士たちは、彼の後を追う様にして、戦闘機が飛ぶ高空へと一気に上昇した。

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