覗き
翌日。
AM5:00。
「・・・んあ」
目を覚ます。
いつの間にか眠ってしまったようだ。
昨日は確かあの後みんなで準優勝おめでとう会とリィナの歓迎会をやったんだっけ。
寝ぼけたまま、ぼりぼりと帽子の中に手をつっこんで頭をかく。
「おい、ラスト、起きろ。温泉行くぞ」
テーブルに突っ伏すラストをゆすって、起こす。
「んん」
ちょっとうなって、頭を上げる。
「・・・今何時?」
「5時、温泉、行こうぜ」
それを聞いて、眉をひそめてラストがいう。
「早えよ」
――――――
AM6:00
「すー。すー」
「・・・んん」
最後の温泉から帰ってきても、やはり二人は、まだ寝ていた。
「まだ寝てるな」
「ああ、寝てる」
「とりあえずポーションは最後まで取っておくとして、僕たちの保険として、起こす努力はするからな」
「おう」
そして数分後。
「んん!?うあああああああああああ!まずいっ!」
「おはよう」
「いい加減やめてくださいよ、、」
「何回か呼んでも起きないから、仕方なく。悪く思わないでくれ」
空の小瓶を振って良い笑顔をしているラスト。
「もう。リィナをおこしますから、それは使わないであげてくださいね」
再び数分後。
「んうううぅぅぅぅ!!なに、なに!?」
「おはよう」
「あ、サンタ、、おはよう」
「ごめんなさい、、私には無理でした、、」
結局起きなかった。
ラストと違ってこの二人の眠りの深さといったら。
朝一でこんなまずいの飲ませてごめんね。
きっと朝飯は何倍もうまく感じるから許して。
「飯食ったら出るからな。二人とも温泉入っとけ」
「わかりましたっ!」
そういって二人はバルコニーの露天風呂に行く。
最後にひょこっと赤い頭を出して、
「覗かないでね」
といって戸を閉めたのが印象的だった。
――――
AM6:20。
「サンタよ」
雪だるまをおこして部屋の掃除を始める。
やっと終わったと思った矢先、一人座椅子に座っていたラストが真剣な顔で僕に声をかける。
その様子に僕も表情が引き締まる。
「真面目な話か?」
「ああ、俺は今、人生の岐路に立たされている」
「ああ。ん?」
「サンタ、ばれないように覗く方法、教えてくれないか?」
「飯まで寝るかー」
真面目な顔してそれかよ。
知らね。
「なあ、頼む!たーのーむ!男ならやっぱり憧れるもんじゃん?手伝ってくれよ俺が全部責任持つからさあ!俺に女の裸をプレゼントしてくれよ!」
「やめろ!僕はそんないかがわしいもんプレゼントしねえよ!」
うまいこと言ってんじゃねえ、ったく。
「大体、そこの戸ガラスなんだから、普通に見えんだろ」
そういって寝ながら後ろの戸を指さす。
「なんでか湯気の量が尋常じゃなくて全然見えねえんだよ、ていうか湯気多すぎるんだよくそ!」
「んじゃあ拭けば見えるだろ。拭いてこい」
「んなことしたらばれちまう!頼む、なんとかしてくれ!」
「んー、お前に上げる予定の金、1万ユインにしてもいいなら手伝ってやらないこともない」
こういえばあきらめるだろう。
再び目を瞑る。
「1万!?・・・うーん、でも仕方がねえよな、、金で買えないもんだし、、よし、サンタ、頼む!」
「ええ、まじかよ!お前、そこまで覗きたいのかよ!」
「ああ、頼む。早くしねえとあがっちまう、、!」
壁一枚先にいる女の裸に何だか暴走しているラストを見て、溜息をつく。
99万ユインに匹敵するほど、女の裸は価値があるのだろうか。
こればっかりは意見が割れそうだ。
「仕方がねえな。僕は寝てた。何も見てないし聞いてない。わかった?」
「ありがとうサンタ!恩に着るぜ!早速どうすればいいか教えてくれ、早くしないとあいつら上がっちまう!」
「せかすなよ」
「それじゃ、そこにいる雪だるま4体、貸してやるからうまく使って覗くんだな」
「どうやってだ?」
僕はあらかじめ考えていた案を独り言のように話す。
決して僕がやろうと思っていたとか、そんなんじゃない。
「冬将軍って呼ばれてるラストなら、雪だるまがあたかも遊んで飛び込んでいったように見せかけて、こっそりのぞくもんだと思ってたんだけどな」
「なるほどな、最高だぜ、サンタ!お前ら、集まれ!」
「「の?」」
こうしてラストと雪だるまの、作戦会議が始まった。
――――
「あんまり時間はないからこんな感じで頼む。おうけい?」
「のう、のう!」
作戦の意味は分からないみたいだが自分たちのやることは伝わったようだ。
とりあえず首を縦に振る。
「よし、俺の合図で作戦開始だ。それじゃあ各自、持ち場につけ!時間はないぞ!」
「「の――!」」
そういってそれぞれが持ち場につく。
といっても、4体全員がガラス戸の前で一列になっているのだが。
その一番後ろで、ラストがかがんで両手でわっかを作り望遠鏡のようにして覗く。
「それじゃあ、行くぞ、3、2、1、、作戦、開始!」
「「ノオオオオ!」」
雪だるまたちによって勢い良くガラス戸が開けられ、雪だるまが外へ飛び出そうとする。
しかし彼らが外へつくことは無かった。
戸を開けた途端に部屋に放たれた炎の大蛇が、雪だるますべてを飲み込んで溶かしつくし、一番後ろにいたラストも含めて、焼き払われた。
「はえ、、?」
力なく倒れ込む黒こげイケメン。
炎の大蛇は横になる僕の顔を覗き込んで、熱い吐息を吹きかけてくる。
これは見たことないやつだ。
冷や汗を流しながら目をつぶって寝たふりを決める僕。
やがて、ラストたちとは関係ないと悟ると、炎の大蛇はうっすらと消えていった。
そして誰かが戸に手をかけていう。
「だから言ったでしょ。覗くなって」
声の主はおそらくリィナだろう。
反対方向を向いて寝たふりを決めている僕は、最後まで知らないふりを続行したので、追い打ちの炎を食らうことは無かった。
ガラス戸は閉められ、部屋には静寂が漂う。
リィナとマイが上がってくるまで、部屋にはスノウマンの溶けた水の滴る音と焦げ臭いにおいが、部屋の中に居座り続けた。
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