表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題に沿ってショートストーリー 1

作者: 北条 南豆木

どうも初めましての方は初めまして。

只今連載中の「十二人十二色」からお越し頂いた方は、またお会い出来嬉しいです。


今回初のショートストーリーに挑みました。

あらすじにも書いた通り三つのお題に沿った物語。


上手く伝わるといいなぁと緊張してます。



作家仲間募集中です‼︎

Twitterしてます

「待ちやがれ このドロボー‼︎」


 日が昇りきらね朝の商店街にしゃがれた怒声が木霊する。


「なんだい。ま〜たぬすまれちまったのかい」


「うるせぇ、テメエ俺の嫁だろ。ちったぁ手伝え」


「無理言うんじゃないよ。あの子の足に私らが敵うわけない」


 冷たい空気を裂き黒い塊が去っていく。


「あ''ーせっかくの取れたてが」


***


 腐臭漂う狭い路地裏に今回の獲物だった物を置きドロボーはむしゃぶりついた。


(ふむ なかなかにびみだのぅ)


 やはりあそこが一番だと、ご満悦に頬張る。しかし、黙々と食していた口は直ぐに閉じられた。


(なにものかのけはいがする)


 ピクリと耳を動かし、ドロボーは敏感な神経を尖らせる。戦利品を口に加え、足音に次いでガサゴソ物音が聞こえる元へ。名に恥じないしなやかな動きで進行した。


(だれだ⁇ ワシのなわばりにずぅずぅしくはいるとは)


 様子からして仲間ではないだろうと推測する。奴らならばこんな大きな音を立てはしない。


 少し歩くと簡単に見つかった。


 無礼者はゴミが絡まっているボサボサの髪の毛を振り乱し。こちらに気づかず青く丸い箱に、骨に皮が張り付いただけのような腕を突っ込み忙しなく動かしている。

 周りには空のペットボトルや缶が散乱していて、時折黒ずんだ物を摘み上げては鼻を近づけ捨てる作業を繰り返していた。


(しょくりょうをもとめ きたのか)


 牽制の意味を含めドロボーが鳴けば、バッと振り向いた無礼者は次の瞬間には肩をなでおろす。そうして、ゆるく息をはき折れ曲がっていた背筋を伸ばした。


「はぁ〜、なん・・だ・・・」


 こちらをもう一度確認したかと思えば、細めていた目がまん丸になっていく。


(なんじゃジッとみつめおって)


「マジかよぉ〜。お前さん俺よか豪華なの食ってんのな」


(ごうか⁇ くう・・・‼︎)


 ドロボーは視線の矛先が戦利品に向けられてると知るや否や。ぶわりと身の毛を逆立てた。


『やらんぞっ‼︎ これはワシのじゃ‼︎』


「ははっ そんな警戒しなくたって取りやぁしないぞ」


 目を吊り上げ威嚇するドロボーに無礼者はケラケラ笑い飛ばし、食料探しは諦めたのか倒れるように壁際へ尻をつく。


「ハラへったなぁ」


 その言葉に連動してグゥーグゥー腹の虫が鳴る音が耳に届く。既に無礼者の視線は戦利品ではなく、虚ろに宙を彷徨っていた。


「ハラ へったぁ」


  同じことを呟きそれっきり死体の如く動かない。腹の鳴る音も弱くなり、静寂が場を支配する。


(なさけないやつだ)


 ドロボーより大きな体の癖に、酷く小さく見えた。


 ぼとり


「・・・は⁇」


 素っ頓狂な声を出す無礼者の前に一つの食べ物が置かれた。虚ろな瞳を開けた時には爽快に走って行く後ろ姿が映り。


 裏路地に現状を理解していないオトコと噛みちぎった跡があるお情けのみが残った。


(ほんのきまぐれじゃ)


 ワシはここのボスだから。新入りの世話もせねばならん。


***


 互いの名も知らない奇妙な関係は。翌日、そのまた翌日と続き今日も二つの獲物を加え、ドロボーは定位置となった新入りの膝に乗る。


「お前さん見ろよ」


 どこから持ってくるのか。地面に似た色のくしゃくしゃな紙束を広げ指差し語りかけてくる。


「こいつ年収一億だと。はぁ、いいよなあ〜」


 紙一面をデカく占領する写真にぶつくさ愚痴る新入りにつられドロボーも写真を見た。

 長い棒を持ち白い球向けて振っている光景に興味はないが、仕切りに「才能ある奴羨ましい」「すごいすごい」呟くので凝視するも。


(なにがすごいのだ⁇)


 さっぱり理解出来きず早々に目を逸らす。


「はははっ お前さんにはわからないよな」


 馬鹿にされた気がしてドロボーが目を細め睨むも、新入りはあの日と同じ様にケラケラ笑う。


「怖い顔すんな。まぁ俺たちには無縁の話だ」


ほぅほぅ言いながら乱暴にドロボーの頭を撫でる新入りの指が次のページをめくる。


「俺たちとは違う世界の住人ってことさ」


(『ちがうせかいのじゅうにん』)


  しばし考え感覚的にドロボーは意味を捉えた。

 つまり立ち入ることが出来ない縄張りにいる連中なのだろうと。


 途切れず続いていた言葉がプツリと止む。


(どうした⁇)


 不審に思い見上げたドロボーは驚き硬直した。


 いつものだらしない表情がやけに真剣味を帯びており。瞳は輝きを灯している。

 新入りは先ほどめくったページを見つめ舌舐めずりしつつ、嗤っていた。


「明日 季節外れの大型台風が来る」


 恐らくこれはドロボーにではない。


「だから町の奴らあんな荷物抱えて騒いでたんだ」


  己自身に


「ここは津波警報が出てる」


 聞かせているのだ。


「チャンスだ」


 急に雰囲気が変わった新入りは、しばし黙るとゆっくりドロボーへ視線を落とす。


「お前さんなら避難する場所ぐらい沢山あんだろ」


(・・・・・・)


「明後日 世話になった礼にたんまりエサ持ってきてやるよ」


 なんなら座布団も付けてやる


 またな。


 それだけ言って路地裏から脱けていった。


***


 木片や石砂利が地面を覆い、泥が壁のいたるところに張り付く路地にドロボーは佇む。


(おちつかん)


 寝床は荒れ。普段静かなここも辺りからの騒めく声でうるさい。


(まだ来ぬのか)


 嵐の影響により店のシャッターは閉まり獲物を拝むことさえ無理な状況だ。 昨日今日とろくに食べ物を口にしておらず、楽して腹を満たせるならばそれに越したことはない。


 キョロキョロ首を回す。


 ふと石砂利の中半分埋まっている紙切れが目についた。


(あやつがもっていたものとおなじ)


 暇つぶしに近づく。


(これは)


 一昨日のに比べ小さくだが確かに──。


オトコの言葉が蘇る。


(そうか)


 あの新入りは『ちがうせかい』にいってしまったのだ。




「待ちやがれ このドロボー‼︎」


「なんだい。ま〜た盗まれちまったのかい」


 生暖かい空気を裂き黒い塊が去っていく。

ここまで読んでもらいありがとうございます。


さて今回作者が挑戦したお題


「新聞」「猫」「魚屋」 です。


ど、どうでしょうか⁇

皆様おわかり頂けたでしょうか


多分また書くんでよかったら見てやって下さい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] どうも初めまして。 とある方の紹介にて読ませていただきました。 しがない悪霊です。 短い話でしたが”物語”としての楽しみは十分にある作品だと思います。 とても面白いと思いました。 私…
[一言] 寄席で落語を聴いているような感じでした。 なるほど、『ちがうせかい』ね。 これは面白かった!
[良い点] 「ちがうせかい」ってドロボー猫が言うの皮肉過ぎます(笑) この辺り、想像を膨らませられる部分と分かっていながら、きちんとした事実が知りたくなるもどかしさがありますね。三題噺としての成立は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ