黒い聖者
「よっと」
バキィ!
「グア!」
「ゲエ!」
「全部、食らいなさい!」
「シャアアアァァァ、、、」
「あ、あの時の蛇か、、」
リィナが呼び出した炎の大蛇が、あたりのゴブリンを食い散らかして無双する。
「なんだよそれ。僕要らねえじゃねえか」
「そんなことないよ。サンタのおかげで私の周りには敵が来ないし、おかげで自分のことは考えなくても戦えてるしね!」
「まったく、どっちが援護なんだかね。っと」
「ガッ!」
「シャアアアア!」
「ん?」
ゴブリンを殴っているところへ、僕が大蛇の目に留まる。
「おい、なんかこっち見てるぞ?」
「あ、あはは。この子、私以外に戦っている人は敵味方構わずに攻撃しちゃうんだ」
「おいおい、、それって」
「ごめん。我慢してね」
「シャアアアアアア!」
頭からすっぽりとかじられる。
口の中は熱く、息をしたら肺がやけどしそうだ。
これは、やべえな。
息が切れる寸前で、ようやく解放され、地面から落とされる。
「いてっ。うわあ、あっつ、、深呼吸したらミディアムどころの焼き加減じゃねえぞ、、!」
髪が燃えていないか、帽子の中まで手を突っ込む。
この年でハゲはごめんだ。
「ごめんねサンタ。でも、私の最大級なのに、、なんでそんなぴんぴんしてるの、、?」
「いや、一応僕、火には慣れてるし」
大学生ともなれば、バーベキューでもなんでも、火起こしの一つや二つ、軽くやってしまうものさ。
一番僕が耐性があるといっても、間違いはない。
「ま、これ飲んで、この調子でがんばれ」
「あ、ありがとう。ん、、ぷはあ!」
ポーションを渡して、飲ませる。
大会の時にわかったことだが、こいつはスタミナがないからな。
もしものために温存してやらないと。
「ギシャアアアア!!!」
勢いを増した大蛇は渦のようにあたりにその長い体を巡らせてゴブリンたちを阻み、炎で形作られた牙で敵を食い荒らす。
5分もしないうちに、ゴブリンたちは残さず全滅した。
「すげえな」
「でしょ。さあ、最後は、あいつを倒して、終わりね」
「ゲヘ、ゲヘヘへ、、」
黙ってみていたが、その巨体はついに腰を上げる。
「ギシャアアアア!」
それに向かって大蛇が飛びつき、ぐるぐる巻きにして燃やそうとする。
「ゲ?ゲッヘエア!」
しかし、その状態でも難なく両手を広げ、ついに大蛇は火の粉となってあたりに散らばる。
「うそ!やられちゃった!」
「それじゃあここからは、 僕のターンかな?」
後ろに袋を投げ捨てて、両手の関節を鳴らす。
「それじゃあ、僕もリィナみたいに、最大級の技を使ってみようかね」
「え、最大?雪がないのに、使えるの?」
「ああ、一個だけ、まだ使える技があったんだよ」
大きな棍棒を振り上げる巨人を目の前に、一人つぶやく。
「赤いサンタクロースは夢と希望を。そして良い子のみんなにプレゼントをおいて去っていく。そんな彼にはついになる兄弟みたいなやつがいるんだ。その名も―――――」
「ゲッハアアア!!」
「―――ブラックサンタ」
ドオオオオオン!!
大地を揺らすような攻撃が地面を揺らし、生じた風も木々を揺らす。
その中心で、僕はその棍棒を、片手で受け止めている。
「っつつ。しびれるねえ」
「サンタ!」
「それじゃあ、仕返しだな。袋を広げろ、リィナ!」
棍棒を両手でつかんで取り上げる。
そしてそれを、リィナに向かって投げる。
「ええ!?きゃああ!」
袋を盾にして、リィナはしりもちをつく。
なげられた棍棒はリィナめがけて、リィナの持つ袋めがけてまっすぐに飛んでいく。
棍棒は袋に吸い込まれるようにして姿を消し、巨体のゴブリンは丸腰になる。
「ようし、これでお前は丸腰だ」
「あれ、サンタ、、帽子が、、」
僕の頭上の、黒ずんだ帽子を指さされる。
「ああ、まあアレだ。お仕置きモードのサンタクロースは、真っ黒になるんだよ」
安心させてやろうと口元を引き延ばして二カッと笑う。
「それじゃあ、張り切って、お仕置きターイム!!」
数秒後、叫び声も上げずに、大きな巨体は何かの骨のようなものをゴロンと地面に転がして黒い灰と化し、崩れ落ちた。
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