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かわうその湖

作者: 口羽龍

 つよしはのどかな風景の中を歩いていた。この辺りは昔から、かわうそが生息していると言われていた。だが、1970年代にかわうそは姿を消し、絶滅したと思われている。だが、それは姿を見せなくなったからであって、今でもどこかで生きているだろうと言っている人も少なくないという。


 毅は全くその事を知らない。まだそれを知る年齢じゃないからだ。いつになったらわかるんだろう。その日はいつかわからないけれど、日に日に近づいている。


 毅は中荘湖なかじょうこを見つめていた。この中荘湖には、誰も泳いでいない。泳ぐと呪われると噂がある。毅は昨日、それを友人から聞いた。だが、全く気にしていない。絶対に泳いでやる! そして呪われないようにする。


「この湖か」


 毅は中荘湖を見渡した。とても静かな湖だ。何かが潜んでいそうな気配は全くしない。非常に美しい風景だな。そして、水が澄んでいる。泳ぎたくなってくる。だけど、泳いじゃダメだ。


「ここで泳いじゃいけないって言われてるけど、大丈夫かな?」


 毅は少し考えた。こんな事をやったら、姿を消してしまうかもしれない。どうしよう。毅は不安になった。だが、やってみないとな。


「いいや! 泳いじゃえ!」


 毅は服を脱ぎ、海水パンツ1枚になり、中荘湖に飛び込んだ。とても気持ちいいな。こんなに住んでいる水は、初めてだ。これは自慢になるぞ。


「気持ちいいー!」


 ふと、毅は思った。呪われるっていうのは嘘で、水をきれいに保つために泳ぐなと言っているんだろうな。


「何にもないじゃないか?」


 その後、毅はしばらく泳いでいた。だが、その様子を誰も見ていない。少し通りがかった人はいたが、全く相手にしていない。だが、毅はそれを全く気にせずに、泳いでいた。


 夕方になった。そろそろ帰ろう。毅は岸に上がり、海水パンツを絞った。そして、新しいパンツをはいた。


「帰ろ帰ろ」


 毅は帰り道を歩いていた。のどかな田園風景が広がる。通りがかる人々はあまりいない。もう家に帰ったんだろう。僕も家に帰ろう。おいしいご飯が待っているだろう。


 毅は家の前にやって来た。毅の家は農家で、農機が倉庫にある。家はとても立派で、あまり使わないものは倉庫にしまわれている。庭はとても広い。玄関の前にはセダンがある。父の車だ。父がもう帰っているのだろう。


「ただいまー」


 毅は玄関から家に入った。その声を聞いて、ダイニングから母がやって来た。


「おかえりー、って何その尻尾?」


 と、母は何かを見た。毅の尻から尻尾が生えているのだ。まるでかわうそのような尻尾だ。どうしてそんなのが生えているんだろう。母は首をかしげた。


「えっ!?」


 毅は慌てて振り返った。だが、尻尾なんて生えていない。どうして母には見えているんだろうか?


「尻尾が生えてるのよ!」

「何もないけど・・・」


 毅は首をかしげた。どうして母がそんな錯覚を覚えたんだろう。その理由を教えてほしい。


「うーん・・・」


 毅は2階に向かった。母は首をかしげている。そして母は思った。まさか、中荘湖で泳いだ? あの湖で泳ぐと、姿が消えてしまい、かわうそになってしまうらしい。


 毅は2階にやって来た。晩ごはんまで少し寝ようと思ったのだ。今日は楽しかったな。だけど、少し気がかりな事がある。今さっきの母の反応だ。どうして尻尾が見えたんだろう。僕には何にも見えないのに。不思議だな。


「おかしいなぁ。何もなかったのに・・・」


 毅は眠たくなってきた。少し寝よう。


「寝よう」


 毅はベッドに横になり、そのまま眠った。自分の横に、かわうそがいるのを知らずに。


 目を覚ますと、そこは中荘湖だ。どうしてここにいるんだろう。全くわからないな。


「あれっ、ここはあの湖」

「キュー!」


 その鳴き声を聞いて、毅は振り向いた。そこにはかわいらしいかわうそがいる。どうしてここにいるんだろう。もう絶滅したはずなのに。毅は首をかしげた。


「あれっ、かわうそ。なぜ? もう日本にはいないと言われているのに」


 毅は目を覚ました。今さっきの夢は一体、何だったんだろう。全くわからない。まぁいいや。夢は夢、現実は現実。全く気にしないでおこう。


「よく寝た、ってあれ?」


 毅は自分の手を見て、驚いた。なんと、かわうその手になっているのだ。これはどういう事だろうか? まさか、中荘湖で泳いだからこうなったんだろうか?


「毅ー、ごはんよー」

「はーい!」


 毅は大声を出したのに、母は全く反応しない。どういう事だろうか?


「あれっ、聞こえないのかな?」


 あれ以来、毅を見た者はいないという。


 これは噂だが、中荘湖で泳いだ人は、かわうそになって、誰からも見えなくなってしまうという。

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