それぞれの視点
中庭に出ると、もうそんな季節ではないのに、季節外れの雪が優しく降り、所々に積もっている。
その中心で、小さなトナカイと一緒に、赤い帽子のあいつが一人立っていた。
「よお、待ちくたびれたぜ。それと、待たせたな」
「おう、待たせたな。俺も、待ちくたびれたぜ?」
こいつは少しだけ、面白い返しができるから、俺は結構こいつのことを気に入っている。
まあ、ただ俺と価値観が似てるだけなのかもしれないけどな。
「今どうなってるんだ?いい感じか?」
「ああ、俺のフルコースを堪能してるだろうよ。後はリィナもいることだしな」
「へえ、よかったよ。サンキューな」
「いいってことよ。後は、ここの準備を済ませるだけだな」
「そうだね。それじゃあ、始めようか」
しゃがみこんで、いつものように雪に手をあてる。
今回は俺より背の高い大きな雪だるまが3体湧き上がってきた。
「いろいろテーブルとか基本的なものはラストたちが昼間にやってくれてるみたいだから、お前らはケーキの配置とか、ラストの指示に従って動いてくれ」
雪だるまたちは頷いて俺のもとへ集う。
あいつはその場で座り込んで疲れた表情を浮かべている。
「僕は少しだけ、休んだらマイとツリーの飾りつけをするよ」
でかいの3体も出したら、やっぱ疲れるのな。
「おう、任せとけ!」
姉ちゃん、驚くかな。
足元に転がっていたチビたちが片付け忘れたボールを、思いっきり蹴って、ケーキのもとへ駆け出す俺。
「始めるか!」
――――――――
「うわあ、おいしい!」
流石はラスト。
これなら王国都市部に言ったって歓迎されるほどの腕前だろう。
目の前のごちそうを口に運ぶ手の動きが止まらない。
「ねー、お姉ちゃん」
「へ?あ、どうしたの?」
「これ食べたら次は何をするの?」
「んー、みんなで遊ぼうと思ってるよ」
「やった!また遊べるんだね!」
危ない、、食べるのに夢中で何をしているのか忘れるところだったよ。
この料理、おいしすぎるよ!
それにしても、私だけ一人で食べててよかったのかな。
中庭の方に子どもがいかないように、見張っておいてっていわれたけど。
「私もここで食べようかしらね~」
「あ、ユウリッドさん。どうかしましたか?」
「あら、お邪魔だった?」
「あ、そんなことは、、、」
隣に腰かけたユウリッドさんは私の苦手な人でもある。
だって、この前すごく気まずかったから。
「いつもあの子たちと一緒にいる、あなたと、少しお話がしたかったのよ。なんとなく、ね?」
「そうですか、、」
優しく笑うユウリッドさんはお母さんみたいな雰囲気がただよう。
子を想う親の気持ちなのかな。
「あの子たち、ちゃんとうまくやってるの?」
「はい。マイは仕事だけじゃなくて料理もできるし、ラストの作る薬はとても人気で、毎日売り切れるくらいなんですよ!」
「そう。しっかりやれてるのね。よかった」
「サンタも、私たちにできないことはやってくれるし、困ったときは助けてくれますから。今はみんなで、楽しく暮らせてます!」
サンタ、今は向こうで準備してるのかなあ。
「…サンタ君ね」
「?サンタがどうかしました?」
「少し聞きたいのだけど、もしサンタ君があなたたちと一緒に暮らさなくなったとしても、あなたたちは今まで通り、楽しく暮らせるかしら」
「え、サンタが、、それってどういう、、」
優しい笑顔で、ユウリッドさんは付け加える。
「ふふっ。例えばの話よ。サンタ君がどこか別の場所で暮らすことになって、あなたたち3人になっても、3人で幸せに暮らせると思う?」
例えばかあ。びっくりしたあ。
ユウリッドさん、なんでそんなこと聞くんだろう。
サンタがいなくなったら、か。
「うーん。3人でも、材料は私が取りに行けるし、店の方は問題なく回りますよね。ラストもマイと一緒に店番してる時も楽しいから、楽しくは暮らせそうですね。でも」
「でも?」
「今まで隣にいたサンタの分のご飯が食卓から一人分減るのも、毎日のおはようとおやすみの回数が減っちゃうのは悲しいですね。後、私たちは家族ですから。家族がいなくなるのは、嫌かなー、なんて思ったりしちゃいます」
私たちもまだ若いし、いつかサンタが言ったみたいに誰かが結婚とかでいつかはいなくなっちゃうかもしれないけど、やっぱりみんなでいたいよ。
「…そう。ごめんなさいね。こんな話、例えばでもするものじゃないわよね」
しまった、顔に出ていたみたいだ。
うまく取り繕って、話題をかえる。
「いえ、全然大丈夫ですよ!そういえばサンタはどこ行ったのかなー?」
「ふふ、忘れ物を取りに行っているそうよ」
「あー、なるほど!」
「ふふふ。仲、いいのね」
微笑むユウリッドさん。
でもその笑顔はいつもより、少しだけ何かを思うような、影のあるように感じた。
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