表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/32

第25話 生活スケジュールの中で

翔の一日は、紙に記された時間割によって完全に支配されていた。


午前五時半、庭に落ちた枯葉を拾い集め、ゴミ袋に詰める。

六時になると、台所で妻の指示に従い、朝食の準備を手伝う。

切る、並べる、片付ける――作業の一つひとつに考える余地はなかった。


食事が終われば洗濯物を干し、靴を磨き、買い物の荷物を運ぶ。

すべて「指示書」に書かれている通り。

時計を見れば、自分が次に何をすべきかは一目瞭然だった。


(……俺は、何をしているんだ?)


最初の数日は心の中でそう呟いていた。

だが、やがてその声は小さくなり、気づけば消えていった。


首輪の赤い点滅は、決して止まることはなかった。

ある朝、新聞を取りに行くのを忘れていたとき、警告音が鳴り響き、首に鋭い電流が走った。

膝が勝手に折れ、地面に崩れ落ちる。

呼吸が整う頃には、翔はもう二度と忘れまいと誓っていた。


「お利口ね」

妻の言葉が、耳の奥に沈んでいく。


夜になると、布団の上に倒れ込むように眠った。

眠る前に「明日は何をしよう」と考えることはなくなった。

ただ、次の日も紙に従うだけ。


(考えなくていいのは……楽だ)

ふと、そんな思いが胸をよぎった。


それに気づいた瞬間、翔は目を見開いた。

自分の中の何かが削られている。

だが、それを止める方法も、取り戻す手段も、思いつくことはできなかった。


首輪の光は、静かに脈打つように点滅していた。

まるで、翔の心臓と同調しているかのように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ