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第276話 やはり要塞級か……いつ出発する?

「ところで、こちらに魔神が来ているはずだが」

 考え事に耽るジェイに、ラフィアスが問い掛けた。

「今のところ、それらしい奴は見ていないな。いるとすれば要塞級の中……」

「要塞級?」

 ラフィアスが首をかしげるのも無理はない。その呼び名は巨体と甲羅の中に魔物が潜んでいた事からきた仮称である。

 それが島の南端に上陸している事をジェイは伝える。海に戻る事ができないのではないかと思える程の巨体である事も添えて。

「いるとすればその中か?」

「要塞級自体が魔神じゃなければ、な」

「だとすれば間抜けな話じゃないか?」

「……やっぱりそう思うか?」

 指揮を執る魔神が、それで動けなくなったら間抜けもいいところである。

 魔神は中にいて、要塞級は操られているだけとすれば、それはそれで使い捨てという事になるが。

 また、それ以外にも考えられる可能性はある。

「そういえば『賢母院』様がアルマを挟んで南北で通信しているのを察知したと言っていたが、それを使って『死の島』から指揮を執っているという事はないか?」

「……いや、仮にそうだとしても、こちらに魔神がいるのは確かだろう」

 しばし考えた後、ラフィアスは答えた。

「超長距離の通信魔法は、魔素がいくらあっても足りない。それこそ魔神でもなければ無理だ」

 通信魔法自体は、魔動伝話でも使われている技術だ。

 しかし、町中で通信するのと、国を跨ぐ距離で通信するのでは、必要となる魔素の量が違う。それこそ桁違いに。

「……ああ、こちらから通信する奴がいるって事か」

「そういう事だ」

 そして百魔夜行は、ここまで真っ直ぐ進んできたにもかかわらず、海岸の守りが堅いと見るや一部を分けて海から内都を狙わせた。

 これは戦況を知らなければできない事だ。指揮する魔神が『死の島』にいると仮定した場合、戦況を伝えている魔神が別にいるという事になる。

「まぁ、その要塞級とやらを直接見ていないからなんとも言えないが……連絡役の使い魔如きには仰々しいと思うがね」

 肩をすくめて、鼻で笑うラフィアス。

 それだけのものを持ち出してくるという事は、やはり指揮を執る魔神はそこにいるのだろうというのが彼の考えだ。

「内都を落とした時に、新たな魔王となる者が不在では格好がつかないだろう?」

「それはそうなんだが……魔神にも通じるのか? その感覚は」

「魔神も元は魔法使いさ」

 さらりと答えるラフィアス。彼が魔神という存在をどう捉えているかが垣間見えた気がした。



 だが、これでやるべき事はハッキリした。

 狙うべきは島南端に上陸した要塞級、その中で指揮を執っているであろう魔神だ。

 ジェイが戦場を見渡してみる。四騎士を撃破した事で、戦いは防衛側がやや優勢となっていた。

 今なら攻勢に出る事ができる。ジェイはそう判断する。


「ほう、攻めに転ずるか! いつ出る? 余も同行してやろう!」


 その時、背後から声が聞こえてきた。

 ジェイと明日香が慌てて振り返る。二人にとっては聞き覚えのある声。

「お父様!?」

 そう、二人の視線の先に立っていたのは、明日香の父・龍門征異大将軍輝隆であった。

「龍門将軍……」

義父上(ちちうえ)と呼べい!」

 婚約の段階なので正確にはまだなのだが、龍門将軍は気にしていないようだ。

「お早い御着きで! 援軍はどちらに?」

 明日香がキョロキョロと見回すが、それらしい姿は無い。戦況に変化も無さそうだ。

 同時にジェイも気付く。

「……まさかお一人で?」

「ウム! 海で遭遇した連中は、数だけだったのでな! 一足先にこちらに駆け付けたぞ!」

 海で遭遇した魔物達は、数が多いだけで大した強さではない。この程度の相手にジェイが援軍を呼ぶはずがない。

 そういう観点から海は主戦場ではないと判断した龍門将軍は、その場は連れてきた配下達に任せて一人こちらに駆け付けたのだ。

 この場所が分かったのは「戦いの気配」を感じ取り、それをたどってきたからである。

 ちなみにジェイが攻勢に出ようとしていると判断したのも、大体同じ理由だ。理屈で考えてはいけない類の人間は存在する。彼もまたその一人であった。


 突然現れた援軍一名。その正体に気付き始めた周囲がざわつき始める。

 真っ先に気付いたのは、近くで聞いていたラフィアスだろう。

「まさか……小船で戦場を突っ切ってきたのか?」

 一人だけ先に駆け付けたと聞いて、そのように考えてしまうのも無理はない。

 なお、正解は「一人で海を走って来た」である。


 それはともかく、ジェイは要塞級に向かう事を武者大路に伝える。

「そうか……色々とツッコみたいところはあるが、そうせねば勝てぬのは確かだろうな」

 一番ツッコみたいのは龍門将軍の事だろうが、武者大路の方もこの場で指揮を執り続けなければならないので今はそれどころではない。

 むしろ龍門将軍も一緒なら、安心して送り出せる。武者大路はそう割り切って別行動を許すのだった。



「そういえばラフィアス」

「なんだ?」

「タルバの連中は、南の魔神と連絡を取り合っていたんだよな?」

「らしいな。僕が通信を受けていた訳ではないが」

 魔神と連絡を取り合っていたのは、大重を始めとする首謀者達のみだった。

 彼等が魔神刀を使う際、力を借りようとしていたのがその魔神だ。

「魔神の名前は分かるか?」

 ジェイは問い掛ける。

 対するラフィアスは、ジェイに向き直りハッキリした口調で答えた。

「魔神ダ・バルト。それがタルバの『純血派』と共謀していた魔神の名前だ」

 まぁ『純血派』は利用されていただけだと思うけどね。魔神の名を告げたラフィアスはそう付け加えると小馬鹿にしたような仕草で肩をすくめるのだった。

 今回のタイトルの元ネタは『ジョジョの奇妙な冒険』のセリフです。

 これもミーム化していますね。

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― 新着の感想 ―
いや、「数」だけでも十分脅威な状況やったんやが・・・・ 数を凌駕する暴力持ってるのがそうそう居てたまるか(目反らし
>「まさか……小船で戦場を突っ切ってきたのか?」 >正解は「一人で海を走って来た」である。 まあ、どちらにせよ「泳いで参った!」よりはいいんでね?(適当) 龍門将軍1人が援軍に来ただけで魔神戦が一気…
そういえば、以前も 「いつ出発する? 私も同行する」「賢母院」 なんてタイトルがありましたねw それは兎も角、普通の一般兵だとニンジャリアリティショックを受けそうな龍門将軍の登場の仕方でしたな(ニン…
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