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意外と知らない地温の話

作者: 暇庭宅男
掲載日:2026/03/28

春のお彼岸が終わると気温も20℃に届く日が出てきて、本格的な春の実感が俄然湧いてくるものである。


百姓としてもいよいよ雪の消えた畑に足を踏み入れて様々な仕事を始める時期だ。


なのだが。


こと北国では、百姓的に、5月になるまであまり本格的に作物の植えただの種まきだののアクションは起こしにくかったりする。

なぜか。それは、すぐにあたたまる気温と別に、作物にとっては「地温」というもう一つの要素があり、その「地温」が行動計画を縛ってくるからだ。


畑をやってない方は、「地温」という語について今ひとつピンと来ないこともあるだろう。ごく簡単な説明を添えることにする。


植物にはそれぞれ、最適な生育温度というものが存在する。やや寒いところを好むホウレンソウなら15℃から20℃くらい、夏野菜であるナスは30℃くらいが一番調子がよい。その他作物の名前で検索をかけると一通り、その作物の好む温度帯というのか出てくる。


そして、当たり前といえば当たり前だが、我々に見えない土の中、作物の根っこにも適温が存在する。これも千差万別あるのだが、摩訶不思議なことにこの地中の温度についての適温はあまり取り沙汰されることがない。

地温のことって結構大事だから、地温についてまとめたカンタンな表が欲しいなと思うことがしょっちゅうある。農水省さんとかでまとめて一覧の形で出してくれないかなぁ〜。(他力本願)


まあそんな甘ったれた脱線はここまでにしよう。ここからは実態を少し説明する。


冬の間、寒風に吹かれ雪の下になり、地中の温度はぐんと下がる。具体的には4℃前後が私の住むところでの今ごろの地中の温度だ。


そしてこの4℃というのは、秋に種まきをした植物にとっては、まだ、成長を開始できない地温なのである。タマネギに絹さやなどは、土の中の温度は10℃くらい必要である。逆にそこまで届かないというのなら、地上部が成長し始めても土の下ではまだなにも、成長できる余地がなく、まだまだ暖かくなるのを待っているわけだ。


このギャップが、たまに百姓を苦しめる。葉っぱが立派なのでさぞや素晴らしいタマネギになったろうなどと期待に胸を膨らませながら、4月に試し掘りをして、ピンポン玉サイズの可哀想なタマネギを引き抜いてしまいがっかりすることなど全然珍しくない。それからなかなか育ってこない絹さやにやきもきしてみたり、春カブを作ろうと思って植えたら出来上がったのは夏に入ってからだった……とか。そういうのは実によくあるのだ。家庭菜園の園主さんも一度くらいは体験したことがあるはずである。


いつまでも上がらない地温に足を引っ張られる我々百姓は、では春にちゃんと野菜が育つようどうすればいいのだろうか。


実は、土の中を温める方法は代表的なものが一つある。マルチングと言う。一般的には黒い色の、極薄のビニールで、地温を上げたい部分を覆うのだ。黒い色は虫眼鏡で太陽光を集めると容易に燃えるように、それで土を覆うとその部分を太陽の熱で温めてくれる。代表的なのは生育期間が寒い時期に重なるタマネギだろうか。穴の開いた黒いビニールの、その穴ごとに一株のタマネギが植わっている画像は、探せばすぐに見つかるものである。


タマネギはとくに3月から4月は、土が冷たいので大きくなれぬという部分が北国の畑では足を引っ張る。なにせ積雪が12月末からまる2ヶ月も土を冷やし続けるのだから、気温が春なんだからといってすぐには温まるわけがない。そこで黒マルチを使って、日の光を熱に変えて、冬に滞っていた成長をなるべく早めに再開してもらうわけだ。


無論、土が温まりにくいとはいえ、近年の温暖化にともなう春から夏の高温はどんどん土を温まりやすくしてくれている。夏野菜にはビニールマルチをしないことも普通になった。それこそ私はビニールマルチ必須だと信じていたジャガイモですらもマルチを必要としなくなったのには驚かされた。資材代が大きく削減されたことで嬉しいと感じる気持ちも、こんなに気候が変わったかと恐ろしく思う気持ちもどちらもある。


彼岸明けの畑に座す。風、ぬくくあれども、土、未だ春来たらず。私の何代も前のご先祖様の言葉であるらしい。北国にもようやく春は来た。この春が、春の暖かさが、この土地に染み込むにはどのくらいかかるだろうか。私の大好きな絹さやの食べられるときを、私は待ち遠しく感じている。

地温のお話は、百姓としてはよく聞くのに一般の方の認知度が低いよなあと思い立ち、書いたもの。


言わずもがな、プラスチック資材を使わない自然栽培が慣行栽培よりも時間がかかる理由の大きな一つでもある。この現実にブチ当たるたび、南国はいいなあマルチが要らないんだもん、と、やるせない気持ちになったりする。もっとも言ったところでどうにもならないのだけど。

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― 新着の感想 ―
海水温は大体3ヶ月前の地上での気温と同程度なんて話を聞いたことはあるが地中の温度に関しては確かに聞いた覚えがない… 地面の温度に関して話題になるのは真夏のアスファルトからの反射熱くらいな印象だなぁ… …
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