『怪人の癖に現代的な武器を使いやがって』
ざっとこんなもんだ、ただの大学生でもブチ切れたらこれくらいやってのけるんだよ。
俺は手をたたきながら縛られた人質の方に歩みを進める。
これだけ助けてやったんだ、何かお礼の一つや二つもらえるに違いない。
ニコニコと微笑みかけながら、人質に声をかける。
「さぁ、もう安心です。悪党どもはこの俺、葉剛羽賀也が退治しましたっ――――!?」
その瞬間、首筋に鋭い衝撃が走り、そのまま意識が遠のく。
なるほど、気を失うってのはこういうことを言うのか。
漫画やドラマでは良く見る光景だが実際に味わう日が来るとは思ってもいなかった。
視界がかすむ。
床に転がった俺は最後の力を振り絞って、仰向けになり、自分の背後に回っていたヤツを見据える。
そこには、タコ怪人が、俺と同じくらい、いや、それ以上に荒い息をつきながら俺を見降ろしていた。
その手に握られていたのはスタンガン。怪人の癖に現代的な武器を使いやがって。
・・・くそ、もう少しでヒーローだったのに。ちょっとだけ悔しさがこみ上げる。
きっと俺は殺されるだろう。
なんてったって悪の組織相手にこれだけ派手に暴れちまったんだ。
・・・心残りがるとすれば半ば家出同然で飛び出した実家に、錦を着て帰れなかった事だけだろうか。
せめて正体だけは見てやろうと、怪人・・・タゴゲドンだっけ、を凝視してやる。
俺にむしり取られた仮面の隙間から、線の細い輪郭が目に飛び込む。
その正体に気付いた俺の中をさっきとは違う衝撃が駆け抜ける。
顔を見られたことに気付いたタコ怪人が、焦ったようにスタンガンを再び押し付けてきた。
激しい電流に、俺の体はビクンと弾み、視界は暗転。
――――――――コイツ・・・、女!?
やがて、何も見えなくなった。