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新しい相棒

「それじゃあ、決闘、開始です!!」


マイの合図と、ギャラリーの歓声が決闘開始を告げる。

オールバックはすぐに切りつけてくると思っていたが、どうやら少しは落ち着きがあるようで、剣を構えたまま動こうとしない。


「どうしたんだ?かかってこないのか?」


「ふん、俺も礼儀というものをわきまえていてな、武器を出すまでは、動かないでおいてやる。感謝することだな」


「そっか、案外いいやつだな。それじゃあ、僕の国の決闘をする前の礼儀というやつを、お前にも教えてやるよ」


「ほう、話してみろ」


「決闘の前、互いを尊敬しあって決闘に臨むという姿勢を表すために、お辞儀をするというのが僕の国の礼儀だ。だから、お互いにお辞儀をしてから始めよう」


「いいだろう。こうでいいか?」


そういってルウシェルは右手をお腹のところにおき、左手を背中に回していかにも騎士らしく礼をする。

清潔感があるから、案外決まってるな。


「そうそう。それじゃあ、僕も、そろそろ武器を出そうかな」


「おい、待て」


「何?」


「お前はお辞儀をしないのか?」


「ああ、君のこと尊敬してないし」


「なんだと!それでは不公平だ!お辞儀をしろ。お辞儀をするのだ、赤帽子!」


おお、なんか知ってるやつからするとすごい名言が出てきた。

名前を言っちゃいけない人だから、誰のとは言わないよ。


「冗談だよ。はい、よろしく」


「全く、、、早く、武器を出せ」


決闘は始まっているというのに、このやり取りに数分をかけている。

袋からやっと武器を出したところで、オールバックの目が見開かれる。


「な、それは、、俺の剣!」


「あ、間違えた。いらね。」


ポイッっと剣を捨てる。


「なっ!貴様、俺の剣を!」


「ん?この剣使う?いいよ、おいとくから好きに使ってね」


「ぐぬぬ、、、」


もちろん剣を取り出したのはわざとである。

なんとなく馬鹿にしてやりたかったからやった。後悔はしていない。


「気を取り直して。みなさん!こちらが僕の武器です!」


ギャラリーにむかって僕は今日から僕の相棒になったマナウッド角材を袋からだして掲げる。

当然ギャラリーは驚いている。

それもそうだ、普通は剣とか槍とか、ちゃんとした武器を望むだろう。

僕の手にあるのは角材。なんの変哲もない、ただの木の角ばった棒である。


「なんだよそれ!」


「お前、やる気あんのか!」


「ふざけんじゃねえぞー!」


大勢にあおられて、少し悔しくなってきた。


「じゃあ、これなら満足できるかあ!マイ、さっきのチェーンソーで、さっさと装飾してくれ!うまくいったら、きっとうちの店にも注文が入るぞ!」


「ええ、本当ですか!?やりますやりますっ!」


シャリンシャリンと、チェーンソーが笑いだす。


「なんかごめん。皆が納得いかないから、ちょっとだけ待っててくれ。結構面白いはずだから、見ててくれよ」


「仕方がないな。少しだけ見ててやる」


もう慣れたのか、オールバックはあきれたようにギャラリーと同じくマイを見つめる。

マイはやる気満々で、先ほどよりもチェーンソーの回転が良いように思える。


「よーっし、いきますよー♪」


大胆にチェーンソーを振り回して、角材に切りかかる。

僕からは背中で隠れて見えないが、ギャラリーが目を丸くして見つめていることから、きっと問題ないだろう。


「できました♪えいっ」


数分後、僕に相棒を投げてきたマイは、いい汗をかいている。


「おお、こいつは!」


相棒は、4つの角を斜めに削がれて、四角に近い八角形を作り出していた。

表面には、ところどころにツタのような植物の柄が所々に彫られていて、僕の帽子をかぶっているトナカイの絵が彫られている。また、持ち手の部分は丸くなっており、とても握りやすい。

数分前まではただの角材だったのに、今では世界に一つしかない、僕だけの相棒になった。


「お題はクリスマスっ!われながら自信作です!」


あまりの出来に、まわりから歓声があがる。


「クリスマス知らないだろ。お前」


「えへへ、まあいいじゃないですか」


「はーい、どうでしたか!今の芸!オーダーメイドはうちの店ファミリアでうけつけております!あ、おひねりはこちらの方にお願いしまーす!」


ラストがいつの間にか小さな袋をもって叫んでいる。

こいつ、抜け目がなさすぎる。

投げられる硬貨を全身に浴びて、うれしそうな表情をするラストを放っておいて、左手に袋、右手に相棒を構えて、前にたつオールバックを見る。


「結構待たせちゃったね。んじゃあ早速始めよう」


「待たせすぎだ。行くぞ!」


待ちくたびれたといわんばかりに、こちらにかけてくるオールバックは、見た目に恥じない、ものすごいスピードだった。


「速え!?」


「サンタさんっ!」


ガキィン!


相棒で腰を落として縦切りを受け止め、横に目をやる。


「そんなに心配するなよ。一発で死んだら、シャレにならないだろ?」


左手の袋を顔面めがけて当てようとする。

それから逃げるようにして、オールバックは後ろに飛んで避けた。


「今のを受け止めるとはな。ふざけた格好の割には、実力はあるみたいだな」


「おほめに預かり光栄っす。まあ、そんなスピードじゃ、僕には攻撃当てられないけどね」


「・・・いいだろう。その虚勢に免じて本気で相手をしてやる。死んでから後悔しても遅いからな」


「それじゃあ、RPG的にいうなら、次は僕の番だよな」


「あーる、ぴいじー?よくわからないが、来るなら来い!」


剣を構えて迎え撃つ姿勢のオールバックに向かって、僕は駆け出した。

赤帽子って呼びやすくていいですね。

主人公って言うより、親近感が持てました。

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