第14話 空いた家に入る者たち
収容所の外、日本国内では別の光景が広がっていた。
ニュースでは連日、各地での「入居許可」の様子が報じられていた。
地方都市の古い団地、都心部の新築マンション、かつて日本人が暮らしていた一軒家。
そこに今は、アジア系、アフリカ系、中東系と、様々な人種の移民たちが荷物を抱えて次々と入居していく。
玄関前には笑顔で写真を撮る家族。
庭先には、知らない言語で歌う子どもたちの声。
かつて住んでいた日本人の痕跡は、彼らの日常にあっという間に塗り替えられていった。
以前の日本をよく知る異国の人たちは、窓の隙間からその様子を見つめていた。
「……本当に、もう大好きだったあの時の日本じゃなくなってしまったな」
声を漏らした老人に、誰も返す言葉はなかった。
商店街では外国語の看板が目立ち始め、食料品店にはかつての日本食は消えつつあった。
以前は日本人が当たり前に食べていた米や魚は、価格が跳ね上がり、一部の富裕層しか口にできない。
代わりに庶民が買えるのは、移民たちが持ち込んだ安価な代替食ばかりだった。
次第に街並みも暮らしも、取り返しのつかないほど変わり果てていた。
――かつて「日本人」が住んでいた場所は、今や別の民族の生活の匂いで満たされていた。




