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『なんだったら働いてやろうか?』
校門を出て信号待ちをしていると、身の回りには意外と多くの求人情報が出ていることに気がつく。
そんなに人はいないか? ほら、目の前を見て見ろ、暇してる人間がいるぞ、なんだったら働いてやろうか?
姿も見えない雇用主に毒づいていると、信号が青に変わり、俺の周りの学生も一斉に歩みを進める。その流れは、俺という存在ごと全てを流し去るようだ。
俺は近くの電子柱の『急募』と書かれた張り紙に、唾を吐きかけると、学生の流れの中に静かに分け入った。流されないように、慎重に。
しゃーない、コンビニで酒でも買って帰るか。
いつもなら、給料日にしかやらない、自分へのご褒美を自分にくれてやろうという気になった。そこに、脈絡も理由もない。ただ――――思いついただけだ。
――――そして俺はコンビニに行ったことを激しく後悔することになる。