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戦闘員だって考える、だって人間だもの  作者: 流離流留
第5歩「同僚だって友人です、なかよしこよしが一番です」
34/39

『でも! こうして! 逃げ回ってさえいれば! そのうち! チャンスは! 来ますよ!』

 


 一方、競技場では攻守交替だといわんばかりに移呂井が攻めに転じていた。さながら蛇のように、縦横無尽・天地無用に俺に鞭が襲いかかる。

 

 それをひたすらかわす。自分が何気なく行っている動作一つ一つが常人のできる範疇を超えていることにはすぐに気づいた。命すら奪いかねない威力の鞭を5連続でかわしたあたりで、それは確信に変わる。



「いける・・・いけるぞ・・・!」

 


 生き残れる――――、あるいは勝てるという算段。

 

 爆発的に上昇した身体能力は、体を自由自在に操る。自分の思う通りに体が動く。戦闘員になる前では想像できないことだ。



「花鞭法『沈丁花』」


「おわっと!」


 部屋中を覆うような鞭の嵐の中を、ひたすらに駆け抜ける。

 相手の攻撃は受けることができない。触れた瞬間、その鞭は俺を地獄へ引きずりこむことになるだろう。ひたすら回避に専念。

 唯それだけのことも幸運だった。戦闘初心者の俺にとっては余計な事を考えないで済むのは好都合なのだ。


 

 ひたすらにかわす。

 どんなにみっともなくてもいい。

 無様でもいい。

 とにかく、攻撃があたらなければ負けることはない!




「いい動きね。流石、罷屋博士の最新スーツと改造手術だけあるわね。 それでも、逃げるだけじゃ勝てないわよ?」


「でも! こうして! 逃げ回ってさえいれば! そのうち! チャンスは! 来ますよ!」



 例えば体力切れ。単純な我慢比べで、バテた方が敗北。勝つためには最も簡単な作戦だ。



「それでも! 私とあなたでは負担が違う。 ただ手首を返すだけでも攻撃できる私と、ひたすら走り続けなくてはいけないあなたとでは、どっちが先に倒れるか一目瞭然ね」



 これに関しては彼女の言うとおりだ。

 スーツで強化されたとはいえ、ベースは俺の体。体力の絶対量には、男女という壁を越えた――――実戦経験という差が産まれる。

 このままのペースで試合が続けば、俺が疲労困憊で倒れるか、動きが鈍ったところを彼女の鞭が仕留めるかのどちらかになることは目に見えている。




「でも、先輩の鞭自体にはさほどの威力はありません! それに、防御と攻撃の時で、微妙に鞭の動かし方が変わっています! だから!」



 こうします、と、口だけでそう動かすと、カベをけり、鞭の隙間を抜け、一気に移呂井に特攻をかける。あまりのスピードに鞭の動きは俺を捕獲するに至らない。



「くっ! 花鞭法『向日葵』!」


 だから、多少強引にでも鞭で壁を作らなくてはいけない。拳を防ぐための強固な壁を。鞭がグルグルと渦を描き円盤状の壁が目の前に作り出された。




 これこそが、俺の狙い。




「鞭に触れたら巻き込まれる。これは鞭が自在に動くことができるからこその芸当! こうしてひとまとめにしてやれば、まとめて一気にふっ飛ばせる!」



 いくら自由自在に動かせるとは言え、動かすのは人間だ。どれほど鞭が自由に動けても、それを動かす人間には必ず制限が存在する。

 関節の駆動区域、動かし方のクセ、力の本能的なセーブ。

 つまりは、こうして鞭の動きをある程度でも制限できれば――――鞭をヒモと捉えるのではなく、一つの塊として扱うことが出来れば――――触れることが出来る。



 盾の目の前に着地し、間髪いれずに、その盾――――固まった鞭の塊を天井へとまとめて蹴りあげる。これで、移呂井を護るものは微々たるが如し! この強化されたスピードとパワーなら、残った多少の鞭に絡まれるよりも先に、拳が届く!

 

 そして、強化されたこの体なら、一撃を決めれば流れをこちらに向けられる。



「もらったぁぁぁあ!!」

 

 

 今、俺の勝利――――人生での初勝利を飾らんと、拳がふるう。

 

 そうだ、技名。あの真面目そうな移呂井までノリノリで技の名を叫んでいたんだ。折角だし俺も何か叫んでみますか!





「しょーりゅーけーん!!」





 

 

 




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