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戦闘員だって考える、だって人間だもの  作者: 流離流留
第4歩「組織だって会社です、実力がものを言うんです」
24/39

『あぁーっ、やっぱりこうなったぁぁあ!』



「・・・で、ここが大広間?」


「はい、朝礼とかはここで行われます。今回は毎週一回行われる定例会ですね」


「随分うるさいな・・・、ちゃんと規律とかはあるのか?」


「これだけ人が多いと当然ですよね・・・、私の中学校もいっつもうるさかったんですもん。生徒会長として前で話してても誰も何も聞いてくれなくて・・・」


「生徒会長やってたんですか!? どうりでこの状況で緊張してないわけだ・・・」

 


 まほろさんの案内で朝礼の行われるここ〈大広間〉に到着した俺は、他の一般兵(さっき言った庶務部の面々だ)が何十人も集まっている大広間を見下ろせるようにせり出したテラスに、俺以外の戦闘員と同席している。

 やっぱり、戦闘員というだけあって他の団員とは格が違うらしい。ここに来るまでの道すがらも、俺の姿を見るたびに一般兵の皆さんがヒソヒソ話を始めていた。新規採用でいきなり戦闘員というのはやはり珍しいのだろう。

 

 その戦闘員だが・・・、俺は到着してすぐに違和感を感じた。ここに居るのはヒール団の全ての戦闘員、故にここには俺を含めて三十五人居ないとおかしいはずだ。けれどもざっと数えた限りでは十人ちょっとしかいない、全く足りていない。

 この場に居る唯一の知り合い、まほろさんにそっと耳打ちをする。



「まほろさん、ちょっといいですか?」


「なんでしょうか?」


「ここにいる皆さんで、戦闘員は全員なんですか? 全然足りていない気がするんですけど・・・」


「す、すみません・・・。私もここにいる期間が羽賀也さんとあまり変わらないので・・・、ちょっとよくわかりません」


「まほろさんはいつ入社したんですか?」


「あ、えっと、一か月前です。だからあんまり先輩先輩思わないでくださいね」





「そうゆーこと。だからわっかんないことは超先輩の俺っちに聞きなさい」

 


 突然聞こえてきた第三者の声、見るとまほろさんの後ろからへらへらと軽佻浮薄な笑みを浮かべた若い男が近づいてきた。俺やまほろさんと同じ戦闘服を着ているので、彼も戦闘員の1人なのだろう。

 お洒落なのだか何だかは分からないが髪の毛が真っ白だ。その白さは自然に色が抜けたというよりは、無理にペンキに頭を突っ込んだような・・・、染めたというより塗ったと表現する方が的確な白色。おまけに右耳にだけ銀色の十字架形のイヤリングを着けている。

 

 けど雰囲気としては、悪くない。相手に不快感を与えないように気を付けている節が見えている。不良になりきれなった善人というべきか。



「君が昨日入社したっていう新人さん? 俺は東雲(しののめ)西海(せいかい)、戦闘員番号でいうと三十三号だね。よろしく」

 

 にこやかに笑いながら右手を差し出す東雲さん。どうやら奇抜な髪形の割には気さくな人間のようだ。だが、その瞬間。

 一気に体を引きずりこまれ、そのまま腕をねじりあげられていた。さっきとは打って変わってどす黒いオーラを吹き出しながら俺の耳元でそっと口を開く。



「聞いてるぜぇ・・・、なんでもウチのアイドルのまほろさんと同室らしいじゃねぇか。ちょっと表に出てもらおうかぁあん?」


「あぁーっ、やっぱりこうなったぁぁあ!」

 

 やばいやばいやばい。右腕の感覚がじわじわと抜けていくのが分かる。しかも、この同室に関しては総統が勝手に決めたことだなんて言っても信じてくれるわけでもないし。

 何とか弁解してもらおうとまほろさんのほうをみると、彼女は彼女でどうしていいかわからずにおろおろとしているだけ。



「じゃあ、ちょーっと先輩とオハナシしましょうかねぇ?」


「ご、誤解です。俺の意思でそうなった訳でもないし、昨日の夜も何もしてませんです

し!」


「はっはっは。分かってないなあ。・・・『君がまほろさんと同室である』それだけで万死に値するんだよ?」


「罪の裁量が激しすぎる!」


「とりあえず首と胴体にはお別れを言っておけよ」


「マミられる! 就職二日目でマミられる!」


「何でもかんでもマギカネタ入れりゃいいってもんじゃねえんだよ。・・・ただまぁ、さやかたんラブ。緑は失せろ」


「助けてほむほむぅぅうぅうう!!」

 


 そうしてズルズルと出口に引きずられていく。せっかくの新しい職場、出社一日目でこれかぁ・・・、自らの運命を呪う言葉を涙と共に垂れ流していると、突然。



「いい加減にしなさい」


「あぎゃあ!?」

 

 踏まれた猫のような鳴き声が聞こえるとともに、俺の右腕が自由になる。慌てて東雲(もうこの人のことは〈さん)付しない!)から這って離れて振り返ると、メガネをかけた女の人が不機嫌そうな顔で立っていた。









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