『何もかもが自分勝手!』
立ち上がった総統は、まほろさんの頭をぐりぐりとなでると、近くの棚の一番下の引出しをひっくり返す。飛び散る大量の書類や雑品。この組織には〈片付けするべからず〉という条文でもあるのだろうか。
ようやく見つかったらしい少年マガジンほどもある分厚さの冊子を俺にずいと手渡す。
「これを読め。すぐ読め。いや、すぐでなくてもいい、とにかく読めばいい。それだけ読めば理解できる、というか理解しろ。これ総統命令だかんね、命令」
まるでマシンガンのように矢継ぎ早に指示が出される。冷静にまとめると滅茶苦茶なことを言っているのだが、それに気がつくのはこのずっと先だ。大体、この総統は滅茶苦茶なことしか言わない。彼女にとってはそれが当たり前で、周囲の人間にとってが異常なだけなのだが、とにかく滅茶苦茶だ。
とりあえずマニュアルを流し読みするが、昔から活字を読むのが苦手な俺はすぐにおページをめくるのをやめる。とりあえず帰ってから読もう。今日は帰って寝た・・・ん?
「失礼ですが、俺は家に帰れるんですか? 急に連れてこられてますし、ここがどこだかもわからないんですが・・・」
「は? 家? お前の? ・・・・・・ああ、あのボロアパートね」
一瞬何で知っているのかと言おうと思ったが、さっき自分の素性をあらかた調べていたことを思い出して1人で納得。俺が覚えていないようなことまで調べれて、俺の現住所が調べられないわけはないな。
「あんなもん引き払っといたよ。戦闘員は全員ここで寝泊まりしてもらうから。そっちのほうが管理しやすいし。お前の私物も全部運んどいたから」
「何もかもが自分勝手!」
ここまでマイナスベクトルにサービスが行きとどいた企業なのかここは。個人の意思というものがまるで介入できない事態に頭が痛い。
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