広場への道
「うふふ~」
「ご機嫌みたいですね」
最初に渡した10枚の金貨の入った小さな袋は、バトルハウスの賞金とチップとルウシェルから巻き上げた金により収まらなくなり、気が付くとユウリッドさんが持って着ていたエコバックのような袋にずっしりと詰まっていた。
「そりゃあもう。しばらくは子どもたちにいいものを食べさせてあげられるわ」
「いい母親っすねえ、、、」
稼ぎ方が不純だが。
まあ、そこは口にはしない。
「そんで、どうします?」
スマホを見ると、時刻は16:50という数字を浮かび上がらせる。
「そうねえ。もう夕方だし、そろそろ広場へ行きましょうか」
「おっけーっす」
僕たちは集合場所である広場への道を歩く。
冒険帰りの冒険者らしい人が痛そうにどこかをおさえてすれ違っていく。
「思ったより冒険ってのは危ないもんなんですかね?」
「それはそうよ。命をかけて戦うんだから」
それを聞いて進めていた足を緩める。
「ちょっとだけ、お時間いただきますよ」
「え?」
「どうぞ、これでも飲んでください」
その場で袋にあるポーションを取り出して、道行く傷ついた人に配りながら歩く。
「うちの自慢の一品です。これ飲んで明日も頑張ってください」
「これ死ぬほど苦いけどその傷なんて一発で治りますよ。よかったら」
「お、いつもうちの店に来てくれてる方ですね。感謝の気持ちもかねて、これを」
夕暮れの街で冒険者と思われる人を見かけては、次々と声をかけてポーションを配る。
「それ、あなたたちの店の売り物じゃないの?」
ユウリッドさんは僕の背の夕日がまぶしいのか、少し眉をしかめて僕に尋ねる。
「ええ、そうですよ」
「それじゃあ、お金もなしでそんなタダで配ってたら、もったいないじゃない」
「まあ、そうなんですけど」
「じゃあ、どうしてそんなことするの?」
「うーん、こればっかりは冒険者の方はどう思ってるかはわかりませんが」
少し考えてから、返事をする。
「僕たちが街で平和に遊んでいるのに、その平和を命をかけて守っている人たちから巻き上げてばかりなんて、それはあんまりでしょう。たまには贈り物の一つくらい、用意しないと失礼じゃないですか」
「・・・少し、ううん、かなり変わった考え方ね」
「ま、今日はお代はすでにいただいてるんで。こんなの、全然わりに合わないくらいに」
「お代?」
「ええ、結構なものを」
片目を瞑って、ユウリッドさんの手にある袋へと目をやる。
それを見て察したユウリッドさんが、僕に歩み寄ってくる。
そして優しく僕の手を握って、手にもつポーションを僕から取り上げる。
「ふふ、そういうのって、素敵な考えね。私も配るわ」
「はは、すいませんね。おっと、お疲れ様です。これをどうぞ」
すれ違う人々に瓶を配りながら、ゆっくりと広場へと向かう。
今のままだと少し帰るのが早くなってしまうから。
それと今日はクリスマスパーティ。
僕らにとってのクリスマスなら、プレゼントを配るのが僕の仕事だ。
「お疲れ様です。明日も頑張です」
真っ赤な夕日は、街を赤く染め、僕の影を長く伸ばし、一日の終わりを告げようとしていた。
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