『あ、今イラっとした、一瞬すっごいイラっとした』
俺は物陰で必死に笑いを噛み殺しながら、この訳のわからない連中に呆れかえっていた。
大体、デカイこと言ってる割にやってることが小さい上に見当外れだ。
まぁ、確かにコンビニは俺たちみたいなのを堕落に導いたかもしれないが、そんなことで世界が変わるとでも思ってるのか?
よっぽど国会に突入した方が国は変えれるだろう。俺自身は正直この国は変わってほしいが、少なくともこいつらには変えてほしくないというのが本音だ。
「手始めに、ここにあるレジの金、貴様らの持つ金銭は全て我らのもとに回収する。なぁに、いずれ異なる形となって貴様らに再び還元されることになるだろう!」
結局カネが目当てかい!
戦闘員たちが手くせの悪い泥棒猫のように、身動きのとれなくなった人々から財布や腕時計、その他金になりそうなものを片っ端から抜き取っていく。
タコ怪人はレジを叩き壊すと、散らばった小銭を丁寧に拾い集め始めた。きちんと種類ごとに分けて積み上げるという几帳面さになんだか腹が立つ。
小銭を拾い集めたタコ怪人は、酒売り場の前で立ち止まった。
売り場を一瞥すると、なんのてらいもなく発泡酒を手にとった.
――おい、俺が買おうとしてるやつと同じ奴じゃねえか。
ラベルをじろじろと眺めるや否や、盛大に暇もなく飲みほした。
「ふふん、失敗作の世界にふさわしい、糞まずい酒だな」
あ、今イラっとした、一瞬すっごいイラっとした。
俺は、知らずの内に自分の心の中に、怒りがこみ上がってきたことに気がつく。
あの野郎、俺の唯一の楽しみを、俺の生きがいを、俺の癒しの瞬間を否定しやがった。
確かに高い酒に比べたらおいしくはないかもしれない。
でもな、その酒は、俺がこの街に引越してきてからずっと、大事に飲み続けてきた酒なんだよ。辛い時も苦しい時も俺を支えてくれた大事なものなんだよ。
それを馬鹿にするってことは、――――――――万死に値するっ!