『これは仮面ライダー的な展開だということでいいのか?』
「さて、気分はどうじゃ?葉剛羽賀也くん」
「どちらかと言えば最悪。大体なんで俺の名前を知ってんだ?」
「ふふん。医者が保険証を見るのは当然じゃろう?」
そう言うとポケットから俺が財布に入れていたはずの保険証をひらひらと見せる。
「安心せい。お前さんの荷物に手はつけておらんよ」
「・・・・・・それは安心だ」
精いっぱいの皮肉を飛ばすが、全裸の男が言っても何も説得力はないな。
「で、安心ついでに聞くけど。ここどこだよ、」
「ヒール団特別改造室じゃ。葉剛羽賀也よ、貴様は今この改造手術が完了した瞬間より、我らがヒール団の第参拾五号戦闘員となった! 光栄に思うがいいぞ、ホホホホ。」
「・・・・・・冗談はやめてくれ。」
物事が急展開過ぎて当人が全くついていけていない。
何となくわかるのは、あれから俺は殺されずに済んだってことくらいか。
いや、まぁ、それだけで充分といえば充分なのだが。
爺は相変わらず話を続ける。随分と喋るのが好きなようだ。
「このわしが冗談を言うような人間に思うのか?」
「存在が冗談みたいなやつだからな」
「さて、その〈冗談〉に体を色々と弄られた君は一体何なんなんじゃろうね?」
「・・・・・・これは仮面ライダー的な展開だということでいいのか?」
「最近の若い者は飲み込みが速いのぉ。昔は目が覚めた瞬間に、説明も聞かずに舌を噛み切ろうとするやつがほとんどじゃったのに」
もともと、自分の存在理由が見いだせなかった人間ですからね。
こういう、流され流されな事態は大歓迎だ。
「できたら俺は怪物と契約して鏡の中に入ったりする方がよかったけどな」
「まさか最終回前に主人公が死ぬとは思わなんだ」
「個人的にはゾルダが好きだった」
「・・・・・・あぁ。必殺技が中二臭いアイツじゃな。じゃがワシはあえてガイを推す」
意外と話が解る爺だと分かり、少し心理的なハードルを下げる。
俺はどちらかと言えば平成ライダーが好きだったから。
悪くないよ、龍騎は。