葛藤
更新が遅くなり、しかも半端じゃないレベルで短くなってしまい、本当に申し訳ありません。テストが近くて、書く余裕があまり無い為……
これからしばらくは、オリジナルの方の小説「無名の退治屋」の更新がメインになるかと思われます。書き溜めてあるから書く時間を消費しなくて済みますし。
あ、そうそう。
東方迷人譚、なんとまあ2000PVにまで達しました!自分で一番驚いてます!
…どうせならもう少しいってから報告しようかと思ったのですが、嬉し過ぎて先走ってしまいましたw
こんな駄文を読んで下さり、感謝の極みです!雨あられです!
という訳で、これからも東方迷人譚をどうぞよろしくお願い致します!
自分でも、全くわけがわからなかった。
唯衣が、元の世界に戻るのを思い留まろうとしている…この展開こそ、私が望んでやまなかった展開の筈なのに。
それなのに、何故私はこんなに怒っているのだろう。
「唯衣…あなたは、っ!」
言葉に出そうとしても、思考に靄がかかったかの様にぼやけてしまい、形を持った瞬間に霧散してしまう。
自分の口下手さ加減が、本当に嫌になる。
「あなた、は……」
駄目だ、嗚咽が止まらない。
何故いきなりそんな事を。
あなたにとって、家族とはその程度のものなのか。
勝手に迷い込んだ里で過ごした、たったの五日間と比べられる程度のものなのか。
あなたにとって私達は、その程度のものだったのかッ!!!
堰を切って溢れ出た感情が留まる所を知らずに濁流と化し、流れ出て来るのを感じた。
「霊夢………」
唯衣が、私を慰めようと近付いて来る。しかし、私の右手は勝手に彼を拒み、私の目は自然と彼を睨みつけていた。
「……行って。」
掠れた声で、唯衣を牽制する。
私の喉が彼を意図せず罵倒し始める前に、唯衣にはここから離れて欲しかった。
「……………ッ、ごめん……」
彼はそうとだけ呟くと、神社の境内を降りて行く。私は、その後をただ黙って見送る事しか出来なかった。
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
儀式(と言っても形だけのものではあるが)は夕暮れ時に行われる為、まだまだ時間がある。……本来ならこの空き時間を唯衣と語らいでもして過ごそうかと思っていたのだが、それもどうやら不可能になってしまった様だ。
全てに於いてやる気が出ない。
(……何で私はあの時、唯衣に腹を立てていたんだろう?)
最早動く事すらも面倒な私は、先程の出来事に対しての考えを纏める事にした。
唯衣が幻想郷の住人と、あろうことか向こうの世界の住人を比較した…挙句の果てに、幻想郷の住人を取ろうとした。だから私は怒ったのだろうか?
……いや、違う。それも多分にあるのだろうけれど、まだ足りない。もっと別の何かを含んでいた気がするのだ。
しかし、それが何なのかと訊かれても皆目見当がつかなかった。
そもそも唯衣の言葉は、こちらからすれば本当に願ったり叶ったりの様なものだった筈なのだ。あれだけ泣き叫んで引き留めようとしたのだから、それを疑う余地は無い。
とすると私は…
「………面倒臭い。」
幾ら経っても答えがまとまらないので、考えるのをやめた。
こういう時は、潔く思考停止するのが最善の策である。だらだらと考え続けても、とって付けた様な答えしか齎されないものだ。
……しかし、またやる事が無くなってしまった。今度は何をして暇を潰そうか…
その辺をふらふらしようか。…いや、いつ唯衣が帰って来るとも知れない状況でふらふら歩き回る訳にもいくまい。
寝るか。…しかし、あれだけ酷いことをしてしまった私が寝ているのを、帰ってきた唯衣が見たらどう思うだろう?
ここは落ち着いてお茶を…いやいや、落ち着いてお茶を飲める状況じゃ無いだろう。
じゃあ、もう……
「あーもう…仕方ないわね!行けば良いんでしょ、捜しに行けば!」
こんなに簡単な事じゃないの。…神社の長い階段を下りながら、考える。
そう、答えなどとうにわかっていた。
私が唯衣に腹を立てたのは、彼が幻想郷に残りたがったからでは無い。私が彼を失う事に対して覚悟を決めたと言うのに、彼がその全く反対の覚悟をしていたからだ。
結局私は、最後の最後まで唯衣の心を推し量る事が出来なかったのである。……私が腹を立てたのは、多分そこなのだろう。
先に諦めたのは、こっちだと言うのに。
「………結局、私が勝手にキレてただけじゃない。」
これから、どんな顔をして唯衣に会えというのか。
恥ずかしさと申し訳なさ、そして器の小さな自分への憤りから、顔が林檎の様に真っ赤に染まっているのを自覚する。このまま顔面が燃え上がってしまえば良い、とも思った。
「……はぁ…ほんとにもう、どんな顔して会えってのよ……」
そして気付けば、太陽はほぼ空の頂点まで登っている。
…唯衣と一緒にいられる時間は、残り少ない。
わかっているつもりではあったが、どうしようもない事実が心に突き刺さる。
「…………ッ!」
いてもたってもいられなくなった私は、思わずその場から駆け出した。