抱いてほしいんだ(好事百景【川淵】出張版 第六i景【ハグ】)
ぎゅってしながら眠ります。
あのさ。
あたし、あなたのこと好きなんだよね。
だからって。
こんなこと頼むのは、ほんとはすっごく恥ずかしいんだけど。
でも、思いきってお願いするね。
抱いてほしいんだ。
あたし、あなたのこと。
ほんと、好きなんだもん。
いいの、ほら。
あたしは、思いきってお願いしたんだから。
あなたも、あたしのこと。思いきり抱いてよ。
きゃあぁぁ!!
なにすんのよ、このばか!!!
たしかに、あたしは「抱いて」とは言ったけど。
かんちがいしないでってば!
変な考えおこさずに、お行儀よく、抱きしめてくれればよかったの!!
それを、あなたったら、どういうつもり?!
いや、どういうつもりかは、わかりきってるんだけどさ。
あたしは、ぎゅって抱擁——「ハグ」して欲しかったのに。
いきなり、あたしの服を「剥ぐ」なんて!!
ほんと、このばか!!!
まったくもう。
ものごとには、順序ってものがあるでしょうに。