『あ、ありがとうございばぶ・・・』
「ほら、テメェ。ぼんやりしてないでさっさと起動しろ起動!」
「あ、はい」
長髪女にどやされて、俺はいそいそとPSPを起動する。
けれども、意識はタコ怪人に注がれている。あの中の人がコンビニで俺を襲ったのと同じ人ならば、ホントに中の人は女だったことになる。予想外にも程がある・・・。
俺の考えが読めたのか、長髪女が思わぬ行動に出た。
「つーか、お前も、いい加減その被りものとれよ。暑っ苦しいんだよ暑苦しい」
「いや、でも・・・。その・・・」
剥きにかかりやがったこの女! だが敢えて言おう、グッジョブと!
もじもじとタコ怪人が、恥ずかしそうに体をくねらす(タコだけにな!)。いや、まあ、もじもじしているのはタコ怪人なのだからビジュアル的には最悪なのだが。
その姿に長髪女がブチ切れた(めんどくさいからこの長髪女は名乗るまでは総統と呼ばせてもらおう)。
「あぁぁぁぁぁあ、うざったい! 何をカマトトぶってんだぁぁぁぁあ!」
「きゃ、きゃあぁぁぁあああぁあ!」
半ば強引に、着ぐるみを剥かれたタコ怪人。中から転がり出てきたのは、案の定女の子だった。それもかなりかわいいタイプの子。淡い色の短め茶髪。
よく雑誌に出ているゆるふわ、というよりもふわふわだけを抽出したらこんな感じになるだろう。合コンにこのレベルが来ていたら、その日の代金は男子全員で奢ってもいいと考える位の美人だ。
だが、ここで思い出してほしい。
形状こそ違えど、あのタコの着ぐるみもれっきとした戦闘服だ。
そして、さっきの博士の話から察するに、この組織の戦闘服の本質は全て俺の着ているものと同じもの。デザインが違うだけ。そこくらいしか相違点は存在しないだろう。
要するに。
戦闘服を脱がしてしまえば下着一枚つけていない格好なのである。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ! 見ないでぇぇぇぇぇぇ!!」
小動物のようなものすごいスピードで、部屋に置いてあったソファの後ろへと姿を消したタコ怪人の中の人。
そ、それにしても凄いものを見た・・・。いまだに女性特有の抜けるような肌の質感が網膜から離れない。あれだけの美人の裸体を、まさか生で拝める日がこようとは・・・。
年齢が年齢だからか、取り乱すこともなく、立ち上がった博士が奥の部屋から毛布を取ってきて、ソファの後ろに放り投げる。
「あ、ありがとうございばぶ・・・」
鼻声の小さな声でお礼を言うと、中の人は体にきつく毛布を巻き付けて姿を現した。が、俺と目が合うと、「ヒッ」と小さく悲鳴を挙げて再びソファの後ろへと姿を消してしまった。
なんだろう・・・、もう一挙手一投足が萌え萌えなのだが。
「チッ、いっちょ前に恥ずかしがりやがって。・・・・・・おい、博士。隣の更衣室からコイツの替えの服。持ってきてくんねぇ?」
「解りました」
「ロッカーは・・・、123番だ、123番」
それだけ言うと博士は静かに部屋から出て行った。
博士を見送ると、総統はこっちを向いて、にやりと、舌舐めずりをした。
・・・・・・あれ、これ、俺取り残されてる!?