『誰が化け物だ。どっちかつったらお前が化け物だ』
俺はあらん限りの叫び声をあげて物陰から飛び出す。
きっととんでもない形相だったのだろう、俺の顔を見るなり卒倒したタコ怪人がいい証拠だ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、化け物ぉぉぉぉぉぉ!!」
誰が化け物だ。どっちかつったらお前が化け物だ。
「タコゲドン様!」
タコゲドンて、名前タコゲドンて。
「お、お前。どこに隠れて居やがった!」
不意を突かれた戦闘員たちが、一瞬動きをとめる。
タコ怪人に掴みかかり、ふざけた着ぐるみの顔の一部を引きちぎった俺を、ようやく動けるようになった戦闘員が羽交い絞めにする。
タコ怪人は自分の破れた顔に手を当て隠すと、悲鳴を上げながら床に転がる。
もがき続ける俺は全身全霊の頭突きを俺の背後の戦闘員のあごにたたき込む。
うめくような声を挙げて戦闘員がうずくまる。
それを見てたじろいだ他の戦闘員の顔面に向けて、買おうとしていた発泡酒の缶を投げつける。
くらえ、必殺の連続投球・乱れ打ち!!
野球部に所属していたわけではないが、弾丸は山ほどある。
滅茶苦茶に投げつけているうちに何発か当たったらしい。
次々と声もなく崩れ落ちる戦闘員。
タコ怪人もここからはその姿を見ることはできないが、おそらく戦意は失っていることだろう。
ゼエゼエと荒い息を吐きながらようやく立ち上がる。
上京してからいちばん運動したように思うのは俺だけだろうか。
しかし、それでも。商品が散乱したコンビニの中、自分の勝利を確信する。