王様たちと私2
腹黒カイン様降臨で場の雰囲気はおかしなものに変わった。カインは何事もなかったようにしている。私もまあ同じ。問題は・・・王妃さまと王太子、さらに宰相のキロイさんと騎士団長のオリーブさん。さらにカインが私の甲を無言で聖水まで使って清めるから余計に彼らを刺激してしまった。
「ぶっっっっ、ダメ!!我慢できない~!最高ねカイン、すっきりしたわ。あのシャローの顔といったら・・・ダメ、思い出したらお腹が・・・」
笑いすぎてセシアさんはフラフラしている。そんなセシアさんを王さまは支えている。やっぱり上下関係が見える。
王太子のスタン君は床に這いつくばっている。ツボに入ったらしい。顔は酸欠で赤くなり、髪もぼさぼさだ。おいおい、美形が台無しになってる。
キロイさんとオリーブさんは堂々と爆笑していた。セシアさんのように我慢する気は全くない。この騒ぎを知らなかった人まで2人の笑い声でこちらに注目している。
「ねえカイン、この人たちっていつもこんな感じなの?」
「・・・そうだな。だいたいは」
ソナウイが言った通りいい人ばかりなのか・・・。いや、国のトップがこれってちょっと・・・。まあいいか。平和が一番。
私は1人納得していた。だってなぜ王妃がここまで笑ったのか、貴族がそして王が止めに入らなかったのか疑問にすら思わなかった。
この王族たちの過去を全く知らなかった。過去、王妃の涙があった事、失われた命、深すぎる後悔があることを。
「あの汚らわしい赤髪め、忌々しいあの女の前で恥をかかせおって。バローズが王になった暁には、さらし首にしてやるわ。そしてあの女にはこの世の地獄をすべて見せてやる」
シャローは自室に戻るとそう吐き捨てた。王や新しい守り神の前でセシアに恥をかかせたかった。あの卑しい女はいつも私から大切なものを奪っていく。初めは王を奪い、さらに女としてのプライドまで奪われた。本来なら私がこの国の王妃であったのに・・・。いやまだ遅くない。あの邪魔な王太子さえ消えれば。何、簡単なことだ。1人殺すのも2人殺すのも同じ事。
そうよ。この国の正当な後継者はわたくしの息子。あのような中流貴族の血が王家にあってはいけない。わたくしのように高貴な者でなければいけない。
「可愛い私の子供たち。母のそばにおいで・・・」
シャローは二人の子供を呼んだ。2人はすぐに母親のそばに行った。
「バローズ、あなたは次期国王。いまは忌々しいセシアの息子が王太子の地位にいるが問題はない。安心しなさい。スタンはもうすぐ消えるわ。レニューのように・・・。本当ならこんな事をせずとも王座はあなたの物。あの卑しい女の息子に奪われただけ。あなたは何の心配もしなくていいのよ。母のいう言う通りにしておけばすべてが終わるわ。
ラトメ、美しく賢い私の娘。あなたは自分が守り神に相応しいと考えていたみたいだけどそれは違うわ。守り神は所詮、神の人形。あなたはあの娘よりも賢く美しい。あの程度の者が神の使いならば、なんとちんけなものか。あんなものにあなたがならなくて本当に安心しているわ。本来なら王妃の娘として堂々と生きるべきなのに今は側室の娘として扱われる屈辱に耐え、母を責めない優しい子。もう少しの我慢です。」
「「お母様・・・」」
兄妹は母の慰めで先ほどの怒りを鎮めた。
「そのためにはあの守り神は利用出来るわね・・・。」
シャローはアオイを思い出し、つぶやいた。紫瞳に怪しい光を灯しながら・・・。