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戦闘員だって考える、だって人間だもの  作者: 流離流留
第4歩「組織だって会社です、実力がものを言うんです」
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『一般人との差って、思わぬところで露見するよね。』



「初めまして、私は移呂井惑伊(うつろいまどい)。戦闘員の番号で言うと・・・二十一号になるのかしら? 一応この組織で教育担当をしています。どうぞよろしく」


「こちらこそ、よろしくおねがいします!」

 

 やんわりと握手。どうでもいい話だが、俺の『女教師』という認識は当たらずとも遠からずといったところだったようだ。

 それにしても、この組織の女性陣はレベルが高い。言動滅茶苦茶なあの総統ですら、道ですれ違ったら男としては振り返らずにはいられないルックスの持ち主である。まほろさんは守ってやりたくなる癒し系。そして移呂井さんはデキる女的な美人系。

 2人の美女を前にぼんやりと見とれていると、突然肩に手が置かれた。振り返ると、ようやく回復が完了したらしい東雲が妙にさわやかな顔で微笑んでいた。


「フフッ・・・。惑伊はあんな雰囲気だけど、実はすっげえテレ屋なんだぜ。昨日の夜もずっと俺にくっついてて・・・、全然寝かせてくれなかったんだぜ?」


「当人を目の前に事実を捏造するなカスが!」


「ぐぼあっ!」

 


 迫力ある右ストレートを顔面に受けて、再び俺の視界から消えさる東雲。ゴロゴロと転がり、テラスの壁に盛大に激突する。飛び散る血しぶき。今度は別の意味でR-18タグが必要なんじゃないだろうかと不安になる。




「・・・で、何か聞きたいことがあるって言ってたわね」


「すみません・・・、私が教えられてあげられれば良かったんですけど・・・」


「穂村さん、あなたが気にする必要はないわ。言ってもあなただってこの組織内では新人なのだし。・・・折角だし、二人の為にさっきの質問に答えてあげましょう」


「「ありがとうございます!」」

 

 

 本当にこの人は面倒見がいいらしい。

 

 


 けど何故だろう、将来とんでもない男に引っかかっている気がする。



「この組織を設立したのは興蔵鈴路。今の総統の興蔵鈴菜の祖父に当たる人ね。で、彼が招集した十人の戦闘員が初期ヒール団の構成員。勿論、鈴菜も初代戦闘員の1人よ」


「そ、総統さんがですか!!?」

 


「そこから色々増えて、葉剛くん・・・だっけ、君が最終番号になるわ」


「ラストオーダーってことですね」


「ええ、表現としては微妙だけれど、広義に解釈したらそれであってるわ」

 


 どうやら移呂井さんは『とある』シリーズは未読らしい。一般人との差って、思わぬところで露見するよね。俺もカラオケ行くときもメンバーによって入れる曲変えるし。

 女友だちの前でふぃぎゅあっとなんて歌ったら二度と口きいてもらえないよ。



「じゃあ話の続きね。結成したのは・・・、確か戦後間もなくだったと思う。私が入社したのは総統が鈴菜に代わってからだから昔のことはよく知らないんだけどね。時期で考えると二十号以降は鈴菜が採用した戦闘員」


「そ、それ以前の戦闘員の皆さんはどうしたんですか?」


「初期メンバーの方もここにはいないみたいですし・・・」


「う~ん、これは言っていいのかわからないんだけどね・・・」

 


 ここで初めて、移呂井さんが言葉に詰まる。


「・・・まあ、別に隠す必要もないでしょう。公然の事実だし」

 

 再び俺たちの方に向き直り話し始める。だが、少し声は落として。慎重に言葉を選ぶ様子が伝わってきた。



「実は、鈴菜が総統の座を継いだってことに表面的にはなってるんだけど、本当は結構派手な内乱があったの。その時に戦闘員もどっち側につくかで盛大に仲間割れして・・・」


「権力闘争ってやつですか?」


「それは分からないわ。前から仲はあまり良くなかったって聞いてたけど。・・・で、始まったのが激しい戦い。なんて言ったってお互い戦闘員だからね、それはそれは激しい戦いだったそうよ」


「見てきたかのように話しますね」


「私と鈴菜は同じ大学のルームメイトだったのよ。だから話を聞く機会が結構あったのよ」



 総統と移呂井さんが同じ大学・・・、俺はそこでキャンパスライフを送れる気がしない。

 主に肉体面と精神面の安全性が保証できないから。



「結論から言うと、興蔵鈴路は総統の座を降り、鈴路側についた戦闘員・・・、実質は鈴菜以外の初代戦闘員だけね、彼らは姿を消したわ。今はどうしているかは誰も知らない」


「「・・・・・・」」


「といっても、これは昔の話。あなたたちが気にすることでもないけどね」


  そういうと、壇上を顎でさす。見ると、いかにも悪の組織の親玉(露出多めの女首領バージョン)を身に纏った総統が姿を現していた。


「はう・・・、いつ見てもかっこいいお姿です・・・」


  うっとりしたようにつぶやくまほろさん。宝塚にあこがれる女の子ってこういう感じなのだろうか。



「・・・っく。おかしい・・・、惑伊と絡むと俺はたいてい大怪我をしているんだが・・・」

 

 頭を押さえてふらふらとこちらへ歩いてきた東雲。あまりの衝撃に記憶の一部が飛んでいるようだ。

 どうしても彼からはハーレム物の主人公の友人ポジションのオーラがあふれてならない。



「はいはい、後で消毒くらいならしてあげるから。黙って話を聞いてなさい、カスが」


「うぃーっす。惑伊ちゃんには逆らいませんよーだ」

 

 なんだかんだ言ってもこの二人は仲がいいらしい。単純に東雲がドMだからなのかもしれないが。

 




 爆発するような一般兵の歓声。

 

 周囲の戦闘員はそれぞれ思い思いのペースで手をたたく。

 

 その全てを受け止めて、総統が朗々と口上を述べる。

 

 それは、ついこの間。コンビニでタコゲドンことまほろさんの口から聞いたものとほとんど変わらないもの。

 

 けれども、彼女はその言葉を、祖父と争ってまでしても手に入れたその座を、どのような思いで扱っているのか。

 




「・・・全く。難儀な総統だよなぁ・・・・・・」


 

 俺は静かに溜息をつく。

 

 


 けれども何故か――――――、後悔の思いは少しも湧いてこなかった。



















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