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ようこそ、ファンタジー世界へ。~赤い帽子とトナカイの物語~  作者: zienN
最終章:サンタクロースの仕事
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夜の戦友と彼らの提案。

夕食を食い終わり、各々が部屋へと入っていく。


「おやすみー」


「おやすみなさいっ」


「サンタ、お前も早く寝ろよー」


「ああ、おやすみ」


僕は全員が寝静まってから外へ出る。

たまに夜更かしして寝ない時があるが、その時は散歩してくるとか適当な理由を付けて出ていっている。


部屋の窓から飛び降りて外へ。

外では決まってルドルフとコメットが起きていて僕が来るのを待っている。

忠犬のようだ。


「待たせたな。それじゃあ、行こうか」


そりに4人分の席をすべて使ってコメットを乗せて、僕はそりを引くルドルフの背中に乗る。


そのままいつものように街の外へ行く。

夜に鈴を鳴らして空をかけるさまはまさしくサンタクロースのそれと同じように思えてきて、毎晩胸が躍る。


――――


「それじゃあ、始めようか」


夜中の街の外は、狩場としては穴場で、人っ子一人いないので、安心して独占できる。

よくオンラインゲームなどでは横狩りとか言って他の人と同じ狩場にいると迷惑がかかることがあるが、この世界はゲームではない。

夜にはみんな寝静まっているために、色々とやりたい放題できるのが面白くてならない。


「―――ホワイトクリスマス」


パチン。

いつもはスキル名なんて言わないが、夜に誰もいないときはつい言ってしまう。

技名行っちゃうあたり僕もまだ中二病が抜け切れてないかなと思いながらも、一瞬で積もった雪に手を当ててスノウマンの召喚を始める。


「ノーウ!」


5体出てきたあたりで息が荒くなる。

そしてその疲れをラストの薬で騙して、体力を取り戻す。


「ふう、みんな、今日も頼むぞー」


「ギエエエアアアアア」


「♪」


「ノ――!」


ここから僕の夜の仕事が、誰にも知られることなくはじめられる。


主な仕事はスライムのゼリー集め。

うちの店の材料であるために消費が激しく、リィナが来たこともあって、一日に求められる数が増えた。

そのために最初に集めていた分はほとんどなくなっているため、こうして夜に労働しなければならない。


何故昼にやらないのかというと、人の多い昼に横狩りをしてしまうかもしれないスノウマンを呼び出せないからだ。


前は一人でやっていたが、一人でやるよりこいつらを呼んだ方が何倍にも効率が上がる。

一体に袋を持たせて、ゼリー集めに専念させて、後の4体と僕とコメット、ルドルフは各自で大暴れする。


「にゅうういいいいい!!」


悲鳴を上げてスライムが倒される。

大分時間がたってCだった僕の素手の熟練度はすでにSまでいっていて、もうボクサーにでもなれるんじゃないかとすら思えてくる。

両手がフリーなのでもうがむしゃらに特攻してスライムたちを倒しにかかる。


「ノーウ!」


スノウマンたちも負けていない。

連携をして一度にたくさんのスライムをまとめて倒しにかかるために、一番効率が良いのかもしれない。


「ギエエエアアアアア!!」


不気味な鳴き声のコメットは一応戦えるということで連れてきている。

一番遅いがそれでも戦力にはなるので助かっている。


ルドルフは空を飛びながら回転したりそりをぶつけたりしてスライムをうまい具合に倒している。

器用なやつだ。


このメンツで夜の草原を戦場に仕立て上げている僕たちだが、たまに珍客がやってくる時もある。


「にゅにゅにゅにゅ!」


一時間後、スライムたちが密集しだす。

やがてそれらは混ざり合い、3色が混ざってカラフルで巨大なスライムへと進化を遂げる。


「お、ボスのお出ましか」


これが珍客だ。

大きさは4メートルほどの全長があり、虹色の体が辺りを照らすようにてらてらと光っている。


その攻撃は主にのしかかり。

以前一回試しに食らってみたところ、柔らかい体が絡みついて抜け出せなくなり、窒息しかけたことがある。


他の奴らを連れていなかったら死んでたかもな。


この珍客が出たときはみんなで一斉に倒しにかかる。

主にコメットが壁になるようにして前衛に回り、スノウマンがちょっと離れて雪玉で気を引いて、そしてルドルフとともに僕は空から奇襲をかける。


「らあ!」


「にゅ!?にゅいいいいいいいいいい!!」


見た目は立派だがどこまでいってもスライムだからか、体重をかけるようにして上から攻撃をすると、案外すぐにやられる。


爽快な破裂音とともに体が飛び散る。

あたりにはゼリーがいっぱい転がり、これを拾うだけで次の日一日分のゼリーになることもある。


この珍客が出たときはみんなで戦い、みんなで拾い、終わったらすぐに帰っている。


「今日はもう終わりかあ。案外早かったな」


「ノーウ!」


「なんだ、まだ遊び足りないのか?」


「ノー」


「違う?んじゃあなんだ」


スノウマンのいうことはなんとなくだが伝わってくるので、一応コミュニケーションは成り立っているが、ジェスチャーがないといまいちきつい。


今日はなぜか、数人で雪玉を交換しているジェスチャーを見せてくる。

首をかしげてその様子を見ていたが、見ているうちにそれがどういう意味か予想ができてくる。


「もしかして、店番がやりたいのか?」


「ノーウ!」


ぴょんぴょんとその場を跳ねる。

当たってるようだ。


「んー、でもなあ。そういうのは昼間じゃないとできないからなあ。明日からやってみるか?」


「ノー!」


「んじゃあ、明日店の前で、試しにやってみるか!それじゃあ、また明日な」


手を振って指を鳴らすと、意思のない雪だるまが5つできる。

コメットをそりに乗せ、ルドルフの背中にまたがって僕たちは家へと帰った。


帰る途中、何気ないスノウマンの提案が、いつもの堕落した日々を変えてくれる、そんな気がした。

ご覧いただきありがとうございます。

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