家族会議
今にも凍り付きそうな空気の中、ラストが一番に口を開く。
「それじゃあサンタ、挨拶。ちょっと面白いの」
振られたので、全力で答えてやる。
「第一回サンタクロースの見習いやあらへんで!チキチキ、家族会議~!」
「わー!」
「ノ――!」
「サンタさん、ふざけないでください」
「あ、ごめんなさい」
なんだよ、やれって言われたからやったんじゃん。
怖がる雪だるまたちが、僕の背中に隠れて静かになる。
当の雑なふりをしたラストはそれでもなお楽しそうにしている。
「それじゃあ始めよう。一つ目のお題目。サンタ、よろしく。短めで頼むわ」
そしてまた振られる。
「赤髪美少女との死闘の末、家族になろうといったけど、質問ある?」
「美少女、、、」
リィナがうつむく。
ネットの掲示板のような言い回しだが、今回は怒られなかった。
まあ知らないだろうしな。
「質問ですっ!」
「はい、どうぞ」
当然ながらマイの質問。
「あれってプロポーズなんですか?それとも求婚なんですか?どういうことですか!?」
色々と質問は飛んでくるが、聞いてることは同じだ。
「落ち着け、、要するに、告白かどうかってことだろ?そういう意味で言ったんじゃないよ」
「本当ですかっ!?よかったあ~」
それが分かった途端にいきなり安堵するマイ。
なんだ、もしかしてリア充がいると死んじゃう病気にでもかかってるの?
「告白じゃなかったんだ、、」
「ん、なに?」
「ううん、なんでも!それじゃあ、私に言ったのはどういう意味だったの?」
「ああ、それなんだけどな。順を追って説明する」
一度整理を付けるために、一から説明することにした。
「まず、僕はリィナをの願いを聞いた時、お前を勝たせて、決勝を応援しようと思っていた。でもここに二つの問題があってね。結果的に勝っちまった」
「問題?」
「ああ、まずはこの大会、特別なルールがあるらしくてね。ラストが言うには、決勝戦は試合が始まったら、途中棄権ができないらしい。どっちかが戦闘不能に追い込まれるまでは試合が続くっぽいんだ」
「そんなルールがあったんだ、、」
「これは俺があの実況のお姉さんから直接聞いた話だからな。ほとんど確実な情報だといってもいい」
リィナも知らないということは、大会初心者はみんな知らないのだろうか。
ラストに言われなければ僕も分からなかったしな。
「まあこれが一つの問題だ。まあリィナが決勝で勝つんなら、それでもいいと思ってたんだけどな。これが二つ目の問題だ」
袋から赤いゼリーを一つ取り出してテーブルに置く。
「決勝に上がってくるだろう相手がものすごく強いらしくてな。前回の対戦相手らしい」
緑色のゼリーを赤いゼリーの隣に置く。
「おっさんが言うには僕ならわからないけどリィナは絶対に勝てないとか言っててね。しかも戦い方がめちゃくちゃらしい。それを聞いて、僕が勝たざるを得なくなった」
「・・・」
「もしリィナが僕に勝った場合、次は絶対負ける。しかも途中棄権はできないから、もし戦った場合―――」
グジュッ。
赤いゼリーの上に拳を振り下ろす。
ゼリーはむごい音を立ててテーブルの上ではじける。
「どこかに傷を残して負けることになるかも、って思ってね」
3人の顔が青ざめる。
ルドルフが顔についたゼリーをなめて嬉しそうに鈴を鳴らす。
ついでにぺろぺろと、テーブルの上もなめ始める。
「ま、そういうことで、僕が勝たなきゃいけなくなった。リィナ、ごめん。かなえようとか言った夢を、僕がつぶすことになって」
テーブルに手をついて頭を下げる。
「もういいよ、わかったから。私のためにやったことなんでしょ?」
「ああ、でも本当にごめん。それで、僕もなんとかできないかと考えたんだ。その結果が、僕と家族になるということだ」
「告白じゃないってわかってるけど、その言い方、やっぱり恥ずかしいよ、、」
顔を紅潮させるリィナと、それを横目に見るマイ。
「なんでそこで家族なんですか?」
「あれだよ。お前らが僕を拾ったときと同じだ。一緒に店をやるってことだよ」
「なるほどな。よく考えたじゃねえか」
ラストが少し笑う。
「え?でも、店をやるにはお金がかかるんだよ?」
「そうだね。でも僕は今回、ラストと一緒に荒稼ぎをしていたんだよ。闘技場で自分にお金を全部賭けてね」
ルドルフがなめとってきれいにしたテーブルの上に、僕が勝ちとった金の入った袋をおく。
「5万から始めて、気づいたら200万になってた」
「200万!?」
「ルーキーの僕を馬鹿にして、おっさんが高い倍率にしてたんだよ。だから全部賭けてったら、ちょっとした小金持ちになった」
「そうなんだ、、」
「これにさらに、準優勝でもらえる400万ユインを足して、店を開こうと思ってる」
「でもこれじゃあ、店の建設でほとんどなくなっちゃうよ?」
リィナが不安そうに言う。
僕はニヤリとして、いつものように笑って見せる。
「大丈夫、建物は要らない。なんてったって、うちにはカラアレオンという、動く店があるからな」
「カラアレオン!?そんなのも持ってたの!?」
目を丸くして驚く。
そこにラストが付け足すように言う。
「サンタが前に自称強い騎士との喧嘩で勝ったときに、おまけでついてきたんだよ。今は留守番してて、うちの街にいるけどな。サンタ、んなことより、俺たちの店で一緒に商売した方がいいんじゃないか」
「まじで、いいの?魔法商店らしいけど、いろいろ面倒じゃない?」
「いいじゃないですかっ!魔法の道具も増えるんなら、私たちの店も商品が増えて、いつもよりも商売繁盛できますよ!」
「お、2人とも賛成か。それじゃ材料は全部僕が取りに行けばいいから、金は道具とかリィナの家具とかに当てればいいか。後は―――」
「ちょっと待って!」
両手を突き出してさえぎられる。
「なんでそこまでしてくれるの?私たち、ただの対戦相手ってだけじゃん!私だって、最初にぶつかっただけで、何もサンタにしてあげてないし、ぶつかったことはポーションをもらってなしになったのに、、」
どうやら戸惑っているようだ。
まあ、普通は出会って一日も経ってないやつがいきなり店開くの手伝ってやるなんて言ったらそりゃ警戒するよな。
「理由ね。それは僕がサンタクロースだから、かな」
「意味わかんないよ、、、」
「この帽子をかぶったやつは、世界中の人々に夢と希望と、後は良い子にプレゼントをするのが仕事なんだよ」
サンタのことを知らないと説明に困るよな。
あくまで善行といっても、こっちにメリットがない分、本当にただ、ひたすらに怪しい。
じいさん、あんた本当に、どうやって食い扶持つないでんの?
「これは僕の自己満足なプレゼントだ。これを受け取るなら、リィナはスタナ街に引っ越すことになるし、こっちで店を持つことはできない。だから、いやなら受け取らなくてもいい」
やっと説明が終わった。
長くなったな。
「闘技場ではいろいろということが飛びすぎてあんなことを言っちゃったけど、今度はちゃんと言うよ。リィナ、僕と―――」
右手を差し出して、目の前の少女を見つめる。
「いや、僕たちと、家族になりませんか?」
彼女は少しの間うつむいて、しばらく動かなかったが、少しして顔を上げると、目に涙を浮かべて、目いっぱいの笑顔をする。
「・・・そこまでして、そこまでしてくれて、、断れるわけないじゃん、、、!末永く、よろしくお願いします!」
「おう、よろしく!」
握られた手を強く握り返す。
こうしてまたファミリアに、新たな家族が加わった。
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