1、殴ったら、殴り返される。倍返しだ!
初投稿です。
中二病、それは思春期において少なくない数の人間がかかる黒歴史をつくる厄介な病。僕こと渡夕もその病に侵されている。もっとも自分はわかっている上でしているのだが。
理由はあるアニメの影響である、『鮮血のブラッド』頭痛が痛いみたいな名前であるがそこそこヒットしたアニメだ。僕はその作品の中に出てくる鮮血の魔王と呼ばれる悪役キャラに憧れてしまった。鮮血の魔王は悪役にもかかわらず、ハイスペックである。
容姿、戦闘力、カリスマ性、そしてカッコいいセリフの数々である。まるで主人公のようでそれに魅了されたのは僕だけではないはずだ。
こうして魔王に憧れた僕は立派に世間一般の中二病を患ったのである。
初夏を迎え、セミの声が本格的に鳴き始めるころ。夕暮れに照らされた道に僕は家に帰ろうとしていた。
「だれか!・・・助けて!」
その声は唐突に聞こえた女性の声。僕は声の方向に向かって進むと、建て壊し予定の廃墟の場所に男二人に対して女性が連れ去られに行くのを見た。女性は僕と同じ学校の制服を着ていたので、休日でも制服とはおそらく部活帰りだというのが分かった。
先生からは最近不審者がうろついているため一人では帰らないようにと伝えられているはずだが、と僕は思いながらも瞬時に警察に通報し、急いで廃墟の中に入った。
中に入ると腕を縛られ、男一人は体を押さえつけ、もう一人は服に手をかけている様子が目に入った。このままだと警察が来る前にあの女性は大人の階段を上ってしまうだろう。幸いにここから警察署まではそう遠くない。だから僕がひきつければなんとか間に合う。
僕は覚悟を決め、まず服に手をかけている男の後頭部に思いっきり右ストレートを放った。
「ぐおっ!!」
「な!誰だこの野郎、なにすんだ!」
因みにだが、僕は喧嘩なんか一度もしたこともないし、魔王オタクでしかも来年から中学三年生だ。なにが言いたいかと言うと子供と大人じゃ敵わないということだ。その結果今、僕はサンドバックのようにボコボコにされているということだ。
「オラオラ、さっきまでの抵抗はどうした?」
「たくっ、いい所を邪魔しやがってよ」
「よし!続きをさっさとやろうぜ。俺もう我慢できねぇわ」
「てっおい!パトカーが来た。早く逃げるぞ!」
「チッ」
僕は意識が混濁している中、男達が逃げる様をぼんやりと見ていた。運よく警察が来たようだ……。あの襲われている女性はどうしたんだろうか?、そう考えていると、ぐしゃぐしゃに泣いている人の顔が視界一杯に広がった。
「ごめんなざい……わたじごわぐて……ごんなになるまで」
正直何を言っているのかわからないけど、申し訳なさそうな顔で泣いている姿を見るときっと謝っているのだろうと理解できた。だから僕は伝えた。
「大丈夫だよ、だから泣かないで」
そう答えるのが精一杯だった。そうして僕は意識を手放した。
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「― ― ―」
「~~~~~~~~」
何か聞こえる。そして赤ちゃんのような鳴き声も聞こえる。何も見えない。どうなっているんだ?……うっ!?凄く眠い……また意識が……。