王様たちと私
夕食は守り神の祝賀会だった。私はソナウイ仕様の服だから結構地味めだったけど、すごい人はすごかった。どっかの姉妹みたいに身体の線を強調した人や宝石をつけまくっている人もいた。
カインから改めて紹介されました。
まずは王さま。ググロ・サマリケル・シュヴァさん。金髪に緑の瞳。いい人そうなおじさま。ちょっと奥さんの尻に敷かれてました。二人は幼馴染みたいでとっても仲が良かった。
次に王妃さま。セシア・アーガイル・シュヴァさん。ググロさんと年齢は変わらないはずなのに見た目は20代後半。ググロさん曰く年齢の話をすると恐ろしいらしい。ちょっときつめの美人さん。ブラウンに近い金髪に赤黒い瞳。服装は結構シンプルなのに存在感がすごい。そして最強オーラが出てマス。姐さんって呼びたくなる。
王太子のスタル・ロバートソン・シュヴァ君。19歳。なんだか王妃様の少年(明るい金髪。王さまからの遺伝?)バージョン。ちょっとアホ。天然ゆえのKYな所以外は有能な王太子らしい(カイン情報)。私に対してもKYな発言はありました。
「アオイ様はそのようなお歳で、神の使いなど大変ですね。我らの国では考えられません。」
「いやいや、王太子は働いているのでしょ」
「私はもう19歳ですから。アオイ様のお歳の頃は遊んでいましたよ」
「・・・カイン。ハリセン持ってない?・・・ないのか。
このアホ王子!私はもう20歳だ!!あんたより1歳年上だ」
・・・会話が聞こえた周囲のみなさん、そんなに驚いた顔しないで下さい。あっセシアさんだけが目を輝かせてこっち見てる。絶対あとで美容方法とか聞かれそう・・・。東洋の神秘とでも答えておこう。
呆けたカインを正気に戻して次の人を説明してもらった。
宰相のキロイ・ブルジン・アーガイルさん。セシアさんのお兄さん。そう言えば色の配色が同じだ。もちろん王さまとは幼馴染。でもやっぱり王さまよりも強気。趣味は王さまで遊ぶことらしい。すっごい有能らしい。
騎士団長のオリーブ・サイプロ・シモンズさん。70歳のお爺さんなんだけど筋肉ムキムキ。顔は強面だったけど優しい人だった。代々の王族に剣術を教える家系で王も王太子も教えてもらったらしい。私の事を嬢ちゃんと呼ぶただ一人の人。
おいしい料理を食べながら、貴族たちを観察していた。明らかに厭らしい目で見る人、好奇心たっぷりの目で見る人さまざまだった。要するに私に注目をするけど王さまたちが近くいて、自分からはいけないから私から来てほしいな~って所でしょ。だれがいくか。特にロリコン親父のところには!
祝賀会も中盤に差し掛かった時、急に人々がざわついた。一体何があったのだろうと顔をそちらにむける。視界の端で王妃さまが顔をしかめたのが分かった。
「ごきげんよう、守り神。わたくしはシャロー・スノウデン・ガイザー。以後お見知りおきを。あら、セシアったらこんな所にいたの?本当にあなたは鼻が利くのね。羨ましいわ。わたくしもあなたのように身分に関係なく浅ましくなれたらよかったわ」
シャローさんは厭らしく笑った。確かに見た目は美しい。銀の髪に、紫の瞳。妖艶な身体。全くそれを隠そうとしない服装。でも心は汚い。真っ黒とかじゃなくていろんな色が混ざった汚い色。あー私の苦手なタイプだ・・・。
「こんにちは、守り神さま。私は第二王子のバローズ・サシキス・シュヴァです。あなたのような可憐な神なら、信望者は多いでしょうね。もちろん私も喜んでこの身をささげましょう」
バローズはニヤッと笑うと私の甲に口づけた。ものすごい速さで鳥肌が立った。顔は悪くない。むしろ美形に入るだろう(スタル君には負ける)がなにかGを思い出させるものがある。一刻も早く手を洗いたい。
「王女のラトメ・フルキサス・シュヴァよ。あなたが守り神?なんだか地味ね。創造主は何を基準であなたを選んだのかしら?少なくとも美しさや気品ではないでしょうね」
上から目線のこの小娘。絶対母親似だ。違うのは目の色だけ。後はほとんど同じ。
シャローさんはたぶん側室なんだろう。自分では言わなかったけど。さっきの言い方からしてセシアさんよりも実家の身分が高かった。でも王に愛されなかった。だからセシアさんを憎んでいる。王妃は自分よっと言いたいのであろう。
王がどうしてそうしたのかは知らないが、その選択はあっていないと思う。この人たち生理的に受け付けない。
私は早くこの場を去りたかった。めんどくさいものには関わりたくないもの。カインにそう伝えようとして傍らの彼を見上げた。・・・鬼がいた。
カインはにっこりと笑った。でも笑っているのに空気は凍っていた。
「側室さま(強調)、祝賀会に遅れてこられた理由は何ですか?まさか創造主さまが直々にお連れになった守り神様の祝いの席に遅れておいて謝罪もなしとは驚きました。しかもアオイ様の前で王妃さまに話を振るとは・・・。アオイ様がいつあなたに発言を許しましたか?そもそも昔はともかく今はセシア様が王妃、あなたは側室、身分はあなたが下です。お言葉使いにお気をつけください。
バローズ殿下、アオイ様は周囲の女性とは存在が違うのです。創造主が寵愛された守り神。許可も無く触れるとはどんなご了見があってのことですか?あなたの考えが足りないのは知っておりましたが、ここまでとは・・・恥を知りなさい。
ラトメ姫、あなたは何を勘違いなされているのですか?守り神を選ぶのは創造主ソナウイであってあなたではない。そんな事は幼児でも知っている。それをこのような場所で仰るとは・・・。ご自分の無知をさらしているようなものです。あと、私個人の意見ですが、アオイ様とあなたを比べる事自体が間違っていますよ。なぜならアオイ様の方がすべての分野で勝っております。」
カインは最後にもう一度にっこり笑った。ちなみに多くの人に聞こえるように若干大きな声で言った(腹黒い)。
シャローさんは、一瞬あっけにとられていたけどすぐに顔を真っ赤にして怒鳴り返した。隣で王子と姫も真っ赤な顔でカインを睨んでいる。
「おのれ神官の分際で、わたくしたちに何とゆう無礼を!!不吉な赤髪よ、今すぐに謝罪しなさい!!」
「側室さま。何度も言うようですが、あなたは身分というものをご理解されていない。私は神官長です。神官長は王、王妃に次ぐ地位、王太子と同じ発言権があるのですよ。この意味がわかりますよね。」
シャローさんは絶句すると、速足でその場から逃げていった。もちろん王子と姫も連れて。
カインは何もなかったように私に笑いかけていた(さっきとは違うホントの笑み)。カインってすんごい黒いんだ・・・。今日のお昼みたいに喧嘩売るのはよそう。私は心に誓った。
腹黒カイン様降臨。






