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第21話 ようやく外へ…

ある日、翔は係員に呼ばれた。

声は淡々としていたが、翔の心臓は早鐘のように打ち続けていた。


「おい、準備はできているな?」


返事をする間もなく、檻の扉が開き、係員が手早く翔の腕を取り、外へと導く。

翔の目に映るのは、今まで見慣れた収容所の景色。

鉄格子、冷たいコンクリート、そして仲間たちの虚ろな目。


「……ついに、外に出られるのか」


期待と不安が入り混じる。

胸の奥が締め付けられるようだが、同時にわずかな希望が光っていた。



---


外に出た先で待っていたのは、一組の40代夫婦だった。

柔らかい笑みを浮かべる二人は、翔の前で手を差し伸べる。

それは、まるでペットを迎え入れるかのような優しい仕草だった。


「こんにちは。よろしくね」


言葉は人間らしく温かかったが、その眼差しは確かに“所有者”のものだった。

翔は言葉通りに頭を下げ、わずかに頷く。


(これが……俺の、新しい生活……なのか)


係員に導かれ、翔は夫婦と共に車に乗り込む。

窓の外には、もう檻の中の景色はなく、光の差す道が広がっていた。

だが、その自由は、選ばれた者だけに与えられる“所有”の自由であって、翔自身のものではなかった。


車内で、夫婦はさりげなく翔の好みや癖を尋ねる。

それに応えるたび、翔は少しずつ自分が“人間”ではなくなっていく感覚を覚える。

だが同時に、外に出られる安心と、暖かい手の感触に、彼の胸は微かに緩んでいた。


翔は目を閉じる。

今日から自分は、誰かに飼われる“存在”となる。

自由ではないが、檻に閉じ込められた日々よりも、確実に現実の世界に触れている。


そして、彼の心の奥底で、外に出たい気持ちは、まだ小さくも確かに生き続けていた。


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