『フフフ、いい声で啼くわね・・・』
「き、奇蹟も魔法もあったんだ・・・」
「は、羽賀也くん。流石に連発はキツイよ、ほどほどにしないと」
まほろさんから冷静な指摘を受けた俺は、ようやく感覚が戻ってきた右腕を恐る恐る動かす。よかった、活動に支障はなさそうだ。これもこの戦闘服を着ていたおかげなのだろうか?
そして、俺を東雲から助けてくれたメガネのお姉さんは極寒の目付きで東雲を見下すように睨みつける。ちなみに東雲は彼女の足の下だ。ちなみに彼女の履物はハイヒール。ヒシヒシと本能で理解する、この人には絶対に逆らってはいけないと。
戦闘服を恐ろしいほどに着こなし、髪を後ろで一つに結わえたその姿からは、凛とした空気がほとばしるよう。下手したら、昨日の総統よりも総統らしい女性。
彼女も俺と同じ戦闘員なのだろうか?
俺の疑問符を無視するように、まほろさんとの会話が進んでいる。
「あ、相変わらず移呂井さんは容赦ないですね・・・」
「あら? クズに対してクズとしての身の程を教えてあげてるだけよ。・・・こっちの方が嬉しいかしら?」
グイッ。
「あぎゃあ!?」
「フフフ、いい声で啼くわね・・・」
「あ、あのそんなところ踏んじゃうと・・・、東雲さんが・・・」
「まほろさん、クズの心配なんてしなくていいの。なんだかんだいってこのクズも悪い気はしてないから」
グリグリ。
「アッ、アッ、アッ!!」
「あぁ、ホントに素敵・・・。その声、その眼、その手。何もかもがそそるわぁ・・・」
・・・・・・目の前でとんでもない映像が繰り広げられている。これを文章化するとR-18タグどころじゃなくなるので、情景描写はここでは省略。
ただ、結果だけ述べると、俺は部屋に戻ってから、SMモノと女教師モノを全部まとめて何も残らないように消し去りました。画像も本も映像も。
二度と必要ないものだから、一生分見たから。
「ところで、あなた誰? 見ない顔だけど?」
息も絶え絶えになり、もはや物言わぬ人となってしまった東雲を隅に蹴りやると(俺、東雲とは一方的にからまれただけでほとんど会話していないな・・・)、今さらのように俺の方に顔を向けてきた。
「は、はい! 俺、いや僕は戦闘員三十五号の葉剛羽賀也です! よろしくお願いします!」
とっさに敬礼の姿勢を取る俺。さっきの東雲の惨劇を見た後だから、仕方ないだろう。ビビりともヘタレともなんとでも言え。
俺の方を静かに値踏みするような目で見る。
緊張の一瞬。が、薄く笑うと俺に向けて右手を差し出してきた。こ、これは・・・、眼鏡にかなったってことでいいのか?