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戦闘員だって考える、だって人間だもの  作者: 流離流留
第4歩「組織だって会社です、実力がものを言うんです」
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『○○○とか△△△とか×××』




 朝礼を終え、東雲と歩く。相変わらずの機械的な廊下だが、行きにまほろさんと歩いてきた通路とはまた違うようだ。細かいところに微妙な違いがある。

 考えてみたらこの組織のシステムや昔の話ばかり聞かされていて、満足に同僚のみんなと話していなかった。



「残念だったな。まだしばらく説明回だぜ」


「やめてくれよ。話を先に進めてくれよ」


「まあまあ。物語通してチマチマずっと説明が続くほうがしんどいだろう?」


「・・・それは否定しないが・・・」


「諦めて俺の語りに付き合いなさいな」


「速く悪の組織らしいことをしたいっていうのが本音なんだけどね。――――せっかくやる気も出てきたし」


「――――言っとくけど、俺はまだお前と穂村さんの同棲を許したわけじゃないからな」


「ぜひ聞かせていただきます」



 全力で頭を下げた。今だから言えるが、朝礼前のドタバタの時も移呂井さんが助けてくれなかったら大変なことになっていたかもしれない。

 やっぱり戦闘服の強制ビルドアップはいい仕事をしている。俺の戦闘服にも同じだけの性能があるのだろうか? 今度色々検証してみよう。


 因みに敬語を使っていないのは東雲から頼まれたからだ。何でも「妙な距離感が嫌だ」とのこと。確かに年齢は俺の方が上なのに、職歴(こんな日本語があるのかはわからないが)は自分の方が上というのはなかなかやりにくい。

 

 イメージとしては留年して同期になってしまった先輩との絡みか?



「大体今これ、どこ向かってんだ?」


「そりゃ、自分のシフトを確認しに行くんだよ。今日はどこを襲うのか、誰を攫うのか、

何を奪うのか、何を壊すのか」


「予想はしてたけど物騒な言葉ばかりが並ぶな」


「だって悪の組織だぜ。警察に真っ向から立ち向かうわけだぜ。・・・お前もそういう点では覚悟しておけよ? さっきやる気があるって言ってたけど、それはそういうことをやりたいって言ってるのと同じなんだからな」


「・・・・・・」


 さらっとシビアなことを言われた気がする。

 なんだかんだ言っても東雲は先輩なんだな。


「実際はめったにそんなことないんだけどな。こないだは町内会の掃除に参加してただけだし」


「完全にフロシャイムじゃないか!」


「俺はこう呼んでいる――――リスペクトとオマージュと」


「パクリだよ! 揺るぎないパクリだよ!」


「因みに俺の担当怪人はカーメン○ンな」


「○の付け方下手くそ! しかも思ってたよりパクってきてる!」


「穂村さんがウサコッツだっけ?」


「あの人はタコの格好してましたよ・・・・・・」



 ていうか、そっちは伏せないんだ。いまいち基準が分からない。



「BSで再放送したた時は嬉しかったなぁ・・・。全話録画して家族で観たよ。もうね、大盛り上がりよ。母親なんかおカネ俺に渡して原作買って来いって言う始末でさぁ」


「どんだけ仲良しなんだよ、東雲の家族は」


「俺から言わせてもらえば『突撃!ぷるぷる学園』の方が好きだったけどな。ブンブンで連載されてたんだよ。――――あの雑誌、いつの間にか休刊になってたんだけどな」


「そんなマイナーな雑誌を誰が知ってると思ってるんだよ! ていうか、何でわざわざそれを読んでるんだよ」


「ウチは妙なところで厳しくてさぁ、コロコロコミックとか買ってもらえなかったわけよ。だから『コロッケ!』とか『ドラベース』は最近になって単行本買ってんだよ」


「小さい頃はなんで『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』であんなに笑えたかわからない・・・」


「分かり易い下ネタがいっぱいだったからだろ? ○○○とか△△△とか×××とか」


「結局全部伏字だから結局何が何だか分からないっていうね」


「サザンの曲名にもなってるようなやつとかね」


「やめろ、それは超上級者向けだ!」



 とんでもない爆弾放り込んできやがった。油断ならない男だ。

 ――――大体ここまで実名ポンポン挙げているのにカーメン○ンだけ伏せているのかがわからない。ウサコッツは随分前の回で実名で出してるし。


 因みに俺はブンブンは読んでました。『タロットマスター』と『恐竜の時間』が好きだった。


 遠い目をしながら東雲が口を開く。



「なんだかんだ言って、今の俺たちを形作っているのはあの頃に読んでいたマンガだと思うのよ。いきなりジャンプやマガジンに手を出す小学生もいなかっただろ?」


「俺の周りの女子は結構早くからジャンプで語り合ってたみたいだけどな・・・」


「ジャンプって言うと男子向けってイメージが強いんだが?」


「なんかテニプリってワードがやたら聞こえてきた」


「葉剛の周りの女子は腐ってんな! ――――俺はブーメランスネークが打ちたくてテニス部に入ってたがな」


「あれって物理的に可能なのか?」


「不可能ではなさそうなのがいいんだろ? 個人的にはムーンボレーも練習してた」


「なんで青学ばっかなんだよ。どうせならその二人の前にまずドライブBとか練習しろよ。折角の主人公だろ」


「いや、俺。それはできたから」


「意外な才能だな!」


「漫画ではかなりダイナミックにやってるけど、実際にはラケットを小さく引いてインパクト後に押していく感じでな・・・」


「そこまで詳しい話は求めてねぇよ」



 完全にエアテニスで指導を始めた東雲。

 コイツなんだかんだ言って『テニスの王子様』読みこんでるじゃねえか。

 かくいう俺も零式ドロップは練習したが。



「そもそもあいつらが中学生だっていう設定に納得がいかねえんだよ、なあ羽賀也?」


「下の名前で呼び捨てなんだよ。葉剛でいいよ、葉剛で」


「だってお前の名字ってなんかスベってるじゃん。あんま呼びたくないんだよ」


「スベってる言うな! 俺も少し気にしてるんだよ!」


「テニプリと同じことがエアギアにも言えるよな。イッキのやってることなんかもう、前半と比べたら滅茶苦茶だろ?」


「急激に話を変えるなよ! あとあのマンガにストーリーを求めるな! メインは美麗なメカデザインと色っぽい女の子の裸体だ!」


「スク水仮面ってなんだったんだろうな」


「あれはリンゴの黒歴史だろう。――――ベヒーモス戦の変態仮面は最高だった」

 


 正式名称はクロワッサン仮面。

 変態仮面に関してはフィギュア化もされてたな、・・・・・・あれはいいものだ。

 頭の中でエアギアのストーリーをおさらいしたのか、東雲が再び口火を切る。

 どうやら今度はエアギアトークになるらしい。



「ゴーゴン対オニギリはエアギア史に残る名勝負だったな」


「いきなりエロ路線かよ!」


「何を言うか、エアギアからエロを取ったら何が残るんだ?」


 多分いろんなものが山ほど残ると思う。

 しかし、何故だろう。思うばかりで口が動かない。

 無言になった俺を気遣ってか東雲が言葉を続ける。


「でもあのセクシーなキャラは大暮先生だから描けるんだよ。俺は素直に尊敬する」


「その点で言うと美作はよかったよ。最初はシムカ派だったけど、あそこで心が揺れたも

ん。・・・それにしても、あの作品はモブの子が全体的に可愛いよな」


「最近のモブキャラの重要性は半端じゃないからな。『けいおん!』に至ってはモブの子にもファンができるレベルだぜ?」


「モブの作画に手を抜かないって素晴らしいことだよな」


「『DOG DAYS』に喧嘩売ってるのか羽賀也?」


「そんなところで殺気立つなよ。あとこういうタイミングで具体的な作品名を出すな」


「あれはオープニングのかっこよさとプチキャラの可愛さが異常」


「そっちに話を広げるなよ、俺観てないから」


 一応HDには残してあります。

 こんなところでネタばれされたらたまらない。


「じゃあ、話を戻してあげますか。 ――――まぁなんといっても一番はあれだ、サーベルタイガーの総長」



「「入谷 夏美!!」」

 


 東雲と俺、2人で固く握手を交わす。男同士の友情が成立した瞬間だった。

 2人の変わらぬ劣情を、あの褐色のボディーラインに誓おう。




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