女神が現れたので告白してみたら反応が可愛かったので……
勢い。
いや、もうごめんなさい。先に謝ります
「あの……」
「どうされましたか?」
「かわいいね」
「……ふぇ!?」
♢♢♢
最近は厄介な季節だ。
朝登校する時は冷えるので冬服で学校に向かうと、昼暑すぎて授業に集中できない。
だから、と夏服で学校に向かうと登下校やけに冷える。
それなのに、夏服の上に学ランを羽織ってはいけない。とかいうし、学校側は何も理解していないと思う。
なにせ学校の先生方は車だろう?
俺たちチャリ登校民の苦しみを知らないのだ。
などと心の中で文句を言う。
そんなことを言ったところで問題が解決するわけでもないのだが、気分はよかった。
少しルンルンと歌を歌いながら帰路を進んでいた。
曲がり角を曲がるところで、鋭利な石をタイヤでふんでしまい、パァンという破裂音とともに、自転車のバランスが崩れる。
このままだとこける。そう思ったのでとりあえず自転車を降り、これからどうするかを考えた。
その時だった。
「大丈夫ですか!?」
天使が目の前に現れたのは。
いやいや、かわいい……。
なにか心配の言葉をかけてくれているのだろうが、耳に入らない。
俺は見惚れていた。
「あ、あのぉ……大丈夫ですか?」
相槌も打たず心ここにあらずの俺を心配してくれたのだろう。
もう一度同じ言葉が投げかけられた。
彼女は、パァンとタイヤがパンクした時の音を聞いたらしくなにかあったのではないかと、ここまで来てくれたらしいのだ。
声も可愛い。しかもわざわざくるとかマジで天使かよ……。
ここで俺は気づいてしまったのだ。
わざわざ心配してきてくれた→ただのパンクだと気づいても声をかけてくれた→これって運命?→向こうも俺のことが好き→相思相愛!!!
っしゃ!
思わず大きくガッツポーズをする。
彼女いない歴=年齢の恋愛に関する思考回路を舐めないで欲しい。
鈍感系主人公とかもうただのバカだよ。
とりあえず、告白しよう。
と思ったが、何といえばいいのかわからない。
そもそも女子と話したことがほとんどない。
で、でも、向こうも俺の告白を待っている……!
無難にまず可愛いと伝えよう。
「あの……」
おどおどしないように、よそよそしくもならないように。
それを意識して言葉を続ける。
「かわいいね」
よし。言った。言ったぞ。
相手の顔を見ると、
「……ふぇ!?」
とか言いながらりんごのように顔を真っ赤にしていた。
勝ち確だと思った俺は、勢いに任せて告白をする。
「俺と結婚してください!!」
「ええぇぇぇぇぇぇ!? 結婚……? 結婚って、その、えっと」
相手がアタフタしている。
まだ心の準備ができてなかったのだろうか。
髪の毛をくるくるいじったり、指をツンツンする彼女を見て我慢できなくなった俺は、相手からの返事も聞かずに
「ありがとう!!」
と言って手を握った。
彼女もすんなりと手を握られてくれた。
俺たち、夫婦になったのかぁ。なんてしみじみと感じる。
幸せが待っていそうだ!
♢♢♢
「ただいま〜」
家の鍵を開け家に入る。
まだ妻は帰っていないようだ。
キッチンで料理を作り、帰りを待つ。
今日は結婚記念日だ。
手の込んだものは作れなかったがとりあえず料理は完成した。
ガチャ
玄関のドアが開く。
「ただいま」
愛しのMyハニーの声が聞こえた俺は彼女が部屋に入ってくるなり飛びつく。
「ちょっ。やめてよぉ」
「すまない、勢いで。テーブルに婚姻届を置いてある、署名をしてほしい。正式に結婚しよう」
Myハニーだの帰ってないだの言ってはいたが、まだ実は結婚はしていないのだ。
まぁ今日婚姻届を出すから、本当になるのだが。
1週間ぶりくらいに彼女がうちに来て俺は舞い上がったまま、彼女が婚姻届を書くのを待った。
「あの……さ。言いたいことがあるんだけど」
深妙な面持ちで彼女が言う。
俺は、
「なに?」
と内心期待しつつ聞いてみる。
「ボク、実はおとこなんだけど……」
静かなリビングに綺麗な声が響く。
「・・・なんて言ったかよく聞こえなかったな」
なぜか耳がシャットダウンしてしまってるようだ、なにも聞こえなかった。
「だから、ボク実はおとこなんだけど……」
「・・・新婚旅行はオランダだな」
かわいいは正義だ。
以上。これ以上は語らない。やめてくれ、その視線は。
オランダは同性結婚を認めている国です(多分
ヒロイン(?)の子はとてつもなく押しに弱く、主人公は妄想と押しがイカれてるのでこうなりました。
最初は高校三年生、場面はとんで、19歳。