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第13話 逃走者

毎日毎日、只々塀の中を歩かされる日々が続いた。

最初の頃は皆おとなしく従っていた者も、やがて限界に達する者が次々と出てきた。


その日、一人の男が突然走り出した。痩せ細った体に残る力を振り絞り、土の上を裸足で駆け、塀に向かって一直線に突っ込む。


「逃げる気か!」

周囲の人々がざわめき、誰もがその光景に目を奪われた。


男は塀をよじ登ろうとした。しかし、手をかけた瞬間に強烈な電流が走り、絶叫とともに地面に叩きつけられた。土埃が舞い、焦げた匂いが広がる。


監視台からは何の声もかからない。監視員のただ冷ややかな視線だけが注がれていた。


翔はその様子を見て悟った。――ここは、ただの収容所ではない。

逃げようとする心理も、絶望から無謀に走る人間の習性も、すべて計算され尽くして作られているのだ。


倒れた男は動かないまま、係員に引きずられていった。周囲の人間は、誰一人声をかけられない。ただ恐怖と諦めに支配され、散歩を装って歩き続けるしかなかった。


「逃げ場なんて、初めからなかったんだ……」


翔は唇を噛みしめた。

塀に囲まれた空の青さが、かえって残酷に見えた。


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