精霊と私2
今回はすごくシリアスです。
アオイ、アオイ、新しい守り神
神の使いアオイ、ソナウイの愛し子
我らの守りし 異世界の娘
精霊は唄いながら私の中に消えた。いや、私の中を通って、後ろの大木の中に消えた。
精霊が通った所(胸)はなんだかポカポカした。見た目は何も変わっていなかったし、もちろんそこに精霊がいるわけではない。でも、何かに守られているような感じがする・・・。
「精霊たちに受け入れられたようだな・・・。アオイ、神殿に戻るぞ」
カインが私を呼んだ。でも返事なんて出来なかった。
精霊に受け入れられる・・・。これが受け入れられるということか・・・。
初めから友好的だったし、ソナウイも守り神は無条件に精霊に好かれると言っていた。私のイメージでは“精霊の加護”みたいなものをうけて精霊の力が自由に使えるといったものだったんだけど・・・ちょっと違うみたいね。ううん、もっと怖い事なのかもしれない。
肉体のない精霊、でも確かにそこに存在していた。彼らは世界を握るものたち、そして私を守ってくれる・・・。彼らに刃を向ける事は自身の破滅を現す事。
なら、私に刃を向ける事は?
彼らが守り神を愛し守ってくれるならば、私の敵は彼らの敵・・・。
この世界の人たちのすべてが守り神に友好的な訳が無い。もし、そんな人たちが私を攻撃してきたら?殺すつもりなんて全く無くても、守り神を傷つけた人間を精霊たちはどうするのだろう。
カインの話からすると精霊たちは人間に興味が無い。人間が生きようが死のうが関係無い。
おそらく私を守るために躊躇なく消してしまうのだろう。まるでそれが当たり前のように。
私が守り神という存在である限り、私は常に周りの人間を殺す存在であり続ける。
ソナウイは初めに言った。守り神は人形では無いと。自分の思うように生きればいいと。
あの時は何も思わなかった。何も感じなかった。その言葉がどんなに深い意味があるのか気付けなかった。
なんて浅はかな自分。人形の方がはるかに楽なのに・・・。自分の意思が通るという事は自分のすべてを決めなくてはいけないという事。・・・人間の生死さえも決めるという事。
大きな自由の裏には同じだけの責任があるのに。
「ア・・・イ・・・・アオ・・・・・・アオイ!」
カインの声がした。顔を上げると目の前にカインがいた。私は気が付かないうちに樹の下から出てきていた。
「一体どうした?顔色が悪いぞ・・・疲れたのか?少し休もうか?」
疲れた?・・・疲れてはいない。ただ自分の存在の危険さに寒気がしただけ・・・。
私は首を左右に振った。
「そうか・・・?」
「そんな事よりカインに・・・神官長に聞きたい事があります。
精霊たちは守り神を守ると聞いた、守るということはどういう事なのですか?
・・・守り神を傷つけた人間は今までどうなったのですか?
精霊は人間に興味は無いのでしょう・・・?
私を傷つけた人はどうなるの!?
・・・殺してしまうの?」
カインは、はっとした顔をした。そして下をむいてしまった。その反応をみて私は自分の考えがあっている事を理解した。
自分が守り神であるとともに、死神である事を・・・。