大会直前
動揺するリィナに僕が軽く説明する。
「実はな―――」
―――――――――
「で、結局言い出せずに、ずるずるとここまで黙ってたってわけね」
「はい」
「ばれてないからって調子こいてすいませんでした」
「なんで俺まで、、」
対戦相手だということを黙ってたことを怒られて今に至る。
おっさんに至っては完全にとばっちりのような気がするが、最後まで黙ってたのでこの人も同罪だ。
「でも、一応言うが、騙すつもりはなかったんだぞ。最初は対戦相手だって、しらなかったんだ」
「言い訳はいい」
「すんません」
「はあ、、、まあいいよ。それじゃあ、後でまた会いましょう」
リィナはそれだけ言うと、こちらに背を向けて歩いていった。
―――――
姿が見えなくなったあたりで正座をといて立ち上がる。
「ああ、まさか公衆の面前で正座とは」
「足がしびれてうまく立てねえ」
「お前らのせいで俺まで怒られちまったじゃねえか」
道行く人に見られながら、僕たちは体制を立て直す。
「まあ、おっさん。悪かったな。んで、ここからはちょっと真面目な話だ」
「・・・なんだ?」
真剣な顔で言うとおっさんの顔も神妙になる。
ここからはちょっとだけ真面目な話。
「今は準決勝だが、これに勝ったら決勝戦だよな」
「そうだな」
「それで、ラストが言ってたんだが、決勝では大会特有のルールがあるらしいじゃないか」
「途中棄権禁止のことか」
「ああ、そうだ。それで質問なんだけど、大会に残ってる僕とリィナ以外の後二人のうち、ヤバいやつはいるか?」
この質問の返答次第では、僕の次の試合の勝敗が決まる。
「・・・いるな。帽子の兄ちゃんならともかく、そいつと当たったら嬢ちゃんじゃ優勝はできないかもな」
僕の質問の意味を悟ってか、おっさんはリィナが優勝できないということを教えてくれた。
「そうか、、」
「あの子が心配か?」
おっさんが尋ねる。
ラストはただ腕を組んで黙っている。
「まあね」
「一応、嬢ちゃんでも勝つ確率はある。でも、それは決勝戦の相手がどっちになるかにかかってる」
「片方はめちゃくちゃ強いのか?」
「前回の優勝者だ。冒険者としての腕はないが、対人に至ってはとんでもねえプロだ。反面、戦い方はめちゃくちゃでな。やりあったやつはほとんど体のどこかに消えない傷を残す。きっとそいつが決勝に出るとみて、間違いはないだろうな」
「・・・」
この大会、僕が負けたら優勝は間違いなくそいつのものになるだろうな。
そしてリィナは大会のルールで死ぬか戦闘不能を悟るまで攻撃されるだろう。
しかしその反面、僕が勝ったら、彼女は夢をあきらめなければならない。
あんなに寂しい笑顔を見せたやつの夢を、絶対にかなえようぜなんて言ってしまった僕が潰すなんて、それほどまでに酷なことがあるだろうか。
「うーん、どうしたものか、、、」
考え込むこと数分。
悩む僕に、ラストが口を開く。
「なあ、サンタ。お前何を悩んでるんだ?」
「この試合、勝つべきか負けるべきか」
「勝つしかねえだろ」
「いやでも、僕が勝ったらリィナの夢が、、」
「・・・お前、すげー良いやつだな」
僕の肩に手を置いて、ラストがしみじみつぶやく。
「あの子も、最初のお前と同じで、今は一人なのかね、、、」
一人、か。
そういえば僕も一か月くらい前までは、一人でスライム殺戮マシーンとして生きてたんだっけ。
んでマイにあって、それからラストとマイの店に拾ってもらって、家族になって、、
「ん?家族?・・・・ああ、それだよ」
「どうした?家族がなんだって?」
遠い目をしていたラストが僕の声に気づいて、こちらを見る。
「ラスト、すげえいい方法を思いついたんだ」
「ほう。それで?お前はどうするんだ?」
ラストにニヤリと笑って返す。
そしておっさんの方を見て、威勢よく声を上げる。
「おっさん。今日の賭けの時間だ」
「ああ、そういえば、今日はまだだったな。二人の倍率なんだが―――」
「倍率はいわなくていい。答えは出た。サンタクロース。つまり僕に100万ユインだ」
「サンタ。お前、決めたんだな?」
「ああ、僕の役割を思い出したよ。僕はサンタクロース」
白い袋を担ぎ、赤い帽子を深くかぶる。
「今までいろいろありすぎて僕の仕事を忘れてたよ。自己満足なプレゼントを、あの子にもプレゼントしてあげないとね」
「へへ、んじゃ、俺も解説、頑張らなきゃな。サンタ、勝てよ!」
「任せとけ。それじゃ、先行ってる」
試合までの時間はもう残り少ない。
僕はラストをおいて先に、試合会場へと走った。
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